
語源・由来|「タニマチ/ハッケヨイ」 相撲に関する言葉
相撲の歴史は古く、もともとは神事として行われていました。奈良時代から平安時代にかけては宮廷行事として相撲節会が開かれ、やがて鎌倉時代となると、武士の訓練として行われるようになります。江戸時代には相撲の興行が歌舞伎と並ぶ庶民の娯楽として人気を博しました。屈強な力士が激突して見せる力比べは迫力満点。今回は、歴史ある相撲ならではの言葉「タニマチ」と「ハッケヨイ」の由来に迫ります。
相撲の歴史は古く、もともとは神事として行われていました。奈良時代から平安時代にかけては宮廷行事として相撲節会が開かれ、やがて鎌倉時代となると、武士の訓練として行われるようになります。江戸時代には相撲の興行が歌舞伎と並ぶ庶民の娯楽として人気を博しました。屈強な力士が激突して見せる力比べは迫力満点。今回は、歴史ある相撲ならではの言葉の由来に迫ります。
相撲好きの医師の住む町名が由来 「タニマチ」

「タニマチ」とは相撲の用語のひとつで、相撲の力士を後援している人やごひいき筋のことを指す隠語です。実は、タニマチとは実際に大阪にある町名「谷町」に由来する言葉なのです。なぜ、町の名前が相撲の後援者を指す言葉となったのでしょう。
明治の末ごろ、大阪市南区(現・中央区)の谷町筋に、「薄病院(すすきびょういん)」という外科の病院がありました。この医院の医師であった、薄 恕一(すすき じょいち)先生は、大変な相撲愛好家で、相撲取りからは治療代をとらず、力士たちから大変慕われたといいます。ここから相撲の支援者をタニマチというようになりました。薄医師は人情味あふれる人柄だったと伝わっており、「貧乏人は無料、生活できる人は薬代1日4銭、金持ちは2倍でも3倍でも払ってくれ」(出典:古賀市役所ホームページ)というような、まさに赤ひげ先生のような人だったといいます。
ところで、タニマチの説明として「ごひいき筋」という説明をしましたが、「ひいき」の語源もご紹介しましょう。「ひいき」は、漢字では「贔屓」と書き、気に入った人に特に目をかけ、世話をすること、あるいは目をかけて世話をしてくれるパトロン、後援者のことをいいます。「貝」という字は財貨を意味しますが、その貝が三つも合わさった文字である「贔」は、重い荷を背負うことを意味しています。「屓」は鼻息を荒くすること。つまり「贔屓」は、重い荷を背負うために鼻息荒く力むことで、転じて、気に入った人のために力み、世話をしたり引き立てたりするという意味になるのです。
「贔屓」の文字からは、特定の人を支援し続けるには、昔から大変なパワーが必要だったことが伝わってきます。しかし支援者は、力士や役者の活躍に一喜一憂することで人生の彩りを深めたでしょうし、タニマチやごひいき筋の支えがあったからこそ、力士や役者の技は磨かれていったといえるのではないでしょうか。
行司の掛け声の由来とは 「ハッケヨイ」

相撲の行司が、土俵で言う掛け声で、すぐに思い浮かぶ言葉が、「はっけよい、のこった」ではないでしょうか。「はっけよい」は、土俵で動きの止まった力士に動きを求めて発する掛け声で、「はっきょい」とも言います。それにしても、この言葉にはどういった意味があるのでしょう。
「はっけよい」が本来どのような意味であるのかは諸説あるのですが、そのひとつが易占いに由来するというものです。「はっけ」は「八卦」。八卦は易による占いの基本となる図形で、天や地、さまざまな自然人事の現象を象徴しているといわれます。この「八卦」が良いということで「八卦良い」という掛け声になったといいます。
二つ目の説は、「発気揚々」がもとになったという説。力士が動かないときにかける掛け声としてもっともらしい説ですね。
三つ目の説は、まさに動かない力士にかける言葉そのもの、「早競へ(はやきほへ)」が「はっけよい」になったという説です。「はっ」は「早」、「けよい・きょい」は「競ふ(きほふ)」の命令形の「きほへ」で「はやきほへ」となり、転じて「はっきょい」となり、さらに「はっけよい」に変わったといいます。
現在でもどの説が正しいのかはわかっていません。相撲が祭りで奉納される神事であったことを思えば、占いの「八卦」との関連もありそうですし、そもそも行司が力士に動くことを求めている言葉なのですから、「発気揚々」や「早競へ」のほうがしっくりくるとも思えます。どの説が正しいのか、大相撲を観戦しながら、想像をめぐらせてみてはいかがでしょうか。
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