語源・由来|「お雑煮」「羽根つき」 正月にまつわるめでたい由来
季節ごとの習わしや行事食は多々あれど、中でもお正月にまつわるものは、多く現代に残っています。今は簡略化されてしまって、そもそもの由来に思いを馳せることは少なくなっているかもしれません。今回は「お雑煮」と「羽根つき」が始まった理由や、言葉の意味をご紹介します。
季節ごとの習わしや行事食は多々あれど、中でもお正月にまつわるものは、多く現代に残っています。今は簡略化されてしまって、そもそもの由来に思いを馳せることは少なくなっているかもしれません。今回は「お雑煮」と「羽根つき」が始まった理由や、言葉の意味をご紹介します。
胃を守る? 神様と仲良く? お雑煮を食べる理由
お雑煮という言葉そのものは室町時代の書物に登場していますが、どんな食べ物かははっきりしていません。その後、安土桃山時代に編纂された『日葡辞書(にっぽじじょ)』に登場する雑煮は、「ザウニ…正月に出される餅と野菜で作った一種の煮もの」とあり、少なくともこの頃には、私たちが知っている雑煮に近いものが食べられていたと考えられます。
(※)日葡辞書…日本語をポルトガル語で解説した辞書。キリスト教宣教師によって発行された。
雑煮の由来には以下のような説があります。
■お酒の前に食べた「胃を守る煮もの」説
雑煮という言葉の起源のひとつは、室町時代の武家社会で祝い膳として出された「保臓(ほうぞう)」とする説です。餅が入った汁物のことで、お酒を飲む前に“臓腑(ぞうふ・ここでは胃腸などの消化器官の意味)を保護する”ために出されたことから、この名前が付いています。
そこから、餅・野菜・海産物などを雑多に入れて煮ることから、煮ると同じ意味の「烹」を当てて、「烹雑(ほうぞう)」→「煮雑(にまぜ)」→「雑煮」と変化していきました。
■鏡餅を食べて「神様との縁を深くする」説
年神様にお供えした鏡餅や作物を「お下がり」として、汁物にして食べるようになったという説です。神様と同じ食べ物をいただくことによって神様と親密になり、ご加護が受けられるという「神人共食(しんじんきょうしょく)」の考え方です。年神様はその土地で出来た作物でもてなすべきとして、米が取れなかった徳島県の一部地域などでは「餅なし雑煮」を食べる伝統が残っています。
餅を入れたぜいたくな「保臓」は、身分の高い人々の食べ物。室町時代の庶民に食べられたはずはなく、江戸時代になって庶民も食べられる「雑煮」になってから、神人共食の意味が付け足されたのかもしれません。
ところで、お雑煮の味付けや具材は地方によって異なり、バラエティーに富んでいます。日本各地のお雑煮の中身は、こちらの記事でご紹介しています。
「羽根つき」で悪いものを“はね”のける
羽根つきは、すごろく、凧揚げ、かるた取りなどと並んで、お正月遊びの代表格。今では遊び道具というよりは、正月飾りの羽子板として、観賞用の側面が大きくなっています。
羽根つきは、羽根に硬貨を付けて蹴る中国の遊びが、室町時代に伝わったのが原型とも、平安時代に子どもの間で広まった、ヘラ状の杖で毬を打ち合う毬杖(ぎっちょう)が起源とも言われています。
羽根の先に付いている黒い玉は、「ムクロジ」という高木の種子で、漢字で「無患子」と書きます。「子に患いが無い=健康でいられる」に通じ、また、羽根の飛ぶ様子が虫を食べるトンボに似ていることから「悪い虫(病気を運ぶ蚊、転じて病気)を食べる」ともされ、羽根つきは「女の子の健やかな成長を願うもの」という意味を持つように変化します。江戸時代になると、羽根つきは「邪気をはね(羽根)のける」として、羽子板を女の子の初正月(生まれて初めての正月)に贈る習慣が始まりました。
羽根つきは無病息災の祈りを込めて打ち合いますが、打ち損なって羽根が落ちれば、祈りが途切れたことになります。負けたほうは顔に墨を塗りますが、これも魔除けのおまじない。鬼は墨を嫌うからという理由です。勝っても負けても無病息災。お正月らしい、明るい気持ちになるルールです。
お正月にまつわる食べ物や飾り物は、新年らしい縁起の良いものばかり。以下の記事でも、めでたさがアップするような由来をご紹介しています。
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