
せたがや相談室~体を温める食事~|第2回 体を温めるおすすめ食材とその効果
朝晩冷え込む季節になると、気になってくるのが体を温める食事。体を温めることには、疲れにくくなる、風邪をひきにくくなるなど、さまざまな効果があるといわれています。そこで今回は、栄養士・国際薬膳食育師特級師範・食育インストラクター1級の阿部富美先生を迎え、10月のお悩みテーマ「体を温める食事」について、みなさんの質問をもとにアドバイスをうかがいました。
・生のしょうがと乾燥しょうがでは、体の温まり方が違うのでしょうか?
・しょうがの様に、基礎体温を上げ免疫力を高める食品はありますか?
・猪鍋・フグ鍋・スッポン鍋はどのように体に良いのでしょうか?
たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださった、四天王様、yamachan様、のりのり様、まるちゃん様ほか、たくさんのご質問、ありがとうございました!
- ●今回担当の専門家
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阿部富美 先生
栄養士免許取得。
食育インストラクター1級取得後、養成推進校に認定される。国際薬膳食育師の最高峰、特級師範を取得後、1997年に始めた料理教室が、2013年から開始された薬膳マイスター通学制制度に全国初で認定される。レシピを教えるだけの教室ではなく、「食」に関する様々な知識を指導する重要性を感じ、現在は各所で食と健康についての講演、講座を受け持つ。楽しく美味しいヘルシーレシピを学ぶ料理教室と、様々な健康と食についての事業を展開している。
10月ごろは秋の味覚を楽しみつつ冬野菜も食べ始めたい時期

夏の暑さで疲れた体は、秋のうちにしっかり回復させて冬の寒さに耐えられる体に変えておかないと、冬本番で体調を崩しやすくなります。それから、秋は乾燥のトラブルが始まる季節です。肌だけでなく呼吸器系もそうですね。例えば鼻や喉を、乾燥でストレスがかかったままにしていると、冬になって免疫力が落ち、風邪やインフルエンザにかかりやすくなってしまいます。
では、これから秋冬にそなえて、どんな食べ物を食べたらいいか、おすすめの食べ方などをご紹介していきます。
10月ごろは秋の味覚のピーク、冬野菜も出始める
10月ごろになると、サツマイモや里芋などのイモ類が美味しくなってきます。秋ニンジンやゴボウといった根菜もいいですね。乾燥対策におすすめのレンコンや大根も新物が出回っていますし、ネギなどの冬野菜も先取りしたいところ。1年中出回っているキノコも旬は秋ですし、ブロッコリーやカリフラワーも、実は冬野菜ですから、ぜひこれからの季節に食べたい食材なのです。
ただし、サンマや栗は秋の味覚の中でも時期が早い方ですから、既に終わりかけのころかもしれません。
冬野菜はどれも体を温めると思われがちですが、実はレンコンも大根もゴボウも「体を冷やす食材」です。
冷やすといっても体温を下げるのではなく、喉や鼻に起きる炎症を取り除いてくれるのです。昔から「喉風邪を引いた時はレンコン汁や大根おろしなどが良い」といわれるのは、お薬が手に入りにくい時代に、食材で対策するための知恵だったというわけです。
■一度に調理しておけば、味付けを変えるだけで飽きずに食べられる
秋冬の野菜は加熱した後も冷蔵保存が効くものが多いですし、冷たいままでも美味しく食べられるので、一度にある程度の量を蒸したり、レンジで加熱して保存しておくのがおすすめです。
ブロッコリーやニンジン、レンコンなどを、調理したその日は温野菜で食べて、残りは冷蔵庫に入れ、次の日ツナマヨとあえてサラダを作ったり、次は体を温めるしょうがのドレッシングやカレーマヨネーズで冷え対策をしながら味を変えたり、ポン酢と鰹節をかけて和風にしたり……どれも簡単にできますから、ぜひ試してみてください。もちろん、温め直して食べたり、シチューにしたり、スープやおみそ汁の具にするのも良いですよ。
また、大根とゆずをスライスしてはちみつ漬けにするのもこの時期におすすめです。時間がたつと大根とゆずから水分が出て、大根も柔らかくなります。そのまま食べても美味しいですし、できたシロップをお湯で割って飲んでもゆずの香りを楽しめます。大根は喉の炎症予防に良いですし、加熱していないのでゆずのビタミンCも残っています。ゆずの皮には血流を促す働きも期待できますし、はちみつは滋養強壮に殺菌効果もありますから、風邪予防にはぴったりです。
薬味野菜はミックスしてそれぞれの長所を取り入れよう

栄養学的には、生のしょうがは殺菌効果が強く、加熱したしょうがは体を温める効果の方が強いといわれています。例えばお刺身の薬味は、風味も良くなりますが、生のお魚に当たらないよう殺菌する役目も担っています。殺菌効果の高い成分が入っていると解明される前から、先人の経験と知恵で「これを添えると当たらない」と伝えられてきたのですね。
乾燥しょうがは加熱してから乾燥させる製法がよく見られるので、その製法ですと体を温める効果の方が強いことになりますね。ただし、生だと体を温める効果がまったくないというわけではないですし、加熱すると殺菌効果がすべて失われるというわけでもありませんから、調理法やお好みに合わせて使い分けて良いと思います。
「体にいい食材だ」という情報に頼って、そればかり大量に食べたり、無理に取り入れたりするよりも、自分の体調に聞いてみて、ちょうどいい量や食べ方を探してみてください。最初は少しからはじめて、「調子が良くなった」と感じる量や食べ方が、あなたに適したものなのです。
そういった意味では、しょうが、ニンニク、ネギ、シソ、ミョウガなど、薬味によく用いられる野菜は代謝を高めたり、血流を促すものが多いですね。
同じ薬味野菜の仲間でも、シソは解毒効果がある、ニンニクやしょうがは殺菌効果がある、といった風にそれぞれ個性があるので、いろいろな薬味をミックスしてみるのがおすすめです。
冬の名物鍋は滋養強壮に、血流を改善するなら青魚を

いずれも「疲れた時に食べると元気になる」ということで、栄養学的に滋養強壮に優れた成分が多く含まれています。これらのお料理は、頑張った時、これから頑張る時などに食べるのがお勧めです。
秋冬におすすめの動物性食材というと、青魚もそうですね。サンマ、サバ、イワシ、カツオなどは、いずれも脂がのっていて美味しいのが秋なのです。青魚の脂肪は血中脂肪を減らし、血流を促してくれます。冬は寒さで血管が縮こまり、詰まりやすい季節ですから、秋から青魚を食べておくと、冬にちょうど血流が改善されてきます。
次回は、特にご質問の多かったしょうがの食べ方や効果について、さらに掘り下げていきます。お楽しみに!
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