せたがや相談室~夏疲れを癒やす食事や習慣~|第3回 「夏バテは、体の弱いところからやってくる」
体調がイマイチだな、病院に行ったほうがいいのかな?ちょっとした体の不調は、なかなか人には相談できないもの。そこで今回は、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生を迎え、8月のお悩みテーマ「夏バテ」について、皆さんの質問をもとに、中医学からみた夏バテと健やかに過ごすためのアドバイスをうかがいました。
・暑くて何度も目が覚め、いつも寝不足な感じです。エアコンをつけっぱなしで寝ることは体には良くないのでしょうか。
・夏は冷たいものばかり飲むので胃が冷えるので良くないと聞きますが、やはり冷たい飲み物が飲みたいです。
たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださった、たまゆら様、ちゃくら様ほかたくさんのご質問、ありがとうございました!
- ●今回担当の専門家
-
中垣亜希子 先生
すがも薬膳薬局代表、国際中医師、国際中医薬膳師、管理薬剤師。 薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。
夏バテにはなぜいろいろな症状があるのでしょう
夏バテの症状は、人によって本当にさまざまです。全身のだるさや疲労感、食欲不振、下痢や便秘など消化器系のトラブル……それぞれが、夏だけに起こる不調ではないですよね。
中医学では、心身のバランスの崩れが進行した結果が、症状として表れると考えます。夏バテというのは健康な人でもなりますが、胃腸が弱い人は食欲不振が出やすく、疲れやすい人はさらに気力体力がなくなるというように、もともとあった体質が症状に関係していることもあります。
皆さんからのご質問でこのようなものがありました。
ご質問の「食欲がない・だるいといった症状が1年を通してたまにある」という方は、もともとの体質に何かのダメージが加わって症状が出ているのかもしれません。ダメージには、暑さや寒さ、生活習慣、加齢など、さまざまな要因が考えられます。
健康を損なう夏の3要素
中医学では、体に良くない影響を及ぼす要因を「邪気/じゃき」と呼んでいます。邪気に襲われると、体はバランスを崩し、良いところは悪く、悪いところはより悪くなっていきます。
夏の暑さ、湿気、それからエアコンや冷たい飲食物による寒さ。これらが体に入り込むことで「邪気」となり、それぞれを「暑邪」「湿邪」「寒邪」と呼んでいます。語感でなんとなくイメージできるかもしれませんね。「自分が影響を受けやすいのはどの邪気か」を知って体質改善をすることで、邪気の影響を受けにくく、同時に、回復しやすい体になります。
■1. 体が乾燥しがち・潤い不足な方は、夏の「暑さ」で体調を崩します
暑邪は夏に最も盛んになる邪気で、体に熱をこもらせ、潤いを干上がらせる特徴があります。暑邪に襲われると、のぼせや火照り・すごく汗をかく・喉が渇く・心がそわそわして落ち着かない・イライラするなどの症状が出てきます。
影響を受けやすいのは、体の潤いが少ない「潤い不足タイプ」です。
肌・爪・髪などが乾燥しがちな人や、目・鼻・喉といった粘膜が乾いた人などが当てはまります。
日常的に暴飲暴食してエネルギー過多気味の方、ストレスが多い方や、もともと火照る体質の人、更年期の火照り・汗などがある人もそうです。
体全体の潤いは睡眠不足でも失われていきます。
皆さんからのご質問でこのようなものがありました。
「暑くて何度も目が覚め、いつも寝不足な感じ……」という方は、寝不足で潤い不足が進む上に、暑さで暑邪の影響も受けやすくなっています。昔より夜間の気温は上がっているので、熱中症も心配です。エアコン弱+扇風機で空気を循環させるなど、眠れる室温に保つ工夫をしてみてください。
■2. 胃腸虚弱やむくみがちな方は、「湿気」で体調を崩します
日本の夏は高温多湿なため、湿邪も盛んになります。湿邪はネバネバ・ベタベタ、重く濁った湿気のイメージです。湿邪に襲われると四肢の重さ、体が重だるい、口内のネバつき、むくみ・胃もたれ・下痢などが起こり、湿邪の影響が頭のほうに行くと、頭がズーンと重く感じます。
湿邪の影響を受けると、もともと上記の症状がある方は、さらに強く感じるようになります。慢性的に胃腸虚弱の人は胃腸虚弱が進みますし、通年むくんでいる人はますますむくみます。それから湿熱性のジュクジュクした湿疹が悪化します。これらは「体の水はけが良くない人」ですので、「水はけを良くする」必要があります。
■3. 冷え性のある方は、「寒さ・冷たさ」で体調を崩します
寒邪は分かりやすく、とても冷たい特質を持ちます。昔の夏は、あまり心配なかったのですが、いつでもエアコン・冷たい飲食物がある現代では注意が必要です。寒邪によって、体が冷たい、顔色が悪い、肩こり、神経痛の悪化などが起こります。
寒邪に影響を受けやすい人は、ズバリ冷え性の方です。第1~2回でお話しした「エネルギー不足タイプ」は、体を温める「気」が少ないため、冷え性になりやすい体質です。温かい飲食物をとるとお腹がほっとする感じがしたり、体を温めると腹痛・生理痛・腰痛などの痛みが楽になったりします。このタイプの人は、温めると楽になるし、冷やすと悪化します。涼しい場所では上着を羽織る、冷たい飲食物を控えるなど、夏でも体を冷やさないようにしてください。冷たいものは消化器系にダメージを与えて全身をますます冷やします。
私は冷蔵庫のスイカもほんの少しだけレンジで温めて、ぬるくして食べています。
下記のようなご質問をいただきました。
「どうしても冷たいものが飲みたい」ときには、熱中症も心配ですから、冷たい飲み物で水分補給をしてくださいね。熱中症になりそうな状況では、冷たいもので体を冷やし、冷たいものを飲んで体温を下げるのも、1つの方法です。
夏バテの症状は、もともと本人が持っている「バランスの乱れ」と、「暑邪」「湿邪」「寒邪」が複雑に絡み合っています。どれか1つ2つかもしれないし、全部が関係している方もいます。自分にどの傾向があるか、強く感じる体の不調は何かを考えながら、体調管理や食事を考えてみるのがおすすめです。
次の最終回では、さまざまなお悩みの対策方法について、おすすめの食材や気をつけたいことなどをご紹介します。お楽しみに!
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