語源・由来|漢字の成り立ち「上下」「弓偏」 正反対の意味で同じ成り立ちを持つ漢字
普段よく使う漢字には、意味が正反対でも由来が同じものがいくつかあります。今回は、そんな由来を持つ「上・下」と、弓偏の漢字「強・弱」の成り立ちをひもといていきましょう。
普段よく使う漢字には、意味が正反対でも由来が同じものがいくつかあります。今回は、そんな由来を持つ「上・下」と、弓偏の漢字「強・弱」の成り立ちをひもといていきましょう。
上・下
上と下、反対の意味を持つこの二つの漢字は、どちらも「手のひら」が由来になっています。
動物や植物などの形を元に作られている象形文字に対し、「上下」のような形がないものを表すための漢字を指事文字といい、点や線で表現しています。
「上」の横棒は上へ向けた手のひら、「下」の横棒は下へ伏せた手のひらを示しており、どちらも基準は長い横棒。その棒の上下にそれぞれ点を加えて、手のひらからの位置で表現したのが、この上下という漢字の成り立ちです。
ちなみに、指事文字には他に「本」「末」「未」などがあります。これら三つの漢字も「上」「下」と同じように、基準となっている漢字「木」があります。「本」は木の下に点を加えて木の根本を表し、物事の始めを意味しています。「末」は木の上に横棒を加えて木の端、つまり末端にある梢を表し、「未」は木の上に加えた横棒で木に茂った若い枝を表していることから若い、小さい、まだ、という意味を表しているのだとか。
弓偏の漢字「強」「弱」
弓という漢字は、文字の形からもわかるように、弓の形を表した象形文字です。そして弓偏の漢字は弓にまつわる物、もしくは弓にかかわる状態や動作を表しています。「強」「弱」の場合も一見弓とは関係なさそうですが、実は弓にまつわる成り立ちがあるのです。
「強」という漢字の成り立ちをたどる前に、まずは「強」から「虫」を除いた漢字「弘」の成り立ちを見ていきましょう。「弘」のつくり「ム」の成り立ちには、弓を射る際に握る部分「握り」に紐を巻きつけて強くした形という説、またはひじを張り出して弓をいっぱいに広げている様子を表しているという説があります。強固な弓を強く弾いた時の音がよく響くことから「広く大きな」という意味に変化、または弓を広げている様子から、「広く大きなこと」という意味になったといわれており、その意味からも男女問わず人名でよく使われている漢字です。
この「弘」のつくりに丈夫な硬い殻を持つ甲虫という意味の「畺(きょう)」を加えたのが、「強」という漢字です。甲虫についてはさまざまな説があり、硬い殻のコクゾウムシという説、または強い糸「天蚕糸(てんさんし)」を生む虫のことを指しているという説など。どちらの場合も、弓を強く丈夫にしているという意味から、「強」という漢字ができたといわれています。
「強」と反対の意味を持つ「弱」にも「弓」が使われており、「弓」の中に点が二つあります。この点は、弓の飾りを表しています。昔、弓は実戦用の武器としてだけではなく、魔除けなどの儀式にも用いられていました。お正月の縁起物として寺社仏閣で授与される破魔矢(はまや)も、破魔弓(はまゆみ)とセットになっていることも。これらの縁起物にも見られるように、儀式で使う弓にも飾りがついているそうです。つまり、「弱」の漢字の元となっている弓は、儀式で使うための弓のこと。このことから、実戦用の弓よりも「弱い」、羽飾りのついた儀式用の弓が二つ連なった様子を表す「弱」という漢字ができたと伝えられています。
いかがでしたか?見慣れた漢字でも、成り立ちを知ると納得できたり興味を持ったりできるのではないでしょうか。
関連する投稿
ゴールデンウィークから初夏にかけては、陽気に誘われて過ごしやすい時季です。そこで今回は、これまでご紹介してきた旅記事のなかで、「丸山千枚田」「奥入瀬渓流」「尾瀬国立公園」などの、新緑が美しい自然豊かな観光地や散策ルートをご紹介します。
キャッシュレス決済を利用する方が増えるなか、最も使用されているのがクレジットカード。しかし、これまでクレジットカードをあまり使用されていなかった方や、これからクレジットカードの使用を考えている方には分からないことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、いまさら聞けないクレジットカードの使い方や、注意したいポイントについてご紹介します。
語源・由来|「お雑煮」「羽根つき」 正月にまつわるめでたい由来
季節ごとの習わしや行事食は多々あれど、中でもお正月にまつわるものは、多く現代に残っています。今は簡略化されてしまって、そもそもの由来に思いを馳せることは少なくなっているかもしれません。今回は「お雑煮」と「羽根つき」が始まった理由や、言葉の意味をご紹介します。
イベント事のマナー|年の前半の締めくくり「夏越の祓」で、後半も健やかに
6月の終わりに行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」は、半年分の穢れを祓って夏を迎え、残りの半年を健やかに過ごすための神事。日本各地の神社で行われ、基本的にどなたでも参列できます。今回は、年の前半の締めくくりである夏越の祓について、また、茅の輪(ちのわ)くぐりのふるまい方についてご紹介します。
散策|美しい渓流や苔に癒やされる川沿い散策「奥入瀬渓流」(青森県)
十和田八幡平国立公園(青森県)を代表する景勝地のひとつが「奥入瀬(おいらせ)渓流」です。十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流は、国指定の特別名勝、天然記念物にも指定されています。四季折々の自然が満喫でき、遊歩道もしっかり整備されています。高村光太郎作の乙女の像でも知られる十和田湖と合わせての散策がおすすめで、ガイド付きのネイチャーツアーも開催されています。「星野リゾート奥入瀬渓流ホテル」で大人で優雅なリゾートも楽しめます。
最新の投稿
「ブリ御三家」のひとつとして知られる魚「カンパチ」。刺身としてよく食べられている魚ですが、煮てもおいしく味わえる栄養豊富な魚です。今回は、カンパチとよく似た魚との違いやカンパチに含まれる栄養、おすすめの食べ方についてご紹介します。
うな重として食べるのがポピュラーなうなぎですが、もう一つ、名古屋名物の「ひつまぶし」もうなぎの食べ方としてよく知られています。ひつまぶしは食べ方が3種類あるのが大きな特徴で、うな重とは異なるうなぎを味わえます。今回は、ひつまぶしの由来や食材に含まれる栄養などについてご紹介します。
ここ数年耳にすることの多い「ブラックフライデー」。さまざまな小売店やネットショップが大きなセールを行うので、なんとなくセールをやっている日と覚えている方も多いのでは。今回は意外なブラックフライデーの由来や、ブラックフライデーで上手にお買い物するコツなどをご紹介します。
野菜の豆知識|ビタミン&カルシウム補給に「豆」! 備蓄もできる便利食材
味噌や醤油、豆腐など大豆製品は日本人の食卓の定番食材ですが、大豆以外にも豆はたくさんの種類があります。栄養も豊富な上に長期保存が可能なタイプもあるので、備蓄や非常食としても優秀です。今回は、身近なようで、意識しないとなかなか摂る機会が少ない方も多いかもしれない豆の栄養や食べ方についてご紹介します。
そばは1年を通して多くの場所で提供されている、日本で定番の麺メニューですが、秋に旬を迎える「新そば」をご存じでしょうか。そば本来の味や香りが堪能できる新そばは、秋の風物詩のひとつです。今回は、秋の旬の食べ物でもある秋の新そばの基本情報と栄養、おすすめの食べ方についてご紹介します。