間違いやすい日本語|「檄を飛ばす」「やおら」 人の様子を表す言葉
今回は、人の様子を表す言葉のなかから、間違いやすい表現をご紹介します。「檄を飛ばす」と「やおら」は、どちらも激しい様子を表す言葉という印象がありますが、はたして実際はどういった意味なのでしょうか。
今回は、人の様子を表す言葉のなかから、間違いやすい表現をご紹介します。「檄を飛ばす」と「やおら」は、どちらも激しい様子を表す言葉という印象がありますが、はたして実際はどういった意味なのでしょうか。
言葉による戦い 「檄を飛ばす」
ニュースなどで「選挙戦がスタートし、各党の候補者が支援者に檄を飛ばすシーンが各地で見られた」という時、「檄を飛ばす」はどのような意味で使われているのでしょうか。
問. 「檄を飛ばす」とはどのような意味なのでしょうか?
2. 元気のない者に刺激を与えて活気づけること
答えは、1の「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」です。
先述のニュースの例では、候補者が支援者に自分の主張を語り、同意を求めていることになります。選挙戦を頑張るようにと激しい言葉で陣営を活気づけている、と捉えるのは誤りということになります。
先ほどのクイズは、文化庁の平成19年度の「国語に関する世論調査」において実際に出題されたもので、その結果を見ると、正答者はわずか19.3%でした。
そもそも「檄」の意味を調べてみると「自分の主張を述べて同意を求め、行動への決起を促す文書」とあります。
昔、中国では戦争の際に同志を募ったり、役所が通告を知らせるために木の札に文書を書き記していました。この文書が「檄」で、漢字に木偏が使われているのもこのためです。特に戦争の時には、いかに敵に非があり、こちらに正義があるかを万民に伝えて心をつかみ、戦争を有利に運ぶことが必要とされました。至急、知らせる必要がある場合には、飛ぶように早く届けられるようにとの意味で文書に鳥の羽を挿したといいます。これが「羽檄(うげき)」という言葉になりました。また檄を急いで回すことという意味で「飛檄」という言葉もあります。これが「檄を飛ばす」という言い方の元になったのです。
ともに立ち上がろうと人々に呼び掛ける「檄」は、人心を揺さぶるために、激しい言葉が使われがちです。現代において、「檄を飛ばす」の意味が、激励や発奮を促す間違った使われ方をされるようになったのは、「檄」の言葉づかいの激しさに加え、「檄」という漢字が日常ではなかなか使わない字でもあることも加わって、「激励」の「激」と混同されるようになったのかもしれません。
真逆の意味で使われることの多い 「やおら」
「彼はやおら立ち上がり、部屋を出て行った」。これがドラマのワンシーンの説明だとしたら、「彼」役の俳優は、どんな動きをすればいいでしょうか?
問. 「彼はやおら立ち上がった」という場合、「やおら」はどういった意味なのでしょうか?
2. ゆっくりと
答えは、2の「ゆっくりと」です。
先ほどの例でいえば、「彼」役の俳優は、ゆっくりと立ち上がって部屋を出て行くのが正解で、いきなり立ち上がる演技では不正解となります。
文化庁の平成18年度の「国語に関する世論調査」で同じ問題が出されています。その結果はというと、正解の「ゆっくりと」を選んだ方は40.5%で、誤答者の方が多かったのです。
同様の間違いやすい言葉に「おもむろに」があります。「落ち着いてゆっくりと、ことを始めるさま」が正しい意味なのですが、しばしば「不意に」という意味にとられています。詳しくは下記の記事も参考にしてみてください。
「やおら」は漢字で書くと「徐ら」と書きます。「徐々に」や「徐行」の「徐」です。漢字にも表れているとおり、「やおら」は主に、「ゆっくりと」や「悠然と」といった意味で使われる言葉です。ほかにも、「静かに」「そっと」という意味でも使われます。いずれにしても、「突然」とか「急に」といった慌ただしさとは無縁のはずです。それではなぜ、まったく逆の意味に間違われるようになったのでしょうか。
その背景を「やおら」が使われるケースから想像してみましょう。「やおら」が使われる場面は、「立ち上がる」「起き上がる」「身を起こす」「現れる」など「動作を起こす、動作を始める」時です。これらは多くの場合、「急に」の意味で読んでも、「ゆっくり」の意味で読んでも読み進められる文章であることが多いのです。正しい意味を知らないと、作者の書きたかった情景は伝わりにくくなります。動作だけでなく、時にその人の心情をも表す「やおら」という言葉。作品をより深く理解するために、覚えておきたい言葉です。
関連する投稿
ゴールデンウィークから初夏にかけては、陽気に誘われて過ごしやすい時季です。そこで今回は、これまでご紹介してきた旅記事のなかで、「丸山千枚田」「奥入瀬渓流」「尾瀬国立公園」などの、新緑が美しい自然豊かな観光地や散策ルートをご紹介します。
キャッシュレス決済を利用する方が増えるなか、最も使用されているのがクレジットカード。しかし、これまでクレジットカードをあまり使用されていなかった方や、これからクレジットカードの使用を考えている方には分からないことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、いまさら聞けないクレジットカードの使い方や、注意したいポイントについてご紹介します。
語源・由来|「お雑煮」「羽根つき」 正月にまつわるめでたい由来
季節ごとの習わしや行事食は多々あれど、中でもお正月にまつわるものは、多く現代に残っています。今は簡略化されてしまって、そもそもの由来に思いを馳せることは少なくなっているかもしれません。今回は「お雑煮」と「羽根つき」が始まった理由や、言葉の意味をご紹介します。
イベント事のマナー|年の前半の締めくくり「夏越の祓」で、後半も健やかに
6月の終わりに行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」は、半年分の穢れを祓って夏を迎え、残りの半年を健やかに過ごすための神事。日本各地の神社で行われ、基本的にどなたでも参列できます。今回は、年の前半の締めくくりである夏越の祓について、また、茅の輪(ちのわ)くぐりのふるまい方についてご紹介します。
散策|美しい渓流や苔に癒やされる川沿い散策「奥入瀬渓流」(青森県)
十和田八幡平国立公園(青森県)を代表する景勝地のひとつが「奥入瀬(おいらせ)渓流」です。十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流は、国指定の特別名勝、天然記念物にも指定されています。四季折々の自然が満喫でき、遊歩道もしっかり整備されています。高村光太郎作の乙女の像でも知られる十和田湖と合わせての散策がおすすめで、ガイド付きのネイチャーツアーも開催されています。「星野リゾート奥入瀬渓流ホテル」で大人で優雅なリゾートも楽しめます。
最新の投稿
健康メニュー|暑くなる前に「煮込まないスープ」のレパートリーを増やそう
「煮込まないスープ」は、短時間で手軽に作れるので忙しい朝や暑い時期にもぴったりだと最近話題のメニューです。今回は、煮込まないスープを作る際に押さえておきたい煮込み時間を短縮するためのコツやおすすめの具材・味付けのバリエーションを解説します。
健康メニュー|「春雨」の名付け親は日本! その由来とおいしい活用法
「春雨」と聞くと、天気と食材のどちらを思い浮かべますか。実はこの二つは、まったく無関係ではありません。今回は、身近な食材である春雨の名前の由来や特徴、便利な使い方など、知っておきたい豆知識をご紹介します。
洋食店や喫茶店など、幅広い飲食店で提供されているナポリタンは、パスタの本場イタリアには存在しない日本生まれのメニューであることをご存じでしょうか?今回は、老若男女に愛されているナポリタンの発祥や名称の由来、ご当地メニューとしてのナポリタンなどについて解説します。
2026年4月1日から改正道路交通法が施行され、自転車の交通違反に「交通反則通告制度(いわゆる青切符)」が導入されます。今後は、交通事故の原因となるような、悪質・危険な違反であった時には反則金が科されることになります。「自転車だから大丈夫」と思っていた行為が、実は違反だった――そんなケースもあるかもしれません。この機会に、自転車の交通ルールをあらためて確認しておきましょう。
健康メニュー|せいろ蒸し 素材のうま味や栄養を逃さずおいしく
食材を並べて蒸すだけの「ほったらかし調理」で、素材のうま味や栄養を逃さず調理できる「せいろ蒸し」は、ヘルシーな調理方法として人気が再燃しています。今回は、せいろ蒸しの基本とせいろの選び方、おすすめメニューをご紹介します。
