脂質は大事な栄養素 見直そう!からだにイイあぶらの選び方
肥満のもと、健康の敵と、なにかと悪者にされがちな「あぶら(脂質)」。しかし、生きていくために欠かせない栄養素であり、むやみに断ってしまうと健康に悪影響をおよぼします。最近はエゴマ油、アマニ油など体にいいと注目されている食用油もあります。あぶらの性質や効果を学び、美味しく健康的に摂り入れましょう。
教えていただいたのは
監修:守口 徹(もりぐち とおる)
広島県出身。1982年横浜市立大学を卒業後、湧永製薬の薬理部門に勤務。国立がんセンター研究所、東京大学薬学部に研究出向後、同大学で博士号を取得。1997年から米国国立衛生研究所(NIH)で客員研究員として脂肪酸と脳機能を研究。2008年より麻布大学生命・環境科学部教授に着任。日本脂質栄養学会理事長。メディアに多数出演するほか『カラダが変わる! 油のルール』(朝日新聞出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 脂質の話』(日本文芸社)など多くの著書、監修書がある。
脂質とはなにか
あぶら(脂質)は糖質(炭水化物)、タンパク質と並ぶ三大栄養素の一つ。体のエネルギー源になるほか、細胞を守る細胞膜や脳の形成にも重要な役割を担っています。脂質は生きるために欠かせない栄養素なのです。
一方で、糖質やタンパク質が1g当たり4kcalなのに対し、脂質は9kcal とカロリーが高いことでも知られます。糖質や脂質は摂りすぎるとエネルギーとして消費しきれず、体脂肪が増えて肥満の原因となります。さらには動脈硬化が進んで心疾患のリスクが高まる可能性も。脂質は適切な量を摂ることが大切です。
脂質の種類を知ろう
脂質には大きく分けて「油」と「脂」があります。主に植物や魚に多く常温で液体のものが油、肉や乳製品に多く常温で個体のものが脂です。
2つの違いを生み出しているのが脂質の主成分「脂肪酸」です。下の脂質の種類の図のように脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類でき、不飽和脂肪酸はさらに「オメガ3系」「オメガ6系」「オメガ9系」に分けられます。
「脂肪酸は各々で働きが異なります。バランスよく摂るには脂質の摂取量を総エネルギーの3割以下に抑えましょう。また、現代人はオメガ3系が不足しているので意識して摂りたいです」(守口先生)
脂肪酸と主な食用油脂
油脂は複数種の脂肪酸から構成されていて、どの成分を多く含むかによって分類されます。また、油に溶け込んでいる味や香り、料理との相性も異なるので、健康を考えながら選びましょう。
脂肪酸の特徴
オメガ3系脂肪酸
花粉症やアトピーなどのアレルギー性炎症疾患の予防、動脈硬化のリスク低減を期待できるα-リノレン酸が豊富。また、α-リノレン酸は血液をサラサラにするEPAや脳を活性化するDHAに体内で変換されます。本来、オメガ3系とオメガ6系の理想的な摂取比率は1:2と言われていますが、食の欧米化によって現在は1:10の割合で摂取しているという調査結果もあります。オメガ3系の摂取を心がけましょう。
オメガ6系脂肪酸
主成分のリノール酸は子どもの成長などに欠かせない必須脂肪酸ですが、過剰に摂取すると免疫細胞が暴走してアレルギー性炎症疾患や心疾患を引き起こす可能性があります。オメガ6系は大豆や小麦、米などにも含まれ、普段の食生活で十分に摂れるので、オメガ6系の油は控えめにしましょう。
オメガ9系脂肪酸
主成分のオレイン酸は酸化しにくいので加熱料理に向いていますが、体内でも合成されるため摂りすぎに注意しましょう。
飽和脂肪酸
重要なエネルギー源です。ただし、摂りすぎると動脈硬化のリスク
が高まります。
油脂の上手な摂り方
オメガ3系脂肪酸は優先的に
不足しがちなオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)は積極的に摂りましょう。オメガ3系の油は一日小さじ1杯(約4g)の摂取が目安です。ただし、主成分のα-リノレン酸は酸化しやすいため、加熱料理には向きません。あまりクセがないのでサラダのドレッシングにしたり、納豆やみそ汁などにかけるとよいでしょう。ヨーグルトや野菜ジュースに入れるのも食べやすくておすすめです。
また、サプリメントで摂ることもできるため、上手に活用しましょう。
「見えないあぶら」に気を付けよう
日本植物油協会によると、日本人が摂取しているあぶらのうち料理にも用いる植物油など「見えるあぶら」は4 分の1で、4分の3は肉や魚、穀類、加工食品に含まれる「見えないあぶら」だといいます。魚は不足しがちなオメガ3系脂肪酸を含むので意識的に食べましょう。また、食物繊維は脂質の吸収を抑えるので、肉は野菜と一緒に食べる等の工夫をするとよいでしょう。
揚げ物、炒め物で油脂の摂りすぎを防ぐには
揚げ物や炒め物は非常に高カロリーです。熱に強いオメガ9系の油脂を使い、調理も工夫して上手にコントロールしましょう。
炒め物素材は下茹でする
あらかじめ食材に火を通しておくことで、少ない油脂で炒めることができます。
食材は大きめに切る
小さく切ると油脂と接する表面積が広くなり、そのぶん油脂を多く吸収してしまいます。
揚げ物の衣は薄く
素揚げ→ 唐揚げ→フライ・天ぷらと、衣の量が多いほど吸油率も高まります。フライ・天ぷらの場合も衣は薄めにまぶしましょう。
コレステロールは悪ではない!
コレステロールは細胞膜の形成やホルモンの材料になる重要な脂質の一種。コレステロールには肝臓から全身に運ばれていくLDL(悪玉)コレスロールと、全身から回収されるHDL(善玉)コレステロールがあり、どちらが悪いというものではありません。LDLが多すぎても、HDLが少なすぎても動脈硬化を引き起こす可能性があり、両方がバランスよく機能していることが大事なのです。
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