ズボラ瞑想のすすめ
人間関係や体のちょっとした不調、将来のことなど、悩みや不安はありませんか?それらを解消できると注目される瞑想の中でも、親しみやすくカスタマイズした「ズボラ瞑想」は誰でも簡単に、場所を選ばず、時間がなくてもできます。この機会に心身共に健やかになれる新習慣として取り入れてみましょう。
教えていただいたのは
監修:川野 泰周(かわの たいしゅう)
精神科医・心療内科医
臨済宗建長寺派 林香寺住職
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科診療に従事。禅修行を経て、臨済宗建長寺派林香寺の19代目住職に。現在は、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長を務め、禅僧と精神科医の“二足のわらじ”を履きながら、講演やメディア出演を通じ、マインドフルネス普及活動にも取り組む。
こんな方におすすめ!
■いつも心がモヤモヤ、イライラする
■なんだか頭が回らない。前はもっと集中できたのに…
■健康診断では問題なし。なのに、どうも体調がすぐれない
■若い頃は一晩寝れば疲れがとれたのに、最近は朝から気だるい
ズボラ瞑想とは
どこでもできる
静かな寺院などでなくても大丈夫です。家庭でも、散歩中でも、仕事中でも、日常生活の中で行えます。1分でもOK
静かに長時間座るだけが、瞑想ではありません。たった1分でも脳の休息にあて、脳の疲れを癒すことが重要です。がんばらない人ほどうまくいく
「うまくやろう」「~しなくちゃ」と頑張ると、脳と心が休まりません。瞑想は気楽にする方が続けやすいものです。雑念が浮かんでも大丈夫
瞑想中に雑念が浮かぶのは、誰もが通る道。「今、雑念が浮かんでいるな」と心の動きを感じるだけでも大きな前進です。豆知識
瞑想とズボラ瞑想の違いは?
「瞑想」はせわしない心の働きをひととき休める調整法。脳科学の研究では、脳の疲れがとれる、悩みが消えるといった効用が発表されています。禅にルーツを持つエクササイズ「マインドフルネス」の瞑想法は、グーグルやマイクロソフトなどの世界的企業の社員研修にも活用され、コロナ禍の影響で心のバランスを崩した方の治療にも、有用とされているのです。
今回紹介する「ズボラ瞑想」は、そんな瞑想を始めやすく、続けやすくアレンジしたもの。脳を疲れさせる同時進行の行為をやめ、好奇心をもって一つの行動に集中することで、脳のリセットを目指します。
悩みの原因は脳の疲れ!?
上部で「こんな方におすすめ!」と挙げた、お悩みの原因解明の第一歩は、自分の疲れを知ることです。疲れには3種類あり、1つ目は、運動の後などに感じる肉体の疲れ。これは原因を特定しやすく、物理的な体の休息で回復できます。残りの2つは脳の疲れによるもの。脳の疲れには2種類あり、1つは悩みやストレスなどの「ネガティブな感情による疲れ」、もう1つはいくつもの作業、思考を並行して行うことによる「同時進行による疲れ」です。これらの疲れは、脳への負担が大きく、無意識に疲れが蓄積し、負のスパイラルに陥る傾向があります。精神的な不調や集中力の低下、原因不明の体の不調は、こういった脳疲労によるものと自覚しましょう。
脳を休める2つのコツ
1つ目のコツは、ネガティブな要素、マイナスの感情にふたをして、表面的なポジティブを装うのではなく、「自分の中で生まれた感情を丁寧に感じとり、受容する」こと。2つ目のコツは、「今ここにある、たった1つの行為や感覚に心を置く」こと。この2つを満たした状態に心を整えると、脳がリフレッシュされエネルギーが充電できるのです。
ズボラ瞑想のメリット
脳の疲れを回復できると、頭がスッキリするのはもちろん、近年の研究から以下のメリットがわかっています。
集中力・注意力がアップ
ズボラ瞑想ができれば、あれこれ考えることがなくなり、集中力が回復します。心にも余裕が生まれ、注意力も回復するのです。さらには、ズボラ瞑想の習慣化で、物事を進める際に脳のパフォーマンスも向上することが期待されます。ストレス耐性がつく
自分の感情を客観視することで視野が広くなり、「〜でなくてはならない」といった思い込みや執着を脱することができ ます。うつ病の再発防止に関する研究では、マインドフルネスを実践することで、従来の薬物療法に匹敵する再発防止効果を発揮することが示唆されています。自律神経が整う
自律神経の失調は、興奮状態の交感神経と、リラックス状態の副交感神経のバランスが乱れることで起こりますが、ズボラ瞑想でこのスイッチをスムーズに切り替えられることがわかっています。自律神経の乱れが原因の1つと言われる、肩こり、腰痛、頭痛のケアにも役立ちます。人とのコミュニケーションが円滑に
「ありのままの自分を受け入れる」ズボラ瞑想を始めると、人と比べて悩んだり、虚勢を張ったりする必要がなくなり、他者にも受容的になれます。心の余裕が生まれて、相手の身になって考えられるようになり、コミュニケーションが円滑になっていくでしょう。おすすめズボラ瞑想10 ~当たり前にやっていることに意識を向けるだけ~
いつでもどこでもできるズボラ瞑想の中から、10の方法を紹介。
全てをやる必要はありません。生活習慣に合わせて、できるものをぜひお試しください。1日1分でいいので、毎日続けることをおすすめします。
1.キャベツの千切り瞑想
キャベツを切る包丁の感覚に、しっかり意識を向けましょう。トントンという音と手に伝わる感触に集中することで、心が静かに整います。納豆をかき混ぜたり、大根をすりおろしたり、といった動作でも同様にできます。2.歯磨き瞑想
隅から隅までゆっくりと磨く中で、シャカシャカしたブラシの音やリズム、ブラシの先がチクチクと刺す感触、口をゆすぐときの水の冷たさ…全てを感じましょう。3.はだし歩き瞑想
足の裏で地面の感触をしっかり感じ取りましょう。普段意識しない足裏の感覚に注意を向けることで、「今、この瞬間」を感じる能力が向上します。いつもよりぐっとスピードを落として、かかとが上がる、つま先が上がる、空中を足が移動する、そして着地する、という一連の動作を味わうのもいいでしょう。4.プチプチつぶし瞑想
梱包材に使われているプチプチ(緩衝材)をひたすらつぶしながら、音と指の感触を楽しみます。手の平は、感覚受容器が集中している部位。感覚的に意識を向けるコツをつかみやすいといえます。5.おやつ・コーヒー瞑想
ながら食い、ながら飲みをせず、食べ物や飲み物に心を向けます。例えばナッツのおやつなら、最初はかまずになめるだけ。10秒間ほどナッツ表面の味や香りだけを味わい、その後かみ締め、食感を堪能します。五感を研ぎ澄ますのが重要です。6.空を眺める瞑想
空をよく観察して、「今日の青はいつもより深い気がする」「雲が多くなってきたな」そんなことを感じてください。夜に月を見上げて、満ち欠けや色を毎日観察するのもいいでしょう。7.ペットなでなで瞑想
感覚受容器が集中した手の平で、犬や猫などを優しくなでます。手の感覚に意識を向け、ゴツゴツした背中、ふわふわしたお腹、ツルツルとした頭、そして手脚と、感触の違いを味わいながら、生き物の命を慈しむ心も育まれます。8.川で小石投げ瞑想
子どもの頃にやった方も多いであろう、水切り遊びをしてみましょう。なるべく低い角度で投げて、石が水面を跳ねるように飛んでいくさまに集中します。一見、非生産的に思える行為にも、脳の疲れを回復させるヒントが隠れています。9.解説を見ずにアート鑑賞瞑想
禅の教えのひとつに「言葉や文字に囚われていては、悟りを得ることができない」というものがあります。アート鑑賞をする際に、あえて解説を読まず、先入観をなくして、自分の内からの感じ方に向き合ってみましょう。頭の中でからまった考えが、ほどけるような感覚になれるかもしれません。10.ストレッチ瞑想
姿勢や今伸びている箇所に感覚を集中させて、ストレッチを行います。これも、体がほぐれるのと同時に脳がほぐれる、立派なズボラ瞑想です。同じストレッチでも、今伸びている箇所に意識を向けながら伸ばすと、ストレッチの効果が格段に上がるメリットも。
堅苦しいルールはありません。
日常の所作を丁寧に行い、心の底から堪能してみることが
脳の疲れを回復し、心身を前向きに導く簡単リセットになります。
ぜひ新習慣として取り入れて、生きやすく笑顔あふれる毎日に!
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