2016年12月28日

日本のみそ|麦味噌(西日本) 麦の香りとやさしい甘みがうれしい

西日本の農家で昔から作られてきた麦味噌。麦の香りとほのかな甘みが特徴で、同じく甘みに特徴があることで知られる九州の醤油や、大分、愛媛など柑橘類の産地で好まれるゆず胡椒、ゆず七味などの薬味ともよく合います。今回は、麦味噌の特徴や分布、麦味噌を使った郷土料理をご紹介します。


西日本の農家で昔から作られてきた麦味噌。麦の香りとほのかな甘みが特徴で、同じく甘みに特徴があることで知られる九州の醤油や、大分、愛媛など柑橘類の産地で好まれるゆず胡椒、ゆず七味などの薬味ともよく合います。今回は、麦味噌の特徴や分布、麦味噌を使った郷土料理をご紹介します。

 

「麦味噌」とは

麦味噌は、「大麦」または「はだか麦」を蒸し、種麹をつけた「麦麹」と、大豆、食塩を発酵、熟成させて作られます。塩分控えめで麹の割合が多いため、あっさりとした甘みが特徴です。
麦味噌は西日本の中でも中国・四国地方の一部と、九州地方全域で昔から食べられてきました。これらの地域の農家では、各家庭で麦味噌が作られていたことから、「田舎味噌」とも呼ばれます。
中でも愛媛県、山口県、広島県などで作られる、麦の香りが強い「瀬戸内麦味噌」、長崎県などで作られる淡い褐色で甘口の「長崎味噌」、鹿児島県で作られる淡色で甘口の「薩摩味噌」などがよく知られています。

麦味噌のお味噌汁は「味噌漉し」が必須!

麦味噌のお味噌汁の出汁は煮干し(いりこ)。具は、薄揚げと大根、豆腐とわかめ、えのきとねぎなど他のお味噌でも定番の組み合わせから、タマネギ、じゃがいも、サツマイモまでさまざまな組み合わせが見られます。あっさりとした甘みは、根菜やきのこなどを入れた具だくさんの豚汁にもぴったりです。
麦味噌は、お味噌汁に味噌を溶くときの様子にも特徴があります。米味噌や豆味噌はお玉にとった味噌を菜箸でかき混ぜてそのまま溶いていくこともありますが、麦味噌の場合は必ず味噌漉しを使って味噌をすりつぶしながら加えます。
というのも、麦味噌は味噌が溶けた後も残る大豆・麦の繊維、麹などの固形物、いわゆる「味噌かす」が多いのです。味噌漉しを使うことで、これらのかすは漉し取られ、味噌汁も口当たりがよくなります。

冷たい味噌汁も!?麦味噌の郷土料理

 

麦味噌を使った郷土料理には、大根やニンジン、ゴボウなどの根菜類と鶏肉(または豚肉)を出汁で煮込み、麦味噌を加えた具だくさんの「薩摩汁」(鹿児島県)、同じ“さつまじる”でも、焼いた麦味噌と焼きほぐした白身魚を合わせて出汁でのばす、漁師のぶっかけ飯「佐妻汁(伊予さつま)」(愛媛県)、そして練った小麦粉を平らにちぎった団子(だご)と根菜類を出汁で煮込み、麦味噌を加える「だご汁(だんご汁)」(熊本県・大分県)などがあります。
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください。

こうした郷土料理の中でも変わり種なのが、なんと麦味噌を“冷たい味噌汁かけご飯”に仕立てる「冷や汁(ひやじる・ひやしる)」(宮崎県)です。主な具は薄切りにしたきゅうりや白身魚、豆腐などあっさりとした食材中心で、ミョウガや大葉、すりごまなど香りのいい薬味が効いた冷や汁。暑さの厳しい南九州らしく、食欲の衰えがちな夏場にも食べやすい一品です。
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてください。

合わせ味噌(調合味噌)といえば、全国では米味噌どうしの赤味噌と白味噌を合わせたものがよく見られますが、実は福岡県を中心とする九州北部では米味噌と麦味噌の合わせ味噌が主流です。このように、他の種類のお味噌と組み合わせてもおいしくいただける麦味噌。冬は身体を温めるのにぴったりな具だくさんの豚汁やさつま汁、夏は食欲のない日でもするするといただける冷や汁にして、召し上がってみてはいかがでしょうか。