そば粉を麺状に切る「そば切り」がはじまったのは、江戸時代の頃。古くからそばの実が採れた土地では「そば切り」以前に作られた、そば粉を使ったさまざまな郷土料理が残っています。今回ご紹介するのは、岩手県北部の郷土料理で、ユニークな形のそば団子が入った「柳ばっと」。野菜たっぷりのあたたかい汁に、つるりとした食感の団子がおいしい滋味に富んだメニューです。
2020年02月26日
そば粉を麺状に切る「そば切り」がはじまったのは、江戸時代の頃。古くからそばの実が採れた土地では「そば切り」以前に作られた、そば粉を使ったさまざまな郷土料理が残っています。今回ご紹介するのは、岩手県北部の郷土料理で、ユニークな形のそば団子が入った「柳ばっと」。野菜たっぷりのあたたかい汁に、つるりとした食感の団子がおいしい滋味に富んだメニューです。
そば粉を麺状に切る「そば切り」がはじまったのは、江戸時代の頃。古くからそばの実が採れた土地では「そば切り」以前に作られた、そば粉を使ったさまざまな郷土料理が残っています。今回ご紹介するのは、岩手県北部の郷土料理で、ユニークな形のそば団子が入った「柳ばっと」。野菜たっぷりのあたたかい汁に、つるりとした食感の団子がおいしい滋味に富んだメニューです。
良質なそばを生産する岩手県北部の名物といえば、わんこそばが有名です。食べる様子もユニークで人気のあるわんこそばですが、ここではそばを使ったもうひとつの素朴な郷土料理「柳ばっと」をご紹介します。
岩手県北部で親しまれる「柳ばっと」は、そば粉を熱湯で練って平たい団子状にしたタネと、根菜やキノコ類などを一緒にだし汁で煮た汁物の料理。団子が柳の葉のような見た目になっているのが大きな特徴です。しょう油仕立てにする場合と、味噌仕立てにする場合があり、各家庭でレシピに細かい違いがあります。
そば粉は熱湯を加えて練ることで、そば粉に含まれるでんぷんがアルファ化(のり状に変化すること)します。アルファ化することで消化吸収がよくなり、そばの栄養を効率よく摂ることができます。
そのアルファ化が期待できるメニューのひとつは「そばがき」。そば粉を熱湯で練るだけで子どもでも作ることができるので、幼少期のおやつだったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。子どもは砂糖やしょう油をつけておやつとして、大人はそのままお酒のアテとして食べることが多いようです。
柳ばっとの「柳」は、そばで作った団子の形に由来しています。では、「ばっと」とは何を指すのでしょうか。江戸時代、この地域の農民はそばを食べることを禁止された時期がありました。しかし、たくましい農民たちは「これはそばではなく、柳ばっと」といって、柳型のそば団子を作って食べていたとされています。柳ばっとの「ばっと」は、禁止された事柄を意味する「法度」からきているというのが一説です。
「食べることを禁止=ご法度」だったことで、その名がついた郷土料理はほかにもあります。例えば栃木県や宮城県の北部で食べられている小麦団子入りの「法度汁」は、おいしくて食べすぎてしまうため、質素倹約を旨とする徳川光圀公から禁止されたという説や、上納するべき小麦粉で団子を作っていたという説があります。
法度汁については、以下の記事も参考にしてみてください。
また、青森県ではじゃがいもを団子にした「いものおづけばっと」という郷土料理があります。こちらは「ご法度」が由来したという説が明確にはありませんが、「ご法度→はっと→団子状のもの」というように変化したものかもしれません。もう一説には、中華料理のワンタン(餛飩)が「ふんとぅん」「うんどん」「ほえとえ」となまって、はっと・うどん・ほうとうなどに分化していったという説もあります。
いものおづけばっとについては、以下の記事を参考にしてみてください。
料理の名付けの由来は諸説あるのが普通で、その土地の歴史を反映しているものも多くあります。ご自身の郷土の料理も、名前の由来を調べてみると意外な発見があるかもしれませんね。
柳ばっとのレシピは、そば団子が入る以外は、すまし汁やみそ汁の作り方と変わりません。野菜や鶏肉など、好みの具材をたっぷり入れるのがおすすめです。
野菜たっぷりの汁物は、1品だけでもしっかり栄養と満足感があります。そこに柳型のそば団子が入れば、柳ばっとに早変わりです。初めての方には新鮮、地元の方には懐かしい柳ばっとを、本日の夕食に召し上がってみてはいかがでしょうか。
画像提供:岩手県観光協会