2020年01月29日

郷土料理|旬の魚をまるごと食べる、冬の味覚「あんこう鍋」

寒さが厳しくなったら、お鍋の季節です。鍋料理はどれもおいしいですが、旬のあんこうをまるごと使ったあんこう鍋はまた格別。水戸・大洗など茨城県北部の名物で、さっぱりした身と、食感の異なるさまざまな部位、濃厚な味わいのあん肝を一度に味わうぜいたくな料理です。今回は冬の味覚であるあんこう鍋の栄養や、地元のあんこうを使った名物料理をご紹介します。


寒さが厳しくなったら、お鍋の季節です。鍋料理はどれもおいしいですが、旬のあんこうをまるごと使ったあんこう鍋はまた格別。水戸・大洗など茨城県北部の名物で、さっぱりした身と、食感の異なるさまざまな部位、濃厚な味わいのあん肝を一度に味わうぜいたくな料理です。今回は冬の味覚であるあんこう鍋の栄養や、地元のあんこうを使った名物料理をご紹介します。

画像提供:一般社団法人茨城県観光物産協会

 

旬のあんこうを、あますことなく食べる鍋

画像提供:一般社団法人茨城県観光物産協会

 

あんこうは冬においしくなる魚の代表格で、「西のふぐ、東のあんこう」とも称されます。冬のあんこうは春の産卵期に向けて、肝にたっぷりの脂肪とうまみを蓄えています。ちなみにあんこうは雌雄差がある魚で、メスはオスより早く成長し体が大きくなります。一般に食用とされるのはメスのあんこうです。

あんこう鍋は野菜と「あんこうの七つ道具」を、しょうゆか味噌仕立てのスープで煮込んだ鍋料理。「あんこうの七つ道具」とは肝・皮・水袋(胃)・ふんどし(卵巣)・エラ・ヒレ・身の7つの部位で、異なる食感や風味をひとつの鍋で一度に味わうことのできる楽しさがあります。

身肉はヘルシー&高タンパク

あんこうの白身は、脂質が少なく低カロリー、しかも高タンパクで、とてもヘルシーな部位。ダイエット中の方にはもちろん、運動で筋力アップを目指している方にもおすすめできます。皮の部分はプルプルで女性にうれしいコラーゲンがたっぷりと含まれています。

また、身にはビタミンB12、B2、B6などのビタミンB群が多く、これらは貧血や肌荒れが気になる方に摂っていただきたい栄養素です。

あん肝には栄養がぎっしり

「あんこうの価値は肝で決まる」といわれるほど、濃厚で芳醇なうまみのあるあん肝。事実、産卵を終えて肝が痩せたあんこうは、がくんとお値段が下がります。あん肝は脂肪が多くて高カロリー。しかし、この脂肪には青魚にも含まれるDHAやEPAなど、生活習慣病予防が期待できる不飽和脂肪酸が含まれています。

そのほかにも、あん肝には摂っておきたい栄養がぎゅっと詰まっています。血液を作るのに必要な鉄や銅、身体の発育や味覚の形成を助ける亜鉛、そして生活習慣病や老化に関係する活性酸素を抑えるはたらきがあるといわれるビタミンE、さらにはビタミンA、ビタミンB12、ビタミンDなどなど。このように味も栄養も濃厚なあん肝ですが、プリン体も多く含まれているので、体脂肪が気になる方や尿酸値が高い方は、食べすぎに注意が必要です。

地元ではなじみ深い「供酢」

画像提供:一般社団法人茨城県観光物産協会

 

あんこう鍋は全国的に知られていますが、水戸・大洗地方でなじみのあるあんこう料理といえば「供酢(ともず)」です。あんこうの七つ道具を湯引きしたものに、弱火で煎った肝と味噌・砂糖・酢をあわせて練ったタレをつけて食べる料理で、地元以外ではなかなか見かけない一品。湯引きしたものを一晩冷蔵庫で冷やして、煮こごり状になったものを四角くカットして使うこともあります。あんこうはゼラチン質が豊富なため、湯で冷ますだけで固まります。鮮度を保つ技術がなかった時代、臭みが出ないようにすばやく調理することを求められた地元の知恵から生まれた郷土料理です。

また、「どぶ汁」と呼ばれる、あん肝と野菜から出る水分だけで作る漁師版あんこう鍋もあります。大変濃厚でクセがあるので好き嫌いが分かれる料理ですが、あん肝が大好物という方は一度試してみてはいかがでしょうか。

あんこうはさばくのに技術を必要としますが、今はスーパーなどで下ごしらえ済みの「あんこう鍋セット」が出回っているので、ご家庭でも食べることができます。また、鍋セットはあんこうの七つ道具で構成されていますから、これをカットして湯引きすれば供酢にアレンジが可能です。冬の味覚の代表格を、たっぷりの野菜と一緒に召し上がってくださいね。