2019年11月18日

郷土料理|熱々のうどんを簡単つけダレで食べる 「ひっぱりうどん」(山形県)

熱々のうどんを、うま味たっぷり濃厚なつけダレで食べる「ひっぱりうどん」は、山形県の特に内陸部で盛んな郷土料理。手軽な食材で簡単に作ることができ、良質なタンパク質が豊富なうえにおいしいという優秀メニューです。今回は自宅で作ることができるひっぱりうどんのレシピや、そのいわれをご紹介します。


熱々のうどんを、うま味たっぷり濃厚なつけダレで食べる「ひっぱりうどん」は、山形県の特に内陸部で盛んな郷土料理。手軽な食材で簡単に作ることができ、良質なタンパク質が豊富なうえにおいしいという優秀メニューです。今回は自宅で作ることができるひっぱりうどんのレシピや、そのいわれをご紹介します。

 

「うどん・納豆・サバ缶」があればできる、お手軽メニュー

ひっぱりうどんの語源は、大量に茹でたうどんを鍋からひっぱりあげることからとも、タレに入った納豆が糸を引くからともいわれています。

主な材料は、乾麺、納豆、サバ缶の3つ。冷凍うどんやそうめんを使ってもOKです。火を使うのは麺を茹でる時だけで、あとは納豆とサバ缶を混ぜてつけダレを作るのみという簡単さが大きな魅力。今日はご飯を作るのが面倒……そんな日にもさっと作ることができます。

納豆とサバ缶、クセのあるもの同士の組み合わせですが、これが驚くほどまろやかな味わいに。茹でたてのうどんをからめて、つるつるっといただきましょう。地元では冬の人気メニューですが、のどごしが良いので夏でもおいしく食べられます。納豆からは植物由来のタンパク質、サバ缶からは魚の良質なタンパク質が摂れる点も見逃せません。

おなじくサバ缶を使った栄養豊富なおみそ汁「たけのこ汁」の記事もご覧ください。

ひっぱりうどん、基本のつけダレ

ひっぱりうどんの特徴は、なんといってもつけダレ。調理なしで食べられるサバ缶や納豆を使っているから、短時間で作れるのがうれしいところです。ここでは、最もシンプルなつけダレの作り方をご紹介します。

<つけダレ(1人分)>
納豆…1パック
サバ缶…1/2缶~1缶。お好みで。
生卵…1個(なくても良い)
醤油(または納豆の付属タレ)…適量

<作り方>
やや深めのお皿(おみそ汁椀など)に、上の材料を全て入れてよく混ぜるだけ。
味をみて薄ければ、醤油やめんつゆを足してください。ネギや鰹節を加えてもおいしいです。

<ポイント>
生卵は地元でも入れる派・入れない派に分かれます。入れなくても良いですし、卵黄だけ入れるのも濃厚でおいしいです。醤油の代わりに、納豆の付属タレやめんつゆでも可。

アレンジも豊富、お好みで作るひっぱりうどん

 

納豆とサバ缶さえあれば作ることができる、ひっぱりうどんのつけダレ。郷土のお手軽料理とあって正式なものはなく、好きにアレンジしておいしく作ることができる懐の深さも魅力です。ここでは、ひっぱりうどんを自分流においしくするヒントをご紹介します。

サバ缶が苦手な方は

ツナ缶やイワシ缶もおすすめ。ツナ缶は軽く油を切るか、水煮缶を使用します。イワシ缶の味噌煮や醤油煮など、味がついてるものを使う際には、塩分を考慮して醤油などの調味料は加えず作ると良いでしょう。

麺は「その時あるもの」で

地元では細めの乾麺が使われますが、冷凍うどんでも、乾麺のそうめんでも構いません。その時あるもので作ってみてください。

追加の薬味で食欲増進

ネギや鰹節のほか、ミョウガや大葉、すりごまなど、薬味をプラスして食欲をアップさせるのも良いアイデアです。特に野菜の薬味はサクサクした食感も加わって、楽しくいただけます。地元ではキムチやチーズを入れる方もいるのだそう。

発祥は「炭焼き仕事」時の食事から

簡単でしかも栄養豊富なひっぱりうどん、その発祥は炭焼が盛んだった村山市戸沢(むらやましとざわ)地区といわれ、「ひっぱりうどん発祥の地」の看板もこの地区にあります。

炭焼きは長時間にわたって火力の調整が必要なため、作業の間は炭窯のそばを離れることはできません。そのため、茹でるだけの乾麺、納豆(かつては各家庭で作られていた)、保存食のサバ缶と、手間のかからない食材を組み合わせて食事をしていたのではないかと考えられています。

うどんを鍋からひっぱるのも、取り分ける手間も省いたうえに冷めないうちに食べられる、職人の知恵から来たものでしょう。熱々のうどんを、タンパク質たっぷりのつけダレでいただく……炭窯にこもりきりだった職人たちの力の源になったのではないでしょうか。

簡単でおいしい、しかもタンパク質たっぷりのひっぱりうどんは、まさに郷土の人々の生活の知恵。このお手軽さは現代の私たちにとっても、とてもありがたいレシピです。食欲のない時、時間のない時、買い出しに行きたくない時……さまざまな場面で作ってみてはいかがでしょうか。