2022年05月24日

健康習慣|夏の食養生のポイント「熱を冷まして、湿気を追い出す」

夏の不調は暑さと湿気が主な原因。薬膳の世界ではそれぞれを「暑邪(しょじゃ)」「湿邪(しつじゃ)」と呼び、取り除くべきものと考えています。今回は、薬膳から見た“夏の不調のわけ”や、健やかに過ごすための食養生のポイントを解説します。


 

夏の不調は暑さと湿気が主な原因。薬膳の世界ではそれぞれを「暑邪(しょじゃ)」「湿邪(しつじゃ)」と呼び、取り除くべきものと考えています。今回は、薬膳から見た“夏の不調のわけ”や、健やかに過ごすための食養生のポイントを解説します。

薬膳的に「夏」はどんな季節?

薬膳では身体の外からやってくる病気の原因(外因)を、「邪気」と呼びます。邪気には風・寒・暑・湿・燥・火(熱)の6種類があります。なかでも高温多湿な日本の夏は、暑さによる「暑邪(しょじゃ)」、それから湿気による「湿邪(しつじゃ)」に注意が必要です。

食養生は「ちょっと早めに次の季節の食養生をはじめる」ことで、より効果を発揮します。夏を健康に過ごすためには、晩春のタイミング~梅雨くらいから、夏に向けた食養生を意識するといいでしょう。

夏は「身体から暑邪と湿邪を追い出し、“心”の機能を高める」

 

食べ物は体質や体調に合わせて選ぶのはもちろん、季節に合わせることも非常に大切です。食養生の世界では「夏は補陰養心」といいます。聞き慣れない言葉ですが、この4つの漢字に夏の食養生ポイントが詰まっています。

「補陰」とは、潤いを補うこと

「陰陽(陰陽学説)」は中医学の基本的な考え方のひとつで、夏と冬、昼と夜、天と地、雨と晴れなど、世界のありとあらゆるものを陰と陽に分けて考えます。人の身体の内にも陰と陽があり、2つのバランスがとれているのが健康な状態です。

「陰」と「陽」のうち、夏は暑さによって「陰」が失われる季節です。「陰」は熱を冷ます働きを持ち、血液や体液(リンパ液、汗、唾液、鼻水など)、肌表面の潤いなど、身体のさまざまな潤いが含まれています。「陰」が失われると、身体に熱がこもり、髪や肌や舌の乾燥、動悸、微熱、イライラして怒りっぽくなるなどの症状が現れます。

したがって、夏は失われた「陰」を補いながら、身体にこもった熱を冷ましてくれる食材がおすすめです。キュウリ、ナス、トマト、枝豆、みょうが、ワカメ、スイカ、梨、バナナなど、夏が旬の食材を積極的に摂りましょう。

「養心」とは、“心”を養うこと

「養心」とは、「心」を養うこと。薬膳の「心」は特定の臓器を指さないのでイメージが難しいのですが、「心臓と心の役割を担っているもの」と思ってください。全身に血液を送り出すほか、精神活動の中心を担っています。

「心」の働きが衰えると、身体に十分に血液が行きわたらず、すみずみまで栄養が届きません。また、精神的に不安になることもあります。寝付きが悪い、眠りが浅い、落ち着かない、めまいがする、イライラする、手足の裏がほてる、胸がつかえるなどの症状があれば、「養心」する食べ物を摂るとよいでしょう。

イライラを鎮めて「養心」する食材には、セロリ、トマト、納豆、豆腐、ゆり根、牛乳、ナツメなどがあります。気持ちがふさぐ時には、柑橘類やシソなど、香りのいい食材もおすすめです。

飲み物のがぶ飲みは、夏バテに拍車をかける

説明が難しいのですが、「陰」とは、食べ物が消化吸収されることで作られる「身体の乾きを癒やすもの」です。したがって単に水を飲めば「陰」を補えるというものではありません。

夏の水分補給はとても大切ですが、一度にたくさん飲んだり、冷たい飲料ばかり飲んだりすると胃腸を弱らせ、水分代謝がうまくできずに食欲不振や下痢、だるさを招きます。水分は摂り、余分な湿気は排出することが、日本の夏の食養生ポイントです。

先の「補陰」で挙げたような夏の食材は、身体を冷まし、補陰して、水分代謝も助けます。おなかが弱い方や、冷房で身体が冷えやすい方がこうした食材を摂る時は、胃を冷やさないようにあたたかい状態で食べることを意識してみてください。

補陰と同時に、「陰」を消耗しないようにする

 

「陰」を補うとともに、そもそも「陰」を消耗しないようにすることがとても大切です。「陰」を消耗する原因のなかには、加齢や慢性病といった対策の難しいものもありますが、夜ふかしや睡眠不足、下痢や嘔吐、目を酷使する、過度な発汗など、ご自身で改善できるものもあります。

睡眠時間をきちんと取る、ベッドに入ったらスマートフォンなどの小さい文字を読まない、スポーツやサウナは体調と相談して無理をしない、おなかが弱い方は通年で胃に優しいものを選ぶなどで「陰」を守ることができます。そうした生活の見直しも大切な養生です。

聞き慣れない単語がいくつも登場しましたが、大切なのは「季節のものを食べること」「冷たい飲食物を摂り過ぎないこと」「身体に負担をかけない生活を心がけること」の3つです。これが全ての養生の基本です。まずはこの夏から意識して、健やかに夏を乗り切ってくださいね。