2021年11月09日
新型コロナウイルス感染症の対策のひとつとして広く知られるところとなった「換気」。窓を開けると暖が逃げてしまうので、寒くなるとどうしても怠りがちです。この記事では、環境省や厚生労働省が示しているコロナ禍での換気方法や、その重要性をご紹介します。
新型コロナウイルス感染症の対策のひとつとして広く知られるところとなった「換気」。窓を開けると暖が逃げてしまうので、寒くなるとどうしても怠りがちです。この記事では、環境省や厚生労働省が示しているコロナ禍での換気方法や、その重要性をご紹介します。
新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス・風邪は、いずれも「飛沫感染」「マイクロ飛沫(エアロゾル)感染」、それから「接触感染」の3つのルートからかかります(風邪は約90%がウイルスによるもの、残り約10%が細菌によるものとされています)。
このうち、飛沫感染とマイクロ飛沫(エアロゾル)感染は、特に換気が有効です。具体的には以下のようなルートで感染します。
感染した人の咳やくしゃみ、唾液、鼻水など、ウイルスが含まれた「飛沫」を口や鼻から吸い込むことで感染するケース。飛沫は水分を伴っているので重さがありますが、1~2メートルほどの距離まで届きます。人との距離を2メートルおく「ソーシャルディスタンス(※)」が重要とされるのは、このためです。
※WHO世界保健機関では「社会的」の意味を持つ「ソーシャル」は内容に適さないとして、「身体的、物理的距離」を意味する「フィジカル」を用いて「フィジカルディスタンス」と言い換えることを推奨しています。
マイクロ飛沫は世界的に統一された定義はないのですが、上記の飛沫の水分が蒸発して、軽くなったウイルスだけが空気中を漂っている状態のこと。重さのある飛沫よりも長い間漂うことができ、2メートル以上離れていても届きます。
気温が低く乾燥する冬は、ウイルスにとって好都合な季節です。ウイルスは空気が乾燥すると水分が蒸発して軽くなるので、より長時間空気中を漂うことに……。例えば、湿度40%以下の乾燥した部屋にある風邪のウイルスは、30分間も空気中を漂い続けます。
感染者の咳やくしゃみなどから放出される飛沫は、感染者・非感染者のマスク着用だけでは防ぐことはできません。換気がなされない部屋では、ウイルスは空気中にどんどん漂って充満していくというわけです。この状況を回避するために有効なのが、「換気」なのです。
石油ファンヒーターやガスファンヒーターなどの暖房器具を使う際は、一酸化炭素中毒を防ぐために、一定時間ごとに換気をすることが求められています。しかし、感染予防という点では、これらを使っていなくてもこまめな換気が望ましいのです。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解では、集団感染が確認された場所には、共通して3つの条件が示されています。
感染症対策としての換気は「1時間に2回以上(30分に1回以上)、数分間程度、窓を全開にする」ことが推奨されています。
しかし、ただやみくもに窓を開けるだけでは、十分な換気ができないことも。短時間で効率的に、部屋全体の空気を入れ換えるためのポイントを、あらかじめ押さえておきましょう。
汚れた空気を外に出して、新鮮な空気を取り入れるためには、違う方角に開けている2ヵ所以上の窓や玄関を開けて、空気の「入り口」と「出口」を用意して空気の流れを作ることが重要です。
3ヵ所以上の窓を開けると、より多くの空気の流れができるので、流れから外れて空気がよどんでしまうポイントも少なくなります。引き戸の窓なら、左右両側を少しずつ開けるとより風通しがよくなります。
あたたかい空気は上昇する性質があるため、窓の開いている部分に高低差があると、風が吹いていなくても空気の流れを作ることができます。
こちらは窓がひとつしかない部屋でも有効です。窓を開けて、窓外へ向けてサーキュレーター(もしくは扇風機)を運転させると、空気の循環が促進されるので、室内の空気をすばやく追い出し、もう一方の窓から新鮮な空気を取り入れることができます。サーキュレーターや扇風機は暖房効率をあげますから、換気後も回しておくとよいでしょう。
住宅に組み込まれている常時換気設備※や台所・洗面所の換気扇を常時稼働にして、最小限必要な換気量を確保しましょう。あまり暖を逃がさずに換気できます。
※2003年7月以降に着工された住宅には「常時換気設備(24時間換気システム)」が設置されています。
また、定期的にフィルターの掃除を行う、換気扇の強弱を選べるなら強運転にするなども有効です。これまであまり気にすることがなかったため、吸気口が家具や家電などでふさがれていた、というお家もあります。換気効果が落ちてしまうので、吸気口がどこにあるかもチェックしておきましょう。
せっかく部屋があたたまってきたのに、換気したまた寒くなる……そう思って窓を開けるタイミングを逃がしてしまうことがあります。厚生労働省では、「換気で室温変化を抑えるポイント」を解説しているので、ぜひ生活に取り入れてみてください。
換気以外の感染症対策といえば、「三密を避ける」ことと、「手洗い」「マスク」「咳エチケット」。これらは、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザや風邪といった感染症にも有効な対策です。
以下の記事では換気以外の対策について、詳しく解説しています。
手洗いや換気など、データに基づいたさまざまな感染対策の目安が厚生労働省などによって公開されています。その対策をきっちりとできるのがベストですが、できなければ全部がムダということではありません。完璧ではないとしても、「やったほうがよいこと」を積み重ねていくことが大切です。穏やかな気持ちで安心できるよう、これからも感染症対策を心に留めて過ごしましょう。