2021年09月29日
栃木県民のソウルフードともいわれ、あまりに熱烈な愛されぶりから、素材となるきのこ「ちたけ」自体が希少になってしまったという「ちたけそば」。人気の秘訣は、同じく高級食材として知られるあのきのこにも迫る、風味のよさにあるといわれます。今回は、ちたけそばや、その素材である「ちたけ」についてご紹介します。
栃木県民のソウルフードともいわれ、あまりに熱烈な愛されぶりから、素材となるきのこ「ちたけ」自体が希少になってしまったという「ちたけそば」。人気の秘訣は、同じく高級食材として知られるあのきのこにも迫る、風味のよさにあるといわれます。今回は、ちたけそばや、その素材である「ちたけ」についてご紹介します。
ちたけそばの「ちたけ」は、ちちたけとも呼ばれる、ベニタケ科のきのこの一種です。ちたけそばが食べられている栃木県や、お隣の群馬県などで夏から秋にかけて見られます。
もともとは普通に食べられていたちたけですが、徐々に栃木県内での人気が白熱。収穫シーズンには皆こぞって山に入るため希少になってしまい、今やあの松茸にも迫る高価な食材としてもてはやされるようになりました。
ちたけを漢字で書くと「乳茸」です。ちたけを裂くなどして傷つけると、乳白色の汁がたくさん出ることから、乳の出るきのこ=乳茸になったといわれます。
名前の由来ともなった乳白色の汁からは、高級食材の代名詞である松茸を彷彿とさせる、香り豊かなだしが出ます。てんぷらや炊き込みごはんにしてもおいしいのですが、多くのちたけを使うため、高価になった今では、比較的少量のちたけで楽しめる、汁物やそば・うどんなどが主流の食べ方となっているのだそうです。
ちたけそばは、ちたけとナスを具材にしたそばで、栃木県の方々に大変人気のあるメニューです。同様のちたけうどんもよく食べられています。ゆでたそば(うどん)にちたけとナスの入ったつゆをかけたもの、ちたけとナスが入ったつけ汁にそば(うどん)をくぐらせるものなど、食べ方にはバリエーションが見られますが、具材の組み合わせは、ちたけとナスが定番です。
ちたけそばのちたけは、まずナスを加えて香りが出るまで炒めたあとに、だし汁に醤油、砂糖、みりんなどを加えたつゆで軽く煮込まれます。一般的な煮物のように最初から煮るのではなく、先に炒めるのが、ちたけのいい香りを引き出すポイントなのです。
栃木県内では、収穫時期に家庭で食べるだけでなく、そば店などの飲食店でも広くちたけそばが提供されています。先に紹介した通り、今や高級食材となっているちたけですが、乾燥させたり水煮に加工したりしたものが、通信販売などでも取り扱われています。
香りのよさで多くのファンを引き付けるちたけですが、実は食味や、弾力の強い独特の食感は好みが分かれるところ。だしを取る調理法でないと、本来のおいしさは味わえないといわれるほどですから、不思議なものです。そば以外でも、汁物や煮物など、だしがメインの食べ方がおすすめです。
きのこは全般的に、うま味が強く、だしとして使われることが多い食材ですが、それでもここまでだしに特化したきのこは珍しいかもしれませんね。今や栃木県内でも手に入りにくいといわれるようになってしまったちたけですが、もし味わう機会があったら、ぜひその豊かな香りとだしをじっくり味わってみてください。