2020年12月09日

郷土料理|いつものお鍋が変わる、“郷土の調味料”

地元の方には懐かしく、知らない方には目新しい“郷土の調味料”をご紹介します。土地に根ざしたお鍋に合う調味料で、いつもと違うお味はいかがでしょうか。世田谷自然食品がお届けする健やかで楽しい人生を応援するライフスタイル情報サイト。


熱々の湯気が立つお鍋が恋しくなる季節。スープや具材を変えてさまざまに楽しめますが、タレはいつも変化なしという方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、地元の方には懐かしく、知らない方には目新しい“郷土の調味料”をご紹介します。土地に根ざしたお鍋に合う調味料で、いつもと違うお味はいかがでしょうか。

 

「かんずり(新潟)」唐辛子の辛味と柚子の香り

画像提供:有限会社かんずり

 

「かんずり」は新潟県で広く親しまれている唐辛子ベースの調味料。雪深い山間地域の各家庭で作られる自家製唐辛子漬けがその発祥で、唐辛子の辛さと柚子の香りがミックスされた辛味噌のような風味があります。お鍋や汁物をはじめとして、地元では寒い季節には欠かせません。想像よりも辛くなく、食べるにつれて鼻の頭にじんわりと汗をかくような、冬にぴったりの調味料です。

「かんずり」は地元産の唐辛子に、麹、塩、柚子を加え、3年~6年かけてゆっくり熟成発酵させて作ります。仕込み年の大寒は、塩漬けした唐辛子を雪上に撒く「雪さらし」が行われます。雪が唐辛子のアクと塩を抜いてくれて、まろやかな唐辛子になるといわれています。真っ白な雪に真っ赤な唐辛子が並べられた様子は、地元の冬の風物詩です。

お鍋で食べる時は少量をお皿に取り、具材にちょんと乗せるか、少しずつ溶かしていただきます。そのほかにもそばやうどん、納豆の薬味にしても美味です。野菜炒めやきんぴらごぼうの隠し味にもおすすめ。唐辛子の辛さと柚子の香りは、多くの家庭料理にマッチします。

「ごまだし(大分)」お湯で溶けばうどんスープに

画像提供:佐伯市観光案内所

 

地元の家庭で冷蔵庫に常備されている「ごまだし」は、魚・ごま・醤油・みりん・砂糖が原材料の甘辛な郷土調味料。一年中とれる白身魚「エソ」の身を焼いてほぐしたものとすりごまがたっぷり入っています。大漁の時に魚を保存するために考えられたのがはじまりで、今では、タイやアジなどを使った、風味の異なる「ごまだし」もあります。焼き魚の味と香り、すりごまの風味が食欲をそそる調味料です。

「ごまだし」を手に入れたならぜひ試していただきたいのが、地元の定番料理「ごまだしうどん」です。レシピはゆでたうどんに大さじで山盛り1杯「ごまだし」を乗せて、うどんが浸かるくらいのお湯を注ぐだけ。全体をよく混ぜて召し上がってください。とにかくすぐに作れてしまうのがありがたい一品です。ほかの調味料は必要なく、「ごまだし」だけで魚とごまの風味豊かなスープが出来上がります。

甘辛いペースト状の「ごまだし」は、うどん以外にも、お茶漬けに入れたり、チャーハンの味の決め手にしたり、使い方はさまざま。野菜スティックのディップ代わりにしてもおいしいですよ。

「柚子こしょう(九州ほか)」

 

「柚子こしょう」は柚子の皮と、唐辛子・塩を混ぜ合わせた調味料で、九州地方や徳島県・高知県などで作られています。「こしょう」とはいうものの、そのなかには胡椒(ペッパー)は入っていません。九州地方では唐辛子を「こしょう」と呼んでいたことから、この名がついています。

通常使用される唐辛子は青唐辛子なので「柚子こしょう」も緑色をしていますが、赤唐辛子を使った赤い「柚子こしょう」もあります。鳥のささみ肉や豆腐のようなあっさりしたものから、豚バラ肉や揚げ物などのこってりしたものまで合う、とても万能な調味料です。

また、マヨネーズやポン酢、お酢といった、酸味のあるほかの調味料と相性がよいのも特徴。酢の物やピクルスの調味液に少し加えると、香りと辛味が加わってぐっと奥深い味わいになります。単品でスライスしたきゅうりやカブと和えても、上品な一品に仕上がります。

その土地でとれる身近な食材だけで、手間暇かけて作られる……昔ながらの郷土系調味料にはそんな特徴があります。そして、もともと食材の保存を目的に作られているので、日持ちするものが多いのです。この冬には1つ2つ、郷土の調味料を加えてみてはいかがでしょうか。アンテナショップやインターネット販売のほか、スーパーで企画販売が行われていることもあります。新しい我が家の定番調味料が見つかるかもしれません。