2019年10月11日

郷土料理|「はらこ飯」 秋冬だけ、期間限定のぜいたく丼(宮城県)

ふっくらとした秋鮭と、イクラがのったはらこ飯は、宮城県の郷土料理。ぜいたくなこの丼ぶりは、秋冬の短い期間だけに作られます。今回ははらこ飯と、秋鮭とそのほかの鮭との違い、また、はらこ飯に使われる秋鮭とイクラの栄養についてご紹介します。


ふっくらとした秋鮭と、イクラがのったはらこ飯は、宮城県の郷土料理。ぜいたくなこの丼ぶりは、秋冬の短い期間だけに作られます。今回ははらこ飯と、秋鮭とそのほかの鮭との違い、また、はらこ飯に使われる秋鮭とイクラの栄養についてご紹介します。

 

秋冬のとっておき、はらこ飯

はらこ飯は、鮭の身を煮込んだ汁でご飯を炊き、鮭とイクラをのせた宮城県の郷土料理。イクラが「鮭の腹の子」であることから、その名がついたといわれています。鮭の親子丼とも呼ばれますが、鮭を煮たさっぱりめの甘辛い汁でご飯を炊き込むのが特徴です。

はらこ飯の材料となる「天然秋鮭」が獲れるのは、10月から12月中旬まで。もっとも食べ頃なのは11月までといわれています。鮭の香りとイクラの食感、ほんのり色づいたご飯の組み合わせは、まさに秋色。江戸時代から秋鮭の漁が盛んな宮城県で生まれた、ほんの2カ月強しか作られない、ぜいたくな丼ぶりです。

秋鮭と、そのほかの鮭との違いとは?

 

通年食べることのできる鮭ですが、秋に出回る秋鮭は特に人気があります。秋鮭とほかの鮭では、どんな違いがあるのでしょうか。私たちの食卓によく登場する鮭と、秋鮭の違いについてご紹介します。

秋鮭は、秋に獲れる「白鮭」のことで、日本で獲れるのはこの「白鮭」がほとんどです。北海道から東北地方の川に、産卵のために遡上します。オスは白子、メスは卵(筋子)を持ち、脂が少なく繊細な味わいが特徴。一方、春から初夏に獲れる「白鮭」は、脂がたっぷりとのった高級品で、トキシラズとも時鮭とも呼ばれます。

紅鮭は日本ではあまり獲れない鮭で、ロシアやアラスカなどの輸入品がほとんど。産卵期には身が赤くなるため紅鮭と呼ばれています。スモークサーモンなどに加工されるほか、焼き鮭にも適しています。

銀鮭は日本近海では獲れない鮭で、国内では獲れませんが宮城県などで養殖されています。主に出回っているのはチリ産のもので、白鮭・紅鮭と比べて安価であることから、これらの代用として用いられてきた歴史があります。

秋鮭とイクラの栄養

鮭は高タンパクで低脂肪、ビタミン類、EPA・DHAが豊富で、栄養バランスに優れた食材です。特に、天然ものの秋鮭は、養殖と比べて脂肪割合もカロリーも低くとてもヘルシー。また、抗酸化作用が期待される赤い色素「アスタキサンチン」も含まれています。鮭のタンパク質は消化吸収が良いことで知られているので、胃腸がお疲れ気味の時にもおすすめです。

また、メスの秋鮭から作られるイクラには、身よりも「アスタキサンチン」が豊富で、EPA・DHAの含有割合はなんとサンマなどの青魚以上。ストレスに囲まれ、生活習慣病の予防が課題となった現代人にぴったりです。

秋鮭到来のニュースを聞いたら、はらこ飯登場の合図です。この時期、宮城県のスーパーなどでは自宅で簡単に調理できる「はらこ飯セット」が販売されます。遠方の方でも通販や郷土料理のお店で食べることができるので、期間限定の繊細で奥深い味わいを、ぜひ味わってみてください。