2016年11月04日

日本のみそ|加賀みそ・能登みそ(石川県) 魚介の具がぴったりの濃厚な味わい

石川県で作り上げられた「加賀みそ・能登みそ」は、数多く残るご当地の伝統文化のひとつ。加賀みそは石川県南部の加賀地方で作られるみそで、こうじを多く使った濃厚な味わいが特徴です。また、能登みそは塩分が高く、コクのある味わいがあります。今回は、そんな加賀みそ・能登みその特徴と歴史をご紹介していきます


石川県で作り上げられた「加賀みそ・能登みそ」は、数多く残るご当地の伝統文化のひとつ。加賀みそは石川県南部の加賀地方で作られるみそで、こうじを多く使った濃厚な味わいが特徴です。また、能登みそは塩分が高く、コクのある味わいがあります。今回は、そんな加賀みそ・能登みその特徴と歴史をご紹介していきます

辛口で濃厚な加賀みそ

加賀みそは、米こうじと大豆と塩で仕込む米みその一種です。米みそは全国的に広い地域で作られており、甘口、辛口、赤色、クリーム色など、味も色もさまざま。日本で生産されているみその約8割が米みそなのです。
その米みその中でも、加賀みそはもともと熟成期間が長く、塩分が比較的高く辛口で赤色の強い味噌でしが、今では減塩ブームも手伝って、塩分低めの淡い色(山吹色)の加賀みそも多く出回っています。

「塩分が高い=身体に悪い」とイメージしがちですが、おみそ汁としていただく際には、気持ち少なめに味噌を入れるようにすると、香りと風味を損なわずに加賀みそのおいしさを楽しめます。

加賀みその歴史

徳川の時代、前田家の治政下であった加賀藩で、「治にいても乱を忘れず、準備おさおさ怠りなく」と、軍用の貯蔵食品として作られたのが加賀みその起源とされています。
また、全国に先立って、自家製造から大量生産へ移ったみそとしても知られています。

全国的に見ると、当時のみそは自家醸造が一般的でしたが、金沢では自家醸造に加え、尾山御坊※(おやまごぼう)をはじめ、加賀や能登の寺院で作られていました。そこに藩主の前田家が目をつけ、長期保存に向く長時間熟成・高塩分と製造方法を統制し、軍需品として大量生産へつなげたといわれています。

金沢には味噌蔵町(みそぐらちょう)や味噌屋町(みそやちょう)という地名が残っており、早くからみそを売る店があったことを示しています。

※尾山御坊…浄土真宗の寺院。空堀や柵などを備える城造りが特徴で、金沢城の前身。

お土産に!のどぐろの加賀みそ漬け

画像提供:Fのさかな本舗

 

石川県のグルメといえば、真っ先に魚介類を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。香箱(こうばこ)ガニ、ガス海老、のどぐろ……色とりどりの魚介がのった海鮮丼も人気メニューのひとつですね。

そんな石川県の魚介類の中で一番人気なのが、高級魚“のどぐろ”です。一年を通じて脂がのっているため「白いトロ」とも呼ばれています。
実は“のどぐろ”の生息域は意外と広く、関東でも獲れる魚で、北陸や山陰で獲れたもの以外は“アカムツ”と呼ばれます。“のどぐろ”は産地呼称なのですね。

“のどぐろ”を加賀みそに漬けた「のどぐろの加賀みそ漬け」は、加賀みそのうまみと魚の脂が絡み合う濃厚なおいしさ。ご飯もお酒も進むぜいたくな一品です。冷蔵で1週間〜2週間と、比較的日持ちするので、お土産にもおすすめです。

日本のさかな文化を能登から発信するフリーマガジン『Fのさかな』

石川県のもうひとつの伝統みそ「能登みそ」

画像提供:新出商店

 

能登みそは石川県北部の能登地方で作り上げられたもうひとつの伝統的なみそ。能登みそは、加賀みそと比較すると水分が多くて柔らかいのが特徴で、塩分は加賀みそ同様に高めです。香りが高く、コクのある味わいがあります。

水分が多いのは、「味噌たまり(※)」をしょう油の代用にしていた地域があったため、また、柔らかいほうが固いみそより扱いやすかったためとされています。
※味噌たまり…みそを作る行程でできる副産物。水分が多いとより多く抽出できる。

また、能登には不作の備えとしてみそを3年間貯蔵する習慣があり、酸化防止のため塩分が高くなっています。

現在では「味噌たまり」をしょう油の代用にする必要はなくなりましたが、今の能登みそも従来の特徴を守って高水分・高塩分で作られています。「味噌たまり」は濃度が高く濃厚なうまみがあり、魚介を用いた料理に最適です。

加賀みそを使ったおみそ汁の具には、魚の切り身や貝類がおすすめ。米こうじを多く使っているため濃厚で、魚介類のうまみを引き出すのに適しています。大手のスーパーや百貨店などでも購入することができますので、魚介のおみそ汁が好きな方はぜひお試しください。