2019年03月06日

郷土料理|甘い銘菓「からすみ」とは(岐阜県)

からすみといっても今回は、珍味ではなく甘いお菓子の方について。岐阜県の一部地方で作られている銘菓で、桃の節句などのお祝いごとに、また、お茶請けにと親しまれています。今回は、今も作られる伝統的なお菓子、からすみをご紹介します。


からすみといっても今回は、珍味ではなく甘いお菓子の方について。岐阜県の一部地方で作られている銘菓で、桃の節句などのお祝いごとに、また、お茶請けにと親しまれています。今回は、今も作られる伝統的なお菓子、からすみをご紹介します。

画像提供:岐阜県 農政部

 

お祝いごとに欠かせない、からすみは郷土のお菓子

岐阜県のからすみは、米粉と砂糖を練って蒸したお菓子です。南東部、特に中津川市ではお祝いごとの際に出される縁起物で、桃の節句のお供え物には欠かせません。

からすみは優しい甘みと、ういろうより少し硬めのもっちりさが特徴。切ったからすみを軽く炙れば、柔らかく香ばしい味わいが楽しめます。黒砂糖やよもぎ、くるみやレーズンを混ぜ込むなど、味のバリエーションも豊富です。

珍味のからすみとの関係

画像提供:岐阜県 農政部

 

からすみと聞いて思いつくのは、やはり出世魚であるボラの卵巣を塩漬けにして、天日干しした珍味のほうでしょう。二腹がくっついたボラの卵巣は、夫婦円満で子宝に恵まれる食べ物として、江戸時代から親しまれています。

しかし、海の幸である珍味は、海から離れた岐阜県ではなかなか手に入らない貴重品。そこで子どもの健やかな成長を願う品として、見た目がからすみに似たお菓子を作り、からすみと名付けたとされています。
当初のからすみは、海の幸であるからすみに似せた木枠で型取りしましたが、現在では「子どもが日本一幸せになるように」と願いをこめた富士山の形に変化しています。

海の幸のからすみとお菓子のからすみ。素材は全く違うものですが、ハレの日には縁起物をという気持ちは共通しているのですね。

からすみが配られたお祭り がんどうち

飛騨地方(高山市、飛騨市、下呂市など)で行われていた「がんどうち」は、からすみと関わりのある地域のお祭りです。桃の節句の日、男児たちが「ひなさま見せとくれー!」といいながら、各家のひな飾りを見てまわり、訪ねられた女児の家では「娘がよいところに嫁いでくれるよう」と用意したお菓子を振る舞う習わしがありました。からすみはその振る舞い菓子となる、代表的なお菓子のひとつです。

今では地域をあげて行う大きながんどうちは少なくなりましたが、町役場や保育園などが主催して子どもたちに地域文化を継承しています。子どもたちにとっては、家々を訪ねればお菓子が集まる、思い出に残る楽しいお祭りです。

桃の節句の行事食は、ひなあられにひし餅、はまぐりのお吸い物に白酒といろいろありますが、からすみのように地域だけの食べ物があるのが郷土食のおもしろいところですね。からすみを手作りするのは大変ですが、今は通信販売で入手することも可能です。中津川市周辺の和菓子店やお土産店で手に入るので、ぜひ調べてみてください。