2016年07月11日

郷土料理|いものおづけばっと(青森県) 栄養豊かでじゃがいもを用いたモチモチお団子汁

青森県東通村(ひがしどおりむら)の郷土汁「いものおづけばっと」は、モチモチのじゃがいも団子が味噌仕立ての汁のなかに入った素朴な味わいのおみそ汁。じゃがいもは腹持ちがよく、実は栄養面でも優れています。郷土料理として今も愛される、地域の知恵がつまった懐かしい味です。


青森県東通村(ひがしどおりむら)の郷土汁「いものおづけばっと」は、モチモチのじゃがいも団子が味噌仕立ての汁のなかに入った素朴な味わいのおみそ汁。じゃがいもは腹持ちがよく、実は栄養面でも優れています。郷土料理として今も愛される、地域の知恵がつまった懐かしい味です。

画像提供:東通村役場・安芸大田町観光協会

 

村に住む人の知恵が生んだ郷土汁

「いものおづけばっと」は、ネギ、しいたけ、ごぼう、白菜、豚肉などが入った味噌仕立ての汁に、すりつぶしたじゃがいもと片栗粉を混ぜた餅状の団子をちぎりながら入れて茹でます。じゃがいもの団子は、本物の餅のようにモチモチ。だしが染み込んで滋味深く、腹持ちも抜群です。

青森県の下北半島に位置する東通村は、春から秋にかけて「やませ」と呼ばれる冷たく湿った風が吹き、米が育ちにくい環境です。そのため、お米の代わりとして不作になりにくい芋類が重宝されていました。
「いものおづけばっと」は、東通村の風土のなかで暮らす人の知恵が生んだ郷土料理なのです。

「いものおづけばっと」とは聞き慣れない言葉ですが、「いもの=じゃがいもの」「おづけ=おみおつけ(みそ汁)」「ばっと=はっと=一口大の団子状のもの」と分解できて、「一口大のじゃがいも団子が入ったみそ汁」という意味になります。

意外に優秀 じゃがいもの栄養

 

芋類であるじゃがいもは、ご飯と同じく「主食」というイメージです。そのイメージどおり、野菜には分類されないのですが、意外にもビタミンCがたっぷり。100gあたりの含有量は35mgで、ビタミンが豊富な柑橘類の温州みかんを上回るのです。

ビタミンCは熱に弱く調理すると減ってしまうのは有名ですが、じゃがいものビタミンCはでんぷん質に守られているため加熱時の損失が少なく、ビタミンCを摂取するには最適です。じゃがいもは、おかずやおみそ汁の具材として頻繁に登場する食材。新鮮な果物をたくさん食べるのは骨が折れますが、じゃがいもなら効率的にビタミンCが摂れそうですね。

さらに、じゃがいもは「カリウムの王様」と呼ばれるほどカリウムが豊富で、その量はきゅうりの2倍以上。カリウムは体内の塩分を調整する働きがあり、高血圧や動脈硬化の予防、むくみの解消などに役立ちます。

大間町(おおままち)の「べごもち」

画像提供:大間町産業振興課

 

下北半島地域の郷土料理をもうひとつご紹介します。お祝いごとには貴重で高価な食材が用いられますが、「べごもち」もそのひとつ。
北海道や東北地方の一部で、5月の端午の節句に食べられる和菓子で、かつて高価な食材だったうるち米やもち米、砂糖がふんだんに使われています。
「べごもち」の名前の由来は諸説ありますが、ひとつは「黒砂糖を練りこんだ黒と、白砂糖を練りこんだ白が、牛(べこ)のように見えるから」というもの。その由来どおり、一般的な「べごもち」は黒と白のまだら模様をしています。

ですが、東通村と同じく下北半島に位置する大間町の「べごもち」は特別。とてもカラフルで、もはやアート作品のような出来栄えなのです。1970年代に大間町の生活改善グループによって抹茶や卵黄を練りこんだ季節の花柄などが考案され、地域独自の発展を遂げています。
今ではパンダや牛の顔など、子どもが喜ぶ柄も出まわり、道の駅の人気商品となっています。
「いものおづけばっと」と同様、下北半島に伝わる「おばあちゃんが作ってくれた懐かしい味」です。

「いものおづけばっと」は、お米が容易に入手できるようになったことや、作り手の減少にともなって食べる機会も減りました。郷土料理は手間暇がかかるものが多くありますが、他の地域にはない特色があり、その土地だからこそ生まれたもの。便利になった現代だからこそ、残し伝えていきたいものですね。
「いものおづけばっと」は青森県の給食や郷土イベントなどで供される動きも出てきていますので、機会があればぜひ味わってみてください。