2016年04月27日

郷土料理|おつけだんご汁(山梨県) 根菜たっぷり、おだんご入りのおふくろの味

山梨県の郷土料理「おつけだんご汁」とは、地産の旬野菜と小麦粉を水で練っただんごを、おみそ汁に入れたもの。おみそ汁だけでなく、しょうゆ味や塩味、カレー風味など家庭によってさまざまな味つけのある、おふくろの味です。


「おつけだんご汁」とは、地産の旬野菜と、小麦粉を水で練っただんごをおみそ汁に入れたもの。おみそ汁だけでなく、しょうゆ味や塩味、カレー風味など家庭によってさまざまな味つけがあります。

画像提供:古民家麵処 かつら

 

朝・昼・晩 いつでもおすすめな健康汁

おつけだんご汁は山梨県、とくに大月市では昔から食べられており、農作業の昼食として親しまれてきました。にんじん・大根・ごぼう・里芋などの旬野菜とだんごが腹持ちよく、栄養も申し分のない健康汁です。おだんごの固さはほうとうとすいとんの中間くらいで、ほうとうも山梨県の郷土料理です。似た郷土汁では栃木県の「法度汁」があります。

おつけだんご汁の柔らかく煮た根菜やだんごは胃にやさしいので、身体を目覚めさせる朝食にもおすすめ。また、アルコール分解を促すビタミンCやB群がおみそ汁に溶け込んでいるので、お酒を飲んだ後にもおすすめです。

名前の由来は、「大月のだんご汁」がなまったという説、「おみおつけ(=おみそ汁)の中のだんご」から「おつけの中のだんご」になり、転じて「おつけだんご」になったという説があります。

山梨のもうひとつの粉食「おざら」

画像提供:甲府市観光課

 

山梨の郷土料理「おざら」は、「夏のほうとう」ともいわれる粉食メニューのひとつ。盆地である甲州の夏は暑く、夏場はほうとうの売れ行きがぐっと下がります。そこでほうとう専門店の間で広まったのが、冷たくしめたモチモチ麺を温かいつゆにつけていただく「おざら」です。つゆは夏野菜や肉類が入った具だくさんのもので、夏バテ解消にぴったり。涼しくなってくると、温かい麺「ゆもり」で食べることもあります。夏のほうとう専門店で食べられる季節限定メニューです。

山梨の粉食文化

ほうとう、おつけだんご汁、おざらと、山梨の郷土料理には小麦粉が活用されているのが特徴です。粉食が発展した理由としては大きくふたつあります。ひとつは「養蚕の普及による桑畑化、裏作による麦の栽培」、もうひとつは「東部では地形的に米の栽培が困難であったため、富士北麓の流水を用いた麦の水耕栽培が行われた」ため。山梨県独特の地形事情から、小麦粉をいかした郷土料理が根づいたのですね。

結婚式の〆にうどん!? ハレのメニュー「吉田のうどん」

山梨県富士吉田市周辺で食べられる「吉田のうどん」は、うどんにキャベツや馬肉がトッピングされたもの。味噌と醤油を合わせたつゆが特徴的です。この地域の人々にとって、小麦粉が大量に必要なうどんは、ハレの日に供される特別なごちそうでした。現在の「吉田のうどん」は日常食で、地元の人は毎日のように昼食に食べるのだそう。そして、今でも結婚式の終わりにはこのうどんが必ずといっていいほど出てきます。他ではあまり見られない食文化ですね。
また、「吉田のうどん」の麺は太くて固いのが特徴。女性が中心の養蚕と機織が主要産業だったため、手のあいている男性が女性に代わってうどんを打って、昼食にしていたからといわれています。

画像協力:一般財団法人ふじよしだ観光振興サービス

 

農作業・家事・子育てと大忙しのお母さんが作ってくれた「おふくろの味」。栄養も消化もばっちりで、だんごを頬張るとやさしい気持ちになれます。大月市では街の活性化のためにおつけだんご汁を紹介しており、食べられるお店は20店舗以上。「おつけだんごMAP」が配布されています。週末にちょっと足を伸ばして、食べ比べをするのも楽しそうです。

※掲載されている情報は平成28年3月現在のものです。