2016年02月01日

郷土料理|「せんべい汁」(青森県) アツアツもっちりのせんべい入り郷土鍋

南部せんべいは八戸や盛岡の名物で、小麦粉・塩・重曹が主原料の素朴な味わいのせんべいです。この南部せんべいを鍋料理に加えて煮るのが、青森県の「せんべい汁」。たっぷり出汁を吸ったせんべいは、もっちり・アツアツ! 食感が楽しい郷土鍋です。


南部せんべいは八戸や盛岡の名物で、小麦粉・塩・重曹が主原料の素朴な味わいのせんべいです。この南部せんべいを鍋料理に加えて煮るのが、青森県の「せんべい汁」。たっぷり出汁を吸ったせんべいは、もっちり・アツアツ! 食感が楽しい郷土鍋です。

画像提供:八戸市観光課

 

お鍋の優秀具材「南部せんべい」

鍋に使う南部せんべいは「おつゆせんべい」「かやきせんべい」と呼ばれ、煮込んでも型崩れしにくく作られています。一般的なせんべい汁は鶏の出汁と醤油で味をつけたものですが、鍋に南部せんべいを入れること以外には、決まりごとはありません。シンプルな薄塩味の南部せんべいは、醤油・塩・味噌など、あらゆるお鍋に合います。八戸は海の幸が豊富で馬産地でもあるため、サバや川魚、馬肉(桜鍋)などユニークな具材も用いられます。

鍋に入れたせんべいの食べごろは、パスタでいうところのアルデンテ。出汁を吸って柔らかく、しかもモチモチした食感が残るぐらいがベストです。他の具材と一緒に煮ながら食べてもよいのですが、地元では鍋の〆にせんべいを投入する「かやき」という食べ方がスタンダード。具材の味が渾然一体となったスープをたっぷり含ませていただきます。

地元ではおみそ汁の具としても南部せんべいが活用されています。柔らかくなったせんべいはツルツル・もっちりとしていて、麩(ふ)より食べごたえがあって腹持ちがよいのだとか。

画像提供:八戸市観光課

 

南部せんべいの耳、あり派? なし派?

南部せんべいを焼いたときに焼き型からはみ出た縁の部分を「耳」といいます。普通は捨ててしまう部分ですが、美味しいので地元では好んで食べる人が多いそう。柔らかい耳はしっとりむっちり、硬い耳は香ばしくカリッとしています。耳はすぐに乾燥して硬くなってしまうので、柔らかい耳は地元でもあまりみかけません。

耳は本体とくらべて火の通りが遅いので、「耳付き」は食感の違いが楽しめます。一方、「耳なし」は均一に煮えるので比較的調理が簡単です。地元では「耳付き」のほうが人気があるようです。

楽しみ方いろいろ! 南部せんべいの食文化

お土産にいただく南部せんべいといえば、ゴマや落花生が入っているものが思い浮かびます。しかし最近ではイカやホタテが入ったものから、甘党にうれしい干しりんごやチョコレートなど、たくさんの種類が出ています。元の南部せんべいがシンプルな味だけに、さまざまな味をプラスできるのですね。

そんななか、地元ではシロ(塩味だけのもの)とゴマが一番人気。特に八戸では南部せんべいをお皿のように使うなど、いろいろな食べ方があるようです。ここでいくつかご紹介しましょう。

はちみつやジャムを塗ってしっとりさせた甘いせんべいは朝食にぴったり。お酒好きな方には、サバの水煮缶をほぐしてせんべいにのせたおつまみがおすすめです。また、炊きたての赤飯をせんべいではさんだ「こびりっこ」は、農作業の休憩時間のおやつとして食べられていました。食べる頃には赤飯の湿気でせんべいが柔らかくなって、北国特有の甘みのある赤飯とせんべいの塩気が絶妙なハーモニーを奏でます。(画像は「こびりっこ」)

画像提供:八戸市観光課

 

昔の南部せんべいは、家でおばあちゃんが1つ1つ手焼きをして作っていたのだそうです。今ではさまざまな味のバリエーションがありますが、どのせんべいもほっとする素朴な味わいが残っています。おみそ汁の具としてはもちろん、おやつにおつまみにといろいろ試してみたくなりますね。