2018年12月28日

語源・由来|「太鼓判を押す」「お墨付き」 人のことを認める・保証する時の表現

高価な品物や電化製品には、その品物の性能や安全性、価値を確かなものとする「保証書」がついてきます。では、昔は物の価値を保証する際にどのような方法がとられていたのでしょうか。今回は、そうしたかつての「保証」の方法を由来とする、「太鼓判を押す」と「お墨付き」の、今でも使われている二つの言葉をご紹介します。


高価な品物や電化製品には、その品物の性能や安全性、価値を確かなものとする「保証書」がついてきます。では、昔は物の価値を保証する際にどのような方法がとられていたのでしょうか。今回は、そうしたかつての「保証」の方法を由来とする、今でも使われている言葉をご紹介します。

武田氏の金貨が由来 「太鼓判を押す」

 

その人物や品物の質が絶対によいものであると保証することを「太鼓判を押す」といいます。私たちの生活において、重要な契約や取引に印鑑は欠かせませんから、「判を捺す(押す)」ことが「保証」につながることに不自然さはありません。ではなぜ、「太鼓判」を押すことが価値の証明とされるようになったのでしょうか。

「太鼓判」とは、一般的には太鼓のように大きな印判のことをいいます。太鼓のように大きな判を押すことで、「確実であることを保証する」という意味につながります。ここで、「太鼓判」の言葉の由来をさらにさかのぼってみましょう。

戦国時代、甲斐の武田氏は「甲州金」という金貨を鋳造し、甲斐国内で流通させました。甲州金は、他諸国の貨幣が重さで数える貨幣だったのに対して、枚数で数える貨幣であり、非常に先進的だったといえます。
1番価値が高い一両金を筆頭に、その1/4の価値である一分金、さらにその1/4の価値である一朱金……と分けられていたのですが、この中で2番目に価値の高い「一分金」のデザインがカギとなります。甲州金の一分金は丸い金貨なのですが、その周囲に太鼓の皮留めに似た小さな丸印が装飾されています。この装飾こそが「太鼓判」なのです。金が削り取られるのを防ぎ、価値を保証するためにつけられたともいわれます。

後の世で、太鼓判は太鼓のように大きな印判を指すようになりますが、そもそもの「太鼓判」は、金貨の装飾のことでした。それも価値を担保するためにつけられた絵柄だったと知ると、「太鼓判を捺す」の意味に納得しますね。

将軍や大名の花押のある文書 「お墨付き」

 

「お墨付き」とは、権力や権威のある人の与える許可や保証のことをいいます。その由来は「墨」というからには何かを筆で書いたものが語源ではないか、という予想がたてられますが、まさにその通りで、「お墨付き」とは、権力者が墨で記したサインのことなのです。

「お墨付き」はもともと、室町時代と江戸時代に、幕府や大名から臣下に与えた領地を、後日の証拠として保証・確認する文書のことを指しました。この文書には、権力者の署名、または花押(記号もしくは符号で記す署名)が墨で記されていたため、「お墨付き」と呼ばれるようになりました。転じて、現在では幅広く、権力や権威のある人の許可、承諾、保証として使われます。

よく似た言葉に「折り紙付き」という言葉があります。詳しくは下記の記事も参考にしてみてください。

「折り紙付き」とは、「鑑定書付き」ということをいいます。「絶対に間違いないと保証できること。またそうしたもの」を指しています。この「お墨付き」と「折り紙付き」の使い分けとして、「お墨付き」は誰が保証してくれるのか、に重きを置いた表現で、一方「折り紙付き」はその物や人そのものが確かであることを示しているという違いがあります。

太鼓判、お墨付き、折り紙付き……「保証」にまつわる言葉には、権力者、為政者のさまざまな工夫がにじみ出ているようです。日本の歴史と語源との深い関わり、そのおもしろさにぜひ着目してみてください。