2018年12月19日

郷土料理|朱塗りの椀にもてなしの心を盛る こづゆ(福島県)

こづゆとは、貝柱の出汁でさまざまな具材を煮込んだ会津の郷土料理です。正月や冠婚葬祭など、人が集まる時におもてなし料理として、今も各家庭で作られています。今回は、郷土料理・こづゆについて、またこづゆが生まれた背景についてご紹介します。


こづゆとは、貝柱の出汁でさまざまな具材を煮込んだ会津の郷土料理です。正月や冠婚葬祭など、人が集まる時におもてなし料理として、今も各家庭で作られています。今回は、郷土料理・こづゆについて、またこづゆが生まれた背景についてご紹介します。

画像提供:福島県観光交流局

 

冠婚葬祭に欠かせない、会津のもてなし椀

こづゆは福島県会津地方の郷土料理です。その歴史は長く、古くは江戸時代後期、会津藩の参勤交代の折に食された料理がルーツではないかとされています。もともと冬の間のお祝いの席で出されていましたが、今では冠婚葬祭や正月などに欠かせない料理となっています。

こづゆに用いる具の種類は、7種類もしくは9種類の奇数種類を用いていて、お祝いごとにつきものの「割り切れない数にする」に通じています。伝統工芸である会津塗りの浅く平たい器(御平椀・おひらわん)に盛られ、朱塗りの小皿(手塩皿・てしおざら)に分けて食べるのが作法です。

具だくさんのこづゆは、当時としてはぜいたくな食べ物ながら、「何杯おかわりしてもよい」という習慣があります。これは「祝いの席では精いっぱいのもてなしをする」という会津の人々の心意気の表れです。ツヤツヤの朱の皿にたっぷり盛られたこづゆは、今も昔も華やかな席にふさわしい伝統料理なのです。

たっぷりの具に貝柱の出汁がじんわり

こづゆの具材には、豆麩(まめふ)、にんじん、ギンナン、里芋、大根、ごぼう、干ししいたけ、乾燥キクラゲ、糸こんにゃくなどが使われています。干し貝柱を水で一晩かけてもどし、もどし汁は出汁に、貝柱はほぐして具材に用います。干し貝柱も具材の数と同じく、奇数にするのがよいとされています。

こうして具材を並べてみると、根野菜や乾物など、保存期間の長いものをたっぷりと使用しているのが分かりますね。冬が長く海が遠い会津地方ではこうした食材が重宝され、これらを活用した郷土料理が数多く残っています。

会津地方では、こづゆと同じくお祝いの席で食べられるものとして「お平」というメニューがあります。保存がきく具材がふんだんに用いられた特別な日のごちそうであり、具材の盛り付け方に順番が決まっているというユニークさがあります。詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。

北前船が運んだ会津の食文化

 

食材を運んでくる貿易船「北前船(きたまえふね)」は、海産物の入手が困難であった会津地方にとって大変重要な役割を担っていました。海の幸は北前船で運ばれ、舟で川を渡り、あるいは峠を越える人の手によって会津に運ばれていたのです。

北前船で運ばれた食材は、塩・身欠きニシン(ニシンの干物)・するめ・昆布などの乾物類がありました。もたらされた海の幸は、イサキの酢漬けやイサキの昆布巻き、松前漬け(画像)となり、会津の食文化を育んだのです。会津地方の郷土料理の特徴である、「自給できる野菜類と干した海産物の組み合わせ」には、こうした背景が色濃く残っています。

海の幸と山の幸が詰まったこづゆは、今でも会津の方にとって人気の郷土料理です。最近では、自宅で手軽に食べられる、数種の具材と貝柱の出汁がそろった「こづゆセット」も出回っています。華やかなのにほっとする味わいで、おもてなし料理としてもぴったりなこづゆを、一度作ってみてはいかがでしょうか。