2016年01月15日

郷土料理|打ち豆汁(福井)雪国の保存食「打ち豆」を使った、長寿の里のおみそ汁

畑の肉といわれる大豆と、その大豆を加工してできた味噌を使った打ち豆汁。雪国の保存食「打ち豆」を使い、冬場の食料保存もできて栄養満点、さらに調理のしやすさまで優秀な、先人の知恵が生きるおみそ汁です。


畑の肉といわれる大豆と、その大豆を加工してできた味噌を使った打ち豆汁。冬場の食料保存もできて栄養満点、さらに調理のしやすさまで優秀な、先人の知恵が生きるおみそ汁です。

提供:済生会 全国季節のmy行事食

 

浄土真宗と暮らしが結びついた郷土汁

雪深い福井では、収穫した食材を上手に保存する工夫が多く施されてきました。なかでも栄養価の高い大豆は打ち豆として保存され、さまざまな調理をして活用されてきました。

また、福井県は真宗十派のうち4つの本山があるほど真宗が栄えた土地。浄土真宗の大きな仏事である報恩講※(ほうおんこう)の開催時と大豆の収穫期が重なることもあり、打ち豆は報恩講の精進料理のメイン食材としても利用されました。報恩講には多くの人たちが集まるので、大量の料理を素早くかつ安価に作れる食材が必要でした。その点でも打ち豆はぴったりだったのです。

打ち豆汁は、雪深い地域の人々にとって必要な栄養価の高い汁物であったことに加え、報恩講という仏事と暮らしが密接に結びついていたことから、福井県の食文化として根付いていったと思われます。

※報恩講とは、宗祖・親鸞に対する報恩謝徳のために営まれる法要のこと。

長寿上位県に愛される食材 打ち豆とは?

打ち豆とは、大豆をつぶして乾燥させたもののこと。つぶれて小判状になった豆は、保存のための乾燥に適しています。また、まるごと乾燥させたものより水分を含みやすく、調理時の加熱時間を短縮できます。乾燥大豆を戻す際は、水に一晩つけてからお湯で戻しますが、打ち豆は水にひたして3~5分で調理できます。打ち豆は保存・調理・栄養と、どこから見ても優等生。まさに先人の知恵の産物といえるでしょう。

かつては、大豆を打ち豆にするには、各家庭で木づちを使い一粒一粒つぶしていましたが、今ではスーパーなどで販売されており、地元では季節を問わず食べられています。おみそ汁や煮物に使われることが多いですが、くせがなくボリュームも出るので、ハンバーグやカレーライスなどの材料にも使われているようです。

提供:福井県庁 ブランド営業課

 

(画像の打ち豆は、右上から時計回りに大豆・青大豆・黒大豆)

打ち豆とお酢の元気コンビ 打ち豆なます

打ち豆をつかった福井の郷土料理から、もう一品「打ち豆なます」をご紹介します。打ち豆なますとは、柔らかくしてからすりつぶした打ち豆に、振り塩でしんなりさせた大根やにんじんを加えて、味噌・砂糖・お酢で和えたもののこと。普段の食生活はもちろん、前述の報恩講の精進料理にも登場します。栄養価の高い大豆と、疲労回復・殺菌・血糖値の急激上昇緩和などが期待できるお酢を組み合わせた一品です。

提供:JA福井県中央会

 

大豆の加工食品は多くありますが、なかでも打ち豆は保存と調理のしやすさに優れています。全国の大きなスーパーでも取り扱っているようなので、見つけたら一度試してみてください。おみそ汁に入れてよし、炒めても煮てもよし。大豆レシピの幅が広がります。