2016年04月18日

郷土料理|ヒカド(長崎県)風邪にも効果抜群! 歴史とともに変化を遂げた、長崎の南蛮料理

今回は、「ヒカド」という郷土料理としては珍しい音感をもつ、煮込み料理をご紹介します。すりおろしたさつまいもでとろみをつけたスープに、サイコロ状に切られたさまざまな具材が入っており、風邪にも効果抜群です。異国情緒が今なお残る、長崎らしい郷土料理です。


今回は、「ヒカド」という郷土料理としては珍しい音感をもつ、煮込み料理をご紹介します。サイコロ状に切られたさまざまな具材が、すりおろしたさつまいもでとろみをつけたスープに入っています。異国情緒が今なお残る、長崎らしい郷土料理です。

とろみのついた甘いスープが絶品!

江戸時代、長崎には外国人居留地や教会が立ち並び、多くのポルトガル人が暮らしていました。そのなかで彼らから教わった南蛮料理Picadoが、郷土料理ヒカドの由来といわれています。この料理の特徴は、なんといってもポタージュのような「とろみ」。すりおろしたさつまいもでとろみを出しているので、ひとくちいただけば素朴な甘さが口のなかいっぱいに広がります。

Picadoとは、ポルトガル語で「細かく切り刻む・調理する」の意。具材のマグロや鶏肉、大根・人参などの野菜は、その全てが1.5cmほどのサイの目に切られています。ポルトガル人から料理を教わったことが、具材の形状からも見て取れます。

Picadoからヒカドへ

江戸時代の料理本をひもとくと、ヒカド具材は鴨(かも)やアヒル、イカ、エビ、大根などを用いていたことが分かります。Picadoが庶民に広まるにつれて、高価で入手困難な肉類は、マグロやブリなど入手しやすい食材へと変化していきました。また、Picadoのとろみの素はパンでしたが、禁教令によりパンが手に入らなくなったことから、さつまいもで代替することになったのだと考えられています。

とろみをつけるのであれば、片栗粉でもよいのでは?と私たちは思ってしまいますが、なぜさつまいもなのでしょうか。長崎の人の味付けは、一般的に甘めだとされています。これは出島から輸入された砂糖が、長崎では比較的安価であったこと、貴重な砂糖を料理に入れることで客人をもてなしたのが由来のようです。甘めな料理を好む長崎の人々が、砂糖を使わずに甘みととろみを……と考えた結果、さつまいものすりおろしになったのだと思われます。

 

風邪にも効果抜群のヒカドの栄養価

ヒカドに使われる具材、大根・人参・さつまいもなどの根菜類は、身体を温める効果をもっています。また、さつまいもに含まれるビタミンC、人参に含まれるビタミンAには抗酸化作用があり、免疫力を高めてくれるため、風邪の時には効果抜群。また、マグロからは良質なタンパク質をとることができるため、風邪予防にもなります。
全ての具材が細かく柔らかく煮込んであるため消化もよいため、風邪をひいてしまった時、体調が悪い時には、ぜひいただきたい一品です。

 

江戸時代に始まり、出島・鎖国・宣教師追放と激動の時代背景を経て変化していった郷土料理ヒカド。さつまいもの甘みととろりとしたシチューのような食感が、やみつきになります。意外にお酒にも合うので、酌の際に小腹がすいたときには、同じく甘い香りをもつ芋焼酎と一緒に食してみてはいかがでしょうか。