2017年10月10日

散策|蔦沼と沼めぐりの小路(青森県) ブナの森にたたずむ、6つの沼をめぐる遊歩道

十和田湖から北へ約10km、十和田八幡平国立公園内にある「蔦野鳥の森」はブナの原生林と野鳥の宝庫です。この森には個性豊かな7つの沼があり、その美しい景色を写真に収めようと多くのカメラマンや観光客が訪れます。今回は赤沼を除く6つの沼(※)をまわる遊歩道「沼めぐりの小路」をご紹介。紅葉シーズンはもちろん、季節ごとに行く価値のある散策路です。


十和田湖から北へ約10km、十和田八幡平国立公園内にある「蔦野鳥の森」はブナの原生林と野鳥の宝庫です。この森には個性豊かな7つの沼があり、その美しい景色を写真に収めようと多くのカメラマンや観光客が訪れます。今回は赤沼を除く6つの沼(※)をまわる遊歩道「沼めぐりの小路」をご紹介。紅葉シーズンはもちろん、季節ごとに行く価値のある散策路です。

 

赤沼は遊歩道から5kmほど離れており、直接行くことはできません。

オススメ散策ルート

蔦温泉(つたおんせん) 休憩所(ビジターセンターそば)

徒歩約10分
蔦沼(つたぬま)

徒歩約15分
鏡沼(かがみぬま)

徒歩約5分
月沼(つきぬま)

徒歩約15分
長沼(ながぬま)

徒歩約20分
菅沼(すげぬま)

徒歩約10分
瓢箪沼(ひょうたんぬま)

徒歩約2分
蔦温泉旅館

徒歩約77分(約2.6km)
コースタイムや距離は目安です。
 

自然公園は歩道が整備されていますが、履物や衣服などの身支度は整えましょう。

遊歩道「沼めぐりの小路」

深い森のなかには7つの沼が点在します。それぞれ“蔦沼・鏡沼・月沼・長沼・菅沼・瓢箪沼・赤沼“といい、総称は「蔦七沼」が正式名称ですが、一番大きな沼である蔦沼を代表して「蔦沼」と呼ばれることが多いです。「沼めぐりの小路」は赤沼以外の6つの沼をまわる遊歩道で、所要時間は1時間半ほど。多少の凹凸はあるものの歩きやすいように整備されています。

この一帯は野鳥保護区域に指定されている野鳥の宝庫でもあり、同じ場所からスタートして違うルートをまわる「野鳥めぐりの小路」も用意されています。特に5月の下旬ごろは繁殖期を迎えた鳥たちの声で大変にぎやかです。
春は新緑とミズバショウ、夏は幻想的な濃霧とホタル、秋は紅葉、冬は雪景色(※)と、いつ訪れても魅力ある場所です。

(※)冬季は通行止めの道が多いため、事前に確認することをおすすめします。

蔦七沼のなかで代表的な「蔦沼」

 

蔦沼は蔦七沼のなかで最大の沼で、大きさは周囲1kmほど。木道デッキから湖面をのぞきこめば、ヒメマスやイワナが泳ぐ姿が見られます。初夏にはカキツバタが咲き、夏には満天の星の下でヘイケボタルが飛び交います。

最も観光客が多いのは紅葉シーズンの早朝です。対岸の紅葉が朝日を正面から受け止めて輝き、湖面まで燃え立つような朱に染まる光景はここでしか見られない神々しさ。画像のような写真が撮れるのは天気がよく風もない日で、しかもほんの数分間だけという貴重なタイミングですが、運がよければ一生の思い出に残る奇跡のようなワンシーンに出会えるでしょう。

そのほかの沼

蔦七沼のうち6つをめぐることができる「沼めぐりの小路」は、訪れたらぜひ1周しておきたい遊歩道。そのなかでも、特に見ておきたい「鏡沼」「月沼」をご紹介します。

鏡沼

その名の通り鏡のような静かな湖面に、周りの樹木や朽木が映り込んだ鏡沼。この流れは月沼から流れてきたもので、かつての粋人(※)が取り込んでつくった人造の沼です。すっかり自然に溶け込んだ鏡沼ですが、中央に茂ったオオカサスゲが、どこか庭園のような雰囲気も漂わせています。オシドリ、マガモ、カルガモなど、水鳥たちの姿が見られることも。

※粋人…風流を好む人

 

月沼

蔦温泉旅館に逗留した文人たちが、徳利(とっくり)をぶら下げて夜の散策に向かったのがこの月沼であったといわれています。鬱蒼とした森に囲まれた月沼は水深が浅く、月光が当たれば沈んだ倒木がぼんやり浮かび上がって幽玄の世界に迷い込んだかのよう。月沼に浮かぶ月を眺めながらの月見酒……そんな風景が目に浮かぶ、月の似合う沼です。

 

蔦温泉旅館(ビジターセンターそば)

 

「沼めぐりの小路」のスタート地点であるビジターセンターからほど近く、蔦沼からも徒歩10分ほどの「蔦温泉旅館」は、早朝の蔦沼を訪れるにはうってつけの温泉宿。蔦沼の紅葉は10月中旬から下旬がベストシーズンで、日の出はおよそ6:00、シャッターチャンスはだいたい6:30です。

こちらのお湯は足元から温泉が湧く、大変珍しい“源泉湧き流し”。パイプ等を通さない「生の源泉」が、足元からぽこぽこと湧き出ています。蔦沼散策の前日に宿泊して、じっくりと堪能してみてはいかがでしょうか。

大正時代の詩人・大町桂月(おおまちけいげつ)が逗留し、後に蔦温泉に本籍を移したことでも知られ、館内には氏の資料館が併設されています。
立ち寄り入浴も可能ですが、冬季は休業している場合も。事前に確認しておきましょう。

蔦温泉旅館
所在地:青森県十和田市奥瀬字蔦野湯1
電話番号:0176-74-2311

蔦七沼は、沼というにはあまりにも透明度の高い清水をたたえています。「沼めぐりの小路」はアップダウンが少ない歩きやすい道で、四季折々の景観を楽しめます。小さな渓流のせせらぎや野鳥の声に耳を傾けながら鬱蒼とした森を歩く、そんなぜいたくな時間を過ごしてみませんか。

※掲載されている情報は平成29年9月現在のものです。