2022年05月18日
近年、健康や美容にいいと脚光を浴びている発酵食品。<br>塩麹やギリシャヨーグルトなどさまざまなブームが起こり、発酵食の専門店も人気です。また、味噌やぬか漬けを手づくりする人も増えています。<br>ただ、発酵食品が体にいいことは何となく知っていても、発酵にどんなパワーが秘められているのか具体的に知らずに食べている人も多いのではないでしょうか。<br>そこで発酵のメカニズムや効果をご紹介。食べ物を美味しくし、栄養価も高めてくれる発酵パワーのヒミツに迫ります。
発酵とは、食材がカビや菌などの微生物の働きによって分解され、人間にとって有益な物質になる過程のこと。世界で最も古い発酵食品は酒といわれ、7000〜8000年前の遺跡にワインをつくっていた形跡がみられます。
実は微生物が発見されたのは17世紀になってから。人間は発酵の仕組みが解明されるずっと前から偶発的に発酵した食品の味や香りの良さ、保存性の高さを経験的に学び、食べてきたのです。
日本は、夏の高温多湿でカビや菌が発生しやすい気候が発酵に適し、他に類を見ない豊かな発酵文化が育まれました。縄文時代には酒がつくられ、奈良時代に麹菌を利用した醤油や味噌づくりが始まったといわれます。他にも酢や漬け物、納豆など、多くの発酵食品が日本の食卓を彩ってきました。
近年、発酵食品は健康や美容にいいと注目を浴びています。より健やかな生活を送るためにもここで発酵の仕組みを学び、毎日の食事に効果的に取り入れていきましょう。
実は発酵と腐敗の仕組みは同じです。有益か有害かという人間の価値観に基づいて、いずれかに区別されます。同じ菌でも美味しく変化すれば「発酵」、食べられない場合は「腐敗」になるのです。
微生物も生物なので増殖するために栄養が必要です。発酵は微生物が食べ物から栄養をとる時に、その食べ物を分解して、新しい栄養素やうまみ成分をつくり出すために起こります。
発酵に関わる微生物はカビ、細菌、酵母菌の3種。和食文化に欠かせない麹菌はカビの一種です。発酵食品には乳酸菌によるヨーグルト、納豆菌による納豆など一つの原材料に一つの発酵が起こるものもありますが、味噌や醤油など複数の微生物によって発酵する食品も多く、複雑な味わいを生み出しています。
食べ物が発酵食品になるまでの過程は複雑で、食べ物の種類によっても異なります。しかし、基本的には「酵素による分解」と「新しい物質をつくる」という2つの反応が起こっています。ここでは日本酒を例に、発酵のメカニズムを見ていきましょう。
発酵の過程で微生物がアミノ酸やビタミン類を生産するため、元の食材よりも栄養価が高くなります。また、栄養素が分解されることで体内に吸収しやすくなります。
タンパク質が分解されることで旨み成分のグルタミン酸(アミノ酸系)やイノシン酸ができて独特の風味が生まれます。
発酵に関わる微生物が腐敗の原因になる雑菌を抑え、保存性を高めます。また、発酵で生成されるアルコールや酢酸そのものに殺菌作用があります。
私たちの体に有益な影響をもたらす発酵食品。
その効果を知り、上手に取り入れて健康的な生活を送りましょう。
味噌や日本酒、漬物、ヨーグルトなどに存在する乳酸菌は「善玉菌」の一種です。善玉菌は腸内で大腸菌などの「悪玉菌」の増殖を抑え、腸内フローラを理想的な状態に整えてくれます。善玉菌を活性させる酵母菌と増幅させる納豆菌、さらに麹菌も善玉菌です。
悪玉菌が増えすぎると腸内環境が悪化して便秘になり、有害物質の発生や免疫力の低下を引き起こします。発酵食品の摂取が腸内環境の改善につながるのです。
人間の腸には100兆個もの腸内細菌が棲み、「腸内フローラ」を構成します。腸内フローラの理想的な状態は「善玉菌」2:「悪玉菌」1:「日和見菌」7の割合。有害物質を発生させるだけでなく、悪玉菌も消化・吸収など、実は大事な働きを担っています。
世界最古の調味料といわれ、世界各地で食されている発酵食品、酢。なかでも玄米や大麦を原料とした黒酢はアミノ酸やミネラルが豊富で、健康食品としても人気を博しています。
鹿児島県福山地方の黒酢は、壺の中で発酵、熟成を行う珍しい製法。江戸時代より受け継がれてきた伝統が黒酢の栄養を育んでいます。
醸造の過程で、原料が発酵したやわらかい固形状のものを「もろみ」といいます。黒酢の発酵過程で生まれる黒酢もろみはアミノ酸などの黒酢の栄養素が凝縮されており、食物繊維やペプチドも豊富です。