2016年11月10日

語源・由来|「野次馬」「面白い」 日常でよく使われる言葉の意外な由来

日常会話の中でよく用いられる表現には、思いもよらない由来を持つものがいくつも存在しています。今回は、自分には無関係なことに関して興味本位で騒ぎ立てたり、人に便乗して面白半分で口を出したりする人のことを指す「野次馬」と、楽しく感じ笑いたくなるような時に用いる「面白い」の二つをご紹介します。


日常会話の中でよく用いられる表現には、思いもよらない由来を持つものがいくつも存在しています。今回は、「野次馬」と「面白い」の二つをご紹介します。

野次馬

 

野次馬とは、「となり町で火事が起き、大勢の野次馬が集まった」のように、自分には無関係なことに関して興味本位で騒ぎ立てたり、人に便乗して面白半分で口を出したりする人のことを表します。
江戸時代から使われているとされるこの表現の由来には諸説ありますが、老いた馬という意味の「親父馬(おやじうま)」から来たという説が有力だといわれています。

基本的に馬は、集団で行動する動物。馬の集団の中でも、老いた馬は体力や権力がなくなり、若い馬の後をついて歩くことが多くなります。さらに、体力のない老いた馬は人間にとっては仕事に使えず、利用価値が低いものです。これらの意味を合わせ、人の後をついて回るだけで価値の低い老いた馬の様を人に例えたのが、野次馬という表現になったと伝えられています。

「野次」の部分は当て字といわれていますが、人に対して大声でからかいや非難の言葉を浴びせることを「野次を飛ばす」といいますよね。この「野次」は元をたどると「野次馬」が略されたもので、明治時代から使われているそうです。そして「野次る」も、野次が動詞化した言葉として定着しています。さらに、野次馬をするような気質を表す「野次馬根性」という言葉もありますが、いずれもあまりいい意味を持たない表現です。

面白い

 

「面白い」という表現は、多くの場合は何かを見たり聞いたりした際に楽しく感じ、笑いたくなるような時に用いるもの。しかし、もともと「面白い」は別の意味を持つ言葉なのです。この表現は奈良時代以前から使われているといわれるほど歴史が古く、「面白い」の由来は数多くの説が伝わっています。
中でも有力とされているのが、「面白」説。面は目の前、白は明るくはっきりしている様子を表しています。つまり「面白い」とは目の前が明るくなった状態のことで、これが転じて目の前の美しい景色という意味を持ちました。さらに意味が転じ、楽しい、心地よいなどの明るい感情を表現するようになったといわれています。そしてこれらの感情を表す広い意味が、現在使われている「面白い」の意味となったそうです。

この「面白」説には、日本神話に登場する太陽・光の神様である天照大神(あまてらすおおみかみ)が関わっているという説も存在しています。日本神話には、天照大神が天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまい、世界が真っ暗になったという「岩戸隠れ」の伝説があります。この中で、天照大神を外へ出そうと八百万(やおよろず)の神々が天岩戸の外で宴会を開くのですが、その騒ぎが気になった天照大神は少しずつ天岩戸を開けてしまいます。その際に闇に包まれていた世界がパッと明るくなり、戸の前にいた神々の顔(面)が白くはっきり見えるようになったのだとか。その様子が、「面白い」の由来のひとつとされています。
ちなみに、天照大神を天岩戸から引っ張り出して太陽が戻った時に八百万の神々が発した「あなおもしろ、あなたのし」という喜びの言葉があります。「おもしろ」は「面白」を指していますが、「たのし」は「手伸し」と書き、「楽しい」という言葉の語源にもなっていると伝えられる、全身で喜びを表すという意味を持つ言葉です。

別の由来として、「思う」と「著(しるし)」から成り、思いが強く際立っているという意味の「おもしるし」という言葉が「おもしろい」に変化した、「思著」説もあるようです。

いかがでしたか?ごく当たり前のように使っている表現にも、「野次馬」のように江戸時代から使用されている言葉や、「面白い」のように神話にも通じる言葉があるとは興味深いですね。何気ない表現にも、調べてみると奥深い意味が隠されているようです。