2017年02月09日

語源・由来|「もったいない」「伸(の)るか反(そ)るか」

言葉の語源をたどると、思わぬ由来や新しい意味を発見できることがあります。今回は、ものを無駄にしてしまった時、または分不相応で恐れ多いという時に使う言葉「もったいない」と、成功するかどうかは分からないが、運を天に任せてやってみるという意味の言葉「伸るか反るか」の、日常で耳にすることがある二つの表現の語源をご紹介します。


言葉の語源をたどると、思わぬ由来や新しい意味を発見できることがあります。今回は、日常で耳にすることがある二つの表現「もったいない」と「伸るか反るか」の語源をご紹介します。

もったいない

 

「まだ使えるのに捨てるのはもったいない」のように、ものを無駄にしてしまった時、または分不相応で恐れ多いという時に使う言葉です。日常生活でもよく使われる表現ですね。

もったいないの「もったい」は、漢字で「勿体」と書き、「重々しさ」や「威厳」という意味があります。そんな意味を「無い」と否定することで、「妥当ではない」「不届き」という表現にしたのが、「もったいない」です。
この表現は、室町時代から使われはじめたとされていますが、「勿体」は元々「物体」と表記され、「物の本来あるべき姿や形」という意味が含まれていたそう。しかし、あとに重々しい、威厳という意味が派生し、「物体」という文字の意味から離れたため、表記が「勿体」に変わったという説があるそうです。
ほかにも「もったいない」の「勿体」が使われている表現として、「勿体をつける」「勿体ぶる」があります。いずれも、大したものではないにもかかわらず、貴重・重要であるように見せるという意味。威厳のある「勿体」な振る舞いで体裁を飾ったり物々しく見せたりする、という必要以上に大げさに扱う様子を表現しています。「もったいない」と同じ「勿体」が使われていますが、後に続く言葉の違いで、意味合いの印象も変化しますね。
ちなみに、「もったいない」は日本語そのままで「mottainai」という世界共通語になっています。2004年にノーベル平和賞を受賞した、ケニアの環境保全活動家であるワンガリ・マータイ氏が、環境問題を訴えるために使いはじめ、世界中にこの言葉を広める活動が行われています。ワンガリ・マータイ氏が「もったいない」を用いた理由のひとつとして、この言葉には物や自然などへの敬意が込められており、これを海外の言葉で表現するのは難しいということがあるそう。改めて、日本語の素晴らしさを感じますね。

伸るか反るか

 

成功するかどうかは分からないが、運を天に任せてやってみるという意味の言葉です。「この状況を打破するために、伸るか反るか、この方法を実行してみよう」のように、「思い切ってやってみる」「いちかばちか」という意味です。単語を分解してみると、「伸る」には長くまっすぐ伸びる、「反る」には後ろに曲がるという意味があります。
この言葉の由来は、矢の棒の部分である矢柄(やがら)にあります。矢を作る際、矢柄には細い竹が用いられていました。矢柄の太さがまっすぐ均等でなければ、矢は飛ばしたい方向へ飛ばなくなってしまうのだとか。そのため、矢柄の部分に使われていたのは、型にはめて矯正し乾燥させた竹だったそうです。
しかしその竹が矢に適した伸びた竹か、または矢作りには使い物にならない反ったままの竹かどうかは、型から取り出すまでは分からないのです。そんな矢を作る矢師が、矢柄の出来を気にしながら竹を取り出したという様子が転じ、いちかばちか運を天に任せるという意味で「伸るか反るか」という表現が生まれたといわれています。このように矢の伸び・反りが語源となっていることから、「乗るか反るか」の表記は誤りなのです。
またこの表現には、博打用語で勝つか負けるかという意味で使われる「乗るか逸(そ)るか」、もしくは物を賭ける勝負を決めるという意味を持つ「賭る(のる)」が語源という説もあるようです。

今回ご紹介した二つの表現は日常でよく聞く言葉ですが、「もったいない」では物の本来あるべき姿、「伸るか反るか」では矢作りの工程が元になっているなど、それぞれの持つ由来はあまり知られていなかったのではないでしょうか。言葉の語源をたどっていくと、これまで知らなかった言葉の歴史や文化背景が見えてくるのが、日本語表現のおもしろさといえるかもしれませんね。