2018年09月28日

語源・由来|「いただきます」「ごちそうさま」 食べることにまつわる語源

「おはよう」「こんにちは」「さようなら」「おやすみなさい」など、日常交わされるあいさつ。儀礼的なものでありながら、尊敬や感謝、親愛の情を込めたあいさつは、気持ちのよいものです。命の源となる「食事」の際に使う言葉にはどのような意味があるのでしょうか。今回は、食事を始めるときのあいさつ「いただきます」と食事を終わるときのあいさつ「ごちそうさま」の言葉の語源を紹介します。


「おはよう」「こんにちは」「さようなら」「おやすみなさい」など、日常交わされるあいさつ。儀礼的なものでありながら、尊敬や感謝、親愛の情を込めたあいさつは、気持ちのよいものです。「いただきます」「ごちそうさま」も食事を始めるときと終わるときのあいさつです。命の源となる「食事」の際に使う言葉にはどのような意味があるのでしょうか。今回は、食べることにまつわるあいさつの言葉の語源を紹介します。

頭上にのせる意味から生まれた 「いただきます」

 

食事の始まりの言葉、「いただきます」。「いただく」は漢字では「頂く」、または「戴く」と書きます。「王冠をいただく」、「雪をいただいた山々」などといいますが、「いただく」には、「頭上にのせる、かぶる」、という意味があります。さらに、「いただく」には「敬意を表して高くささげる。頭上におしいただく」という意味があるほか、「もらう」の謙譲語としても使われます。これは、身分の高い人から物をもらう際に、敬意を表するためにその物を頭上に高くささげるような動作をしたことから、「もらう」の意味で使われるようになったといいます。
さらに身分の高い人からもらったものが食品だったときや、神仏へのお供えの食べ物を下げて、食べるときにも、頭上にのせるような動作をして、食事をしたことから、「食べる」「飲む」の謙譲語として「いただく」が用いられるようになりました。
それがやがて食事のあいさつとして「いただきます」という言葉として定着していきました。

「いただきます」は、敬意を表する動作から生まれた言葉です。現在ではその敬意は、肉や魚、卵はもちろん、野菜や果物も含めて、食材の「命」そのものに向けた言葉と捉え直されています。また、食材を育てたり獲ったりした人や、食事を作った人に対する敬意と感謝の気持ちを込めた言葉とされています。

手を合わせて食事を前に頭を下げる動作も、「頭上に戴く」動作が語源にあると思えば、自然なことかもしれません。語源を知って、食材の「命」を自分の「命」にすることへの感謝、そして、食材に携わるすべての人への敬意をもって「いただきます」という言葉を使いたいですね。

食材集めに奔走する様 「ごちそうさま」

 

食後のあいさつである「ごちそうさま」。漢字で書くと「ご馳走様」となります。この言葉の語源を知るために、まずは「馳走」という言葉から見ていきましょう。「馳せる」は速く走る、もしくは馬や車などを早く走らせることをいいます。加えて、「走る」と重ねて使うことで、馳走はもともと「走り回る、奔走する」ことを指しました。ここから、お客様をもてなすにあたり、食材を揃えるために方々に馬を走らせ、さらに走り回って用意をすることから、「馳走」は「食事などでもてなしをすること」「もてなしのための立派な料理」を指すようになりました。
この「馳走」に感謝の意味での「御」と「様」がついて、ごちそうさま、という言葉になったのです。

現代は、さまざまな食材が身近な店で購入できます。馬であちこち駆け回って食材を集めた時代とは比べようもありませんが、それでも、日々の献立を考え、買い物をし、調理して食卓を整えることは大変な労力です。食事をいただくときは、あらためて「ごちそうさま」の語源を思い出し、その一皿にかけられた手間を思って、食後のあいさつをしたいものですね。そして、料理を作る人は、食べる人の「いただきます」「ごちそうさま」の言葉を、自分への労いや感謝として受け取ってみてはいかがでしょうか。