2018年09月25日
寝付きが悪い、熟睡できていない、私の寝方って正しいの?人生の3分の1を占めるともいわれる睡眠は、多くの人にとっての関心事です。そこで今回は、「(一社)日本眠育普及協会」の代表であり、睡眠インストラクターとして広報活動をされている橋爪あき先生を迎え、9月のお悩みテーマ「睡眠」について、皆さんの質問をもとにアドバイスをうかがいました。
たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださった、はらは様、風人の杜様ほかたくさんのご質問、ありがとうございました!
いびきは時々かくぐらいだったら心配ないのですが、いつもひどいいびきをかいているという方は、まず医師に相談しましょう。特に、「グーッ、ガッ……」といった感じのいびきで、頻繁に呼吸が止まっている状態が見られるのであれば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性がありますから、必ず受診して、簡易検査を受けてみてください。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることで酸素が体内に入っていかない低酸素状態が起き、睡眠自体も妨害されるので、放置していると認知症や糖尿病、循環器系疾患などの大病につながる、非常に怖い病気です。いびきのイメージもあり、中年男性がかかりやすいと思われがちですが、女性や子どもにも見られます。
睡眠中の本人は記憶がないので自覚はないのですが、呼吸が止まった時に、実は目覚めているのです。喉をかきむしったりしていることもあります。ですから、ご家族に「いびきをかいてるよ」といわれたら、ぜひ録音をして聞いてみてください。それで、息が止まっているようでしたら必ず受診しましょう。
睡眠中に呼吸が止まる原因のひとつはまず肥満です。喉の周りや首全体に脂肪がついて、気道が圧迫されてしまうので、いびき音が出るのです。特にメタボリック症候群の方は、チェックが必要です。
他に、鼻炎や花粉症が原因になる方もいますし、アデノイド(咽頭扁桃肥大症)や、歯並びが関係しているケースもあります。今の若い方は、顎の小さい方が多いので、いびきをかきやすいということもあります。
咽頭の障害がある子は赤ちゃんでもいびきをかきますから、軽く見ないことです。また、睡眠中に口で呼吸をしている子はいびきが出やすいだけでなく、日中、姿勢が悪かったり、ぼーっとしたりしがちだという特徴もあります。ですから、親御さんがよく見てあげて、心配であれば受診するようにしましょう。
ご質問にあるように、睡眠時無呼吸症候群の治療法は、口の中を狭めないようにするマウスピースをして就寝する方法や、酸素マスクのような器具で空気を送り込むCPAP(シーパップ)が主流です。いずれも睡眠の質自体は改善するのですが、マウスピースもCPAPも違和感がまったくないわけではないですし、旅先にはCPAPを持って行けないなどの問題もあって、生活全体の質はどうしても下がりがちになってしまいます。
マウスピースは比較的軽症の方への対策だとされていますので、ご質問の方は重症になる前に受診できたということではないでしょうか。睡眠時無呼吸症候群はとにかく早期発見、早期対策が大切なのです。
早期の対策として、メタボリックシンドロームの傾向がある、肥満があるという方は、まず痩せることです。
もうひとつ、首や喉の筋肉をしっかりつけておくことも重要です。女性の二重顎の対策としてよく見られる首回りの体操などは、無呼吸の予防にも役立ちますよ。また、マウスピースやCPAPを使っていても、日中の生活の改善を忘れずに行うことも必要です。
本来は朝型の方が望ましいのですが、たとえ夜型でも、一定の生活リズムを守れていて、自分の調子がよければ、それで構わないのです。一番大切なのは「生体時計のリズムを崩さないこと」です。
最も体調を損ねるリスクがあるのは、勤務時間によって睡眠時間もバラバラになるシフト勤務の方です。看護師やガードマン、航空機のフライトメンバーといった職業ですね。たとえ夜勤でも、常に決まった時間帯に勤務できれば、リズムは整えられますから。
ただ、夜型ならではの工夫は必要です。昼間寝る時は、部屋をきちんと暗くして夜の環境にすること。夜寝る時と同じように就寝前はぬるめのお風呂に入る、スマホやテレビを控える……要は完全に逆転させて、生活環境を作ることが大事です。
最後に、これまでお話しした内容について、今一度振り返ってみましょう。
まず「眠っている時間は、起きている時間と同じように大切である」ということ。
一般的に睡眠=休養と見られがちですが、睡眠中も、体内では身体活動をとても活発に行っています。だから睡眠は、決して休んでいるだけではない、明日の自分を作る活動なのです。それも踏まえて、睡眠を大切にしてほしいですね。
そして「私たちヒトは天体の運行に従って、日中に活動する動物である」ということ。まずは、生体リズムを整えましょう。「昼の活動と夜の睡眠は切り離すことができない」ですから、日中の生活改善も重要です。それから、基本的なことでいいので、睡眠のメカニズムを分かっておくこと。それができていれば、後は自分でいろいろ工夫をして、よい睡眠をとることにつなげられます。
睡眠は命の基盤を作る「活動」であるとともに、頭脳と心を育てる「活動」でもありますから、記憶や心にも大きく影響します。しっかり睡眠をとれば、いつも落ち着いた感情でいられる。まさに「よい睡眠をとることはよい人生を作る」のです。ぜひこれを機に、よい人生を手に入れるための一歩を踏み出しましょう。