2018年09月11日
寝付きが悪い、熟睡できていない、私の寝方って正しいの?人生の3分の1を占めるともいわれる睡眠は、多くの人にとっての関心事です。そこで今回は、「(一社)日本眠育普及協会」の代表であり、睡眠インストラクターとして広報活動をされている橋爪あき先生を迎え、9月のお悩みテーマ「睡眠」について、皆さんの質問をもとにアドバイスをうかがいました。
たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださった、こばちん様、りこりすさん様、裕則おとうさん様ほか、たくさんのご質問、ありがとうございました!
若い方であれば7~8時間一気に寝る方が多いので、2~3時間で目覚めるとなると、睡眠の質が良くないのかもしれません。ただ高齢者の方ですと、せっかく深い眠りへ進んでいるのに、急に浅い方へ戻ってしまう……という状態を繰り返すケースも増えます。加齢によって自然と熟睡が減ってくるのです。
そもそも、2~3時間というのは、ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルが終わるタイミングなので、睡眠が浅くなって目が覚めやすい状態です。もし、またすぐに寝付けるのでしたら、それほど気にすることはありません。でも、寝付けない方も多いと思います。その理由として考えられるうちのひとつが、ストレスです。
就寝後に目覚めてしまうと「寝なければいけない」という意識自体がストレスになる方も多いと思います。でも、無理に寝ようとすると余計寝られなくなってしまうので、どうしても眠れそうになければ、逆に起きてみた方が良いのです。椅子に腰掛けて、手元だけの照明でちょっと本を読んだり、静かな音楽を聴いてみるのもおすすめ。そして、また眠くなったら寝ればいいのです。ただし、お部屋全体の照明はつけないでください。
ストレスの元がなくなるのが一番ですが、すぐに解決できそうにない場合は「就眠儀式」がおすすめです。何か寝る前のルーティンを決めて「これをやると眠れる」という自己暗示をかけます。
優しい音楽を聴く、きれいな写真が載っている雑誌を見る、瞑想をする、2~3分軽めのストレッチをして体を癒すなど。自分がリラックスできると感じるならなんでもいいのです。リラックスして、寝付きを良くしましょう。
ただし、興奮するようなことは控えましょう。例えば「疲れた方が眠れる」と考えて、強い運動をしてしまいがちですが、そうすると体温が上がって、余計寝付けません。
就寝中は、体温が下がることで深い眠りに入りますが、寝付けない、途中で目が覚めるという場合は体温がちゃんと下がっていないことが多いのです。
そのためには、まず湯船に浸かって内臓温度(深部体温)を上げましょう。シャワーで済ませず、就寝2時間くらい前に、ぬるめのお風呂にゆっくり入ります。深部体温が上がると、お風呂から上がった時に外に熱が出てきます。手や足は放熱器のような役割をしているので、手足の毛細血管から熱が出ていくのです。そうすると体温が下がって、寝付きがよくなりますよ。
それから、日中の活動不足が寝付けない原因になっている方もいます。体内には日中の活動によって「睡眠物質」というものが溜まっていき、それは睡眠によって分解されます。つまり、睡眠物質があまり溜まっていないと、分解に必要な睡眠も少なく済んでしまうので、睡眠が浅くなるのです。
では、どうやって睡眠物質を溜めるかというと、よく動き、よく働くことです。体だけではなく、脳もよく使わなくてはいけません。ただ、頭の使い方にも種類があります。
例えば「初めて会う人と数時間話をした」という日は、気疲れもしますが、よく眠れると思います。それは、右脳と左脳の両方がバランスよく動いているからなのです。1人でこつこつ難しいパズルを解いているだけでは、脳にとってバランスのいい疲労にはなりません。人間は社会的な動物なので、コミュニケーションがとても大事です。とにかく外に出て、人付き合いをする。それが快眠につながりますし、認知症の予防にもつながります。
難しい質問ですね……例えば夫婦喧嘩のような一時的なストレスは比較的すぐに回復できるのですけれども、こういうことに関しては、すぐに良い眠りを得る方法はありませんし、自分でできるだけ解決していく必要があります。
以前、上司とうまくいかずにうつ状態になってしまった方の相談を受けたことがあります。その方は、「内科で処方される睡眠薬でなんとか眠っているものの、薬はいつか卒業したいと思っている。ただ、生活上会社を辞めることもできない」という状況でした。それではどうしたかというと、まったく違う世界で楽しみを見つけることで、薬を卒業してサプリだけでも眠れるようになったのです。
彼の見つけた楽しみは、休日に奥さんや愛犬と農作業の体験会へ行くことでした。農作業を体験して、会社とは違う人間関係を作ったら、「上司が嫌なのはしょうがない」と思えるようになったそうです。もちろん農業でなくても、例えばカウンセラーやコーチングにかかるといったことでもいいのです。当人はだいたい「そんなことできないよ」といいますが、思い切ってやってみると意外とそうでもないものです。
彼は最終的に薬を卒業しましたが、睡眠薬はどうしても眠れない時なら、怖がらずに飲んでください。ただし必ず睡眠専門の医師に受診し、投薬してもらうことが条件です。自分で勝手に飲んだり、量を変えたり、止めたりしないこと。睡眠薬を途中で勝手にやめて、不眠が悪化する人もいます。医師の処方に従いましょう。
不眠症と、不眠的な症状というのは別のものです。不眠症というのは、一定の要件を全部満たしていると医師が診断した場合の診断名です。自分でなんとなく「眠れないから不眠症だ」「眠れるから治った」と判断できるものではないのです。薬についても同じことで、医師の診断なしに、勝手に扱うのは良くありません。
寝室の照明をちょっと変えてみたり、少し贅沢な布団を買ってみたりと、自分にとって、寝ること自体にも楽しみを見出せるような工夫をしてみましょう。カーテンやシーツ類に自分好みの柄がついていたりすると、気持ちが弾みますよね。そういった工夫も楽しんでみると、少しずつ眠りに対する警戒心が薄れていきます。
特におすすめなのは、パジャマにこだわることです。今はいわゆる部屋着で寝ている方も多いと思いますが、ぜひちょっと高価な、質のいいパジャマを着てみてください。上質なパジャマは吸湿性や放熱性に優れていて、肌触りも違います。一度着れば、安い部屋着には戻れなくなりますよ。
第3回では、お部屋の灯りや寝具の選び方など「夜にうまく寝付けるようになるためには」どうすればいいかについてお話します。お楽しみに!