2018年09月04日
寝付きが悪い、熟睡できていない、私の寝方って正しいの?人生の3分の1を占めるともいわれる睡眠は、多くの人にとっての関心事です。そこで今回は、「(一社)日本眠育普及協会」の代表であり、睡眠インストラクターとして広報活動をされている橋爪あき先生を迎え、9月のお悩みテーマ「睡眠」について、皆さまの質問をもとにアドバイスをうかがいました。
たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださった、きたむら様、ヒロ様、みかん様ほか、たくさんのご質問、ありがとうございました!
「何時間寝ればいいのか」とよく聞かれるのですけれど、これは人によって違うんですよね。傾向として、多くの方は「7~8時間ぐらい寝ると調子がいい」ようですが、なかには9~10時間寝ないとスッキリしない長眠者と呼ばれる方や、3~4時間でも大丈夫な短眠者という方もいます。質の良い睡眠の第1条件は、“自分の適正な”睡眠時間がとれているかどうかです。
適正な睡眠時間というのは、自分ではなかなか分からないものです。例えばですけれど、長いお休みをとれたときなどに、目覚まし時計を使わないで眠ってみてください。このとき、深夜0時前に寝るということが条件です。やってみるとなんとなく「○時間だと調子がいい」というのが分かります。
また「睡眠日誌」をつけるのもおすすめです。起床・就寝時間、夜間に目覚めた時間、日中の行動など、いろいろなことを書き込んで24時間を振り返ります。インターネットで「睡眠日誌」と検索すると、医療機関などが公開している情報が見つかりますから、そちらを活用して2週間ぐらい日誌をつけてみると自分の睡眠の問題点や適正な睡眠時間が分かってきますよ。
極度の夜型の方がご自身で朝型に変えるのは難しいですが、比較的朝型にしていくことは可能です。早起きの習慣をつけたいときには、「早く寝なきゃ」という考えに行きがちですが、眠くないと寝られませんよね。しかし、起きるほうはなんとかできます。まずは早起きから始めれば、早く眠くなりますよ。例えば15分早く起きて、慣れたらもう15分早く起きるというように、少しずつ慣らせば無理がありません。
ただし、極端に睡眠を短くするのは、もともとの短眠者以外、絶対にやめたほうが良いです。例えば7時間睡眠が適正な人が3時間にすると、毎日4時間も睡眠負債(※)を貯めることになります。どんどん心身に負担がかかり、病気のリスクが確実に高まります。たとえば地震や水害などで被災し、その対応で緊急的に睡眠時間が短くなる場合にも、平時に戻ったら睡眠時間も必ず戻してくださいね。
※睡眠負債…睡眠不足が借金のように積み重なること
睡眠というと、「眠る方法」を考えてしまう人が多いのですが、実は日中の行動がとても大切です。人も動物も、植物もみな独自の体内時計というものを持っていて、生体リズムを作り出しています。
平均的な日本人の体内時計の周期は、24時間より10分くらい長いといわれます。そのままだと地球の24時間からずれてしまいますが、朝日を浴びたときに体内時計がリセットされるようにできているんです。メーターをいったんゼロに戻すわけですね。そして、そこから新たに1日の生体リズムが始まります。ですから、何時ごろ眠くなるかは、朝の光をいつ浴びたかで決まります。
したがって、快眠に大切なのは朝の光なんですね。正午に日光を浴びても意味がなく、できるだけ午前中、朝8時くらいまでに太陽光を浴びることが大切です。枕や寝具など「眠る方法」はあとの問題で、まず大事なことは朝にしっかり体内時計をリセットして、生体リズムを整えることなのです。
熟睡は、質の良い睡眠の2つ目の条件です。人の眠りには、脳と体を休めるノンレム睡眠と、脳が起きている状態にあるレム睡眠があり、この2種類がワンセットとなって、一晩に4~5回繰り返されます。
最も大切なのは、入眠して最初に訪れるノンレム睡眠とその後のレム睡眠、つまりはじめのワンセットです。この間に睡眠の重要な役割である、脳の休息や成長ホルモン分泌の増加、記憶の整理・強化などが最も効果的に行われます。
寝付いて最初のノンレム睡眠を、どれだけ深くとれるかが、良い睡眠の決め手となります。
起床時のスッキリ度が高いなら、熟睡できているといえます。しかし、朝起きて、午前中(10~11時)にもう眠いのなら、ちょっと足りていませんね。それから夕方(17~20時)は、体温がとても高く、本来は眠れない時間帯です。夕方に眠い方は、やはり睡眠不足や疲労が溜まっています。1日のうち自分が何時ごろ眠くなるかを振り返って、熟睡度合いをチェックしてみてくださいね。
寝る前のお酒は、早く寝付けるように感じますよね。しかし、お酒は必ず眠りを浅くするし、利尿作用があるのでトイレにも行きたくなります。また、体も冷やしますから、寝酒は睡眠の一番の禁忌事項です。
もしお酒を飲むなら、夕飯と一緒に始めて、食べ終わったら飲み終わりましょう。軽い食前酒・食後酒、日本酒はお銚子1本未満なら構いません。ただし、24時に寝るなら、21時までに飲み終わるというように、就寝3時間前にはきっぱり終わるようにしてください。
寝酒をする方にいつもお伝えしているのですが、例えばワインをグラス半分くらいなら、睡眠への影響は小さいでしょう。しかし、問題は飲酒量ではなく、寝酒がクセになっていることが怖いんですね。寝酒をする方は、親しい方との別離や仕事上のトラブルなど、ショックなことが起こったときに酒量が増えてしまうことが多いからです。
寝酒をする方は、量を減らしたり、度数の低いものやノンアルコールビールにしてみたりしながら、徐々に止める方向に持って行ってみてください。また、お酒の代わりにカフェインの入っていないハーブティーや白湯にしてみる。そんなのは無理だと思うかもしれませんが、やってみると意外とできるものですよ。目覚めたときの感覚がすごく良くなってきますから、ぜひチャレンジしてみてください。