2018年09月14日

語源・由来|「めりはり」「やたら」 邦楽・雅楽が由来の言葉

何気なく使っている言葉に、実は深い歴史が隠されていることもあります。今回は、日本の昔からある「音」に関する用語が起源である言葉で、物事の強弱などをはっきりさせる表現の「めりはり」と、秩序や節度のないさま・めちゃくちゃ・むやみという意味の「やたら」をご紹介します。


何気なく使っている言葉に、実は深い歴史が隠されていることもあります。今回は、日本の昔からある「音」に関する用語が起源である言葉「めりはり」と「やたら」をご紹介します。

低音と高音を表す言葉「めりはり」

 

「めりはりをつけて仕事をする」「オンとオフのめりはりをつける」など、物事の強弱などをはっきりさせることを「めりはり」と言い表します。この言葉、ちょっと不思議な響きですよね。いったいどこから生まれた言葉なのでしょう。

実は「めりはり」は日本の伝統的な音にまつわる用語です。漢字では「減り張り・減張/乙張り・乙張」などと書き、「減る(める)」は「ゆるむ」の意味で、音を低めや弱めに発することをいい、「張る」は音を高め、強めに発することをいいます。

現代でも尺八などでは音程を変化させる時に「メリ」「カリ」という言葉を使い、漢字では「沈り浮り」と書きます。

「めりはり」は特に演奏や音声に抑揚をつける時や、演劇などのセリフ回しの強弱をいう時に、よく使われます。日本の伝統芸能である歌舞伎は、セリフ回しに強弱や高低、伸縮などの技術が求められ、まさにこの「めりはり」が重んじられています。

演奏や演劇など「音」に対して使われていた「めりはり」は、次第に比喩的にも使われるようになります。音の高低を指す言葉が「めりはりのきいた体形を目指す」といった言い方にも使われるようになったのですから、おもしろいですね。

雅楽の拍子からきた言葉「やたら」

 

「やたら」とは秩序や節度のないさま、めちゃくちゃ、むやみ、という意味です。漢字では「矢鱈」と書きますが、これは当て字。ではいったいそもそも「やたら」とはどのような語源の言葉なのでしょう。

「やたら」の語源といわれるのが、雅楽の「八多羅拍子」という言葉です。「八多良拍子」「夜多羅拍子」などともいい、2拍子と3拍子を交互に繰り返す5拍子から成るリズムの一種です。テンポが速い拍子で、調子が合わず乱れやすいことから、秩序や節度のないさまをいう言葉になったといいます。

「やたら」を使った言葉には、ほかに「めったやたら/やたらめったら」という言葉もあり、「めった(滅多)」は度を超していることをいって「やたら」を強調しています。「むやみやたら」という言葉もあり、これはむやみを強めた言葉です。

「やたら」という言葉は悪い意味でばかり使われているわけではありません。「やたらじま」という言葉もあり、これは縞模様の一種で、配色や幅が不規則な縞模様のこと。ちょっと粋な雰囲気の言葉ですね。また「やたら漬け」という漬物もあり、こちらは何種類もの野菜を刻んで漬けた漬物のことをいいます。雅楽用語から、漬物や、着物の文様の名前が生まれたわけですから、言葉の歴史は知れば知るほど味わい深いといえましょう。