2018年08月07日

せたがや相談室~夏疲れを癒やす食事や習慣~|第1回「夏バテとはそもそもどういう症状を指すのですか?」

体調がイマイチだな、病院に行ったほうがいいのかな?ちょっとした体の不調は、なかなか人には相談できないもの。そこで今回は、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生を迎え、8月のお悩みテーマ「夏バテ」について、みなさんの質問をもとに、中医学からみた夏バテと健やかに過ごすためのアドバイスをうかがいました。


今回の質問 ・夏バテってそもそもどういうもの?
・どんな症状があるの?

たくさんのご応募をいただきましたが、より多くの質問にお答えするため、まとめて回答させていただきます!今回ご質問をしてくださっためんきち様、伊予の舞姫様、ほかたくさんのご質問、ありがとうございました!

●今回担当の専門家 中垣亜希子 先生
すがも薬膳薬局代表、国際中医師、国際中医薬膳師、管理薬剤師。 薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。 東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

ツライ体をさらにツラくする、夏の3要素があります

夏バテは、体がだるい、食欲がない、下痢や便秘など、夏に起こる体のさまざまな変調を総称するものです。言ってみれば当たり前ではあるのですが、「夏になると不調が出る」ことが、夏バテなのです。

では、どうして夏になるとこんな不調が表れるのでしょうか。中医学では暑さや寒さ、湿気や乾燥などが体に入り込むと悪さをすると考え、体内に入ってくるこれらを「邪気」と呼んでいます。夏バテは、邪気の中でも暑さの「暑邪(しょじゃ)」、湿気の「湿邪(しつじゃ)」、それから冷たい飲食物やエアコンの冷気による「寒邪(かんじゃ)」の3つが大きく影響しています。

むくみやすい人が梅雨の湿気によって、体がさらに重く感じるように、邪気は人の弱点をさらに弱くしたり、もともと弱点がそれほどない人に対しても変調をもたらしたりします。「夏の暑さが胃に来た」なんて言いますが、こういう方の中にはもともと胃弱がひそんでいることもあります。

「不足を補う、過剰は捨てる」で体調を整えます

中医学の治療の大原則のひとつに、「不足を補う、過剰は捨てる」という考え方があります。足りなければ足し、多ければ出して、体のバランスを整えれば健康になるという、とてもシンプルな考え方です。

中医学でバランスを考えるとき、そのひとつに「陰と陽(いんとよう)」を用います。「陽」は“火”のイメージ、「陰」は“水”のイメージで想像してみてください。「陽」が体を温め、「陰」が冷ます、この2つの働きでバランスをとっているのです。「陰」が足りなければ補い、多ければ取り除く、「陽」も同じように調整しながら、健康な状態へと導きます。

夏バテ対策は、まず体質を知ることから

とはいっても、「どちらが足りなくて、どちらが多いのか」の判断は難しいですよね。まずそこを探っていくことにしましょう。
以下が夏バテしやすい代表的な2つのタイプで、体質を知る最初の手がかりになります。

A.カサカサ、イライラ…な潤い不足タイプ

体を潤して冷ます「陰」が足りない人は、喉や鼻や目が乾く、皮膚や髪が乾燥している、胃液・腸液など体液が少なめ…など、潤い不足の症状が表れます。
「陰」は冷却水のように働くので、「陰」が不足すると、冷ます力が弱まり、“ほてり”が生まれることがあります。手や足の平がほてって布団の外に出したり、眠れなかったり…というのがよく聞く症状です。夏以外の季節も寝汗をかきやすく、目がさめると汗が引っ込むという方も、潤い不足によるほてりが考えられます。
風邪でいうと、どちらかというと「のどの痛みから始まるカゼ」をひきやすいタイプです。

B.元気がない、疲れやすい…エネルギー不足タイプ

体を温める「陽」が足りない人は、疲れやすい・だるい・眠くなりやすいなど、気力・体力がない人。ちょっと動くだけでも、動悸・息切れを起こすなど、まさにエネルギー不足といった様子が表れます。このタイプの方は、ちょっと動いただけで汗もかきやすいのですが、汗腺を引き締める力が足りない結果としての汗なので、好ましくないものです。汗をかいた後、すごく疲れた感じがします。
風邪でいうと、どちらかというと「寒気から始まるカゼ」をひきやすいタイプです。

体質×夏で、夏バテの症状が変わってきます

A.Bと大まかに体質を分けましたが、みなさんはどちらに近かったでしょうか。これに夏の「暑邪・湿邪・寒邪」が加わることで、こんな夏バテの症状が表れます。

1. 熱こもり傾向

「暑邪」に襲われると体の中に熱がこもりやすくなります。Aの潤い不足タイプは、特に「暑邪」には注意です。体質的にもともと潤いが少ないため、汗をかくことでますます潤い不足になり、ほてりや乾燥が進みます。
日常的に暴飲暴食してエネルギー過多気味の方、ストレスが多い方、炎症が起きやすい方なども、もともと体内に熱がこもりやすいタイプですが、夏は「暑邪」の影響を受けてさらに熱がこもります。イライラしたり、せっかちになったりするなど、性格にも影響が表れることもあります。

2. 湿気こもり傾向

夏の湿気は体に入ると「湿邪」となり、むくみや四肢の重だるさ、消化不良や胃のもたれ・ムカムカ、下痢、口の中がネバつくなどが、夏バテとして表れます。
特にBのエネルギー不足タイプは、消化器系のエネルギーも不足しているので、胃腸での水分代謝がますますうまくいかず、もともと体内に湿気をこもらせやすい人が多いです。

3. 冷えこもり傾向

夏にはつきものの冷たい飲食の過食やエアコンが「寒邪」となり、冷え症の方はもちろん、そうでない方も体に冷えがこもりがちに。特にBのエネルギー不足タイプは体を温める働きが弱いので、「寒邪」による冷えに弱く、夏なのに冷えがツラくなります。

自分の体質を見極めて夏バテへの対処を

夏バテは、もともとの体質に、「暑邪・湿邪・寒邪」が加わることによってさまざまな表れ方をします。自分は潤い不足なのかエネルギー不足なのか、3つの邪気のうち、特にどれに襲われているのか、まずはよく自分の状態を観察してみましょう。(複数のタイプが当てはまることもあります!)

第2回では「A.潤い不足」と「B.エネルギー不足」の体質改善や夏バテ対処法を、第3回では3つの邪気への対処法をお話します。お楽しみに!

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