2016年04月14日

語源・由来|「胡散臭い」「サバを読む」

ごく普通に使っている言葉でも、どうやってできたのだろう、と思う表現はありませんか? 語源をたどってみると、ユニークな由来がある言葉は多いのです。今回は、なんとなく怪しい、どこか疑わしくて油断できない人や状況を表す「胡散臭い」と、数をごまかす時に使う表現の「サバを読む」の語源をお届けします。


ごく普通に使っている言葉でも、どうやってできたのだろう、と思う表現はありませんか? 語源をたどってみると、ユニークな由来がある言葉は多いのです。今回は、そんな表現をふたつお届けします。

胡散臭い

 

「あの人は胡散臭いのでどうも信用できない」というように、なんとなく怪しい、どこか疑わしくて油断できない人や状況を表す時に用いられる表現です。
「胡散」は怪しい、疑わしいという意味を持ちます。この単語に、断定はできないけれど何となくそんな感じがする、という意味の「臭い」をつけ、「胡散臭い」という形容詞になりました。
「胡散」の由来は諸説あるといわれています。
ひとつは「烏盞(うさん)」という、抹茶茶碗のひとつである天目茶碗(てんもくぢゃわん)に使われる上薬(うわぐすり)が由来という説。天目茶碗はとても高価な焼き物でしたが、その一方で生産地や生産された年代が明らかではなかったそうです。このことから、「烏盞」に疑わしい、偽物くさいという意味がつき、それが転じて「胡散」という単語ができたといわれています。
もうひとつの説は、漢語の「胡乱(うろん)」という言葉が転じたというもの。胡乱は、室町時代に中国から伝えられた言葉といわれ、怪しくて疑わしい、不確実という意味を持ちます。胡乱は中国北方・西方の民族「胡(えびす)」が中国を攻撃した時、中国の住民が慌てふためき混乱が生じたという故事が由来となっているそうです。そのため、当初は「乱雑」という意味を持っていましたが、それが転じて怪しい、疑わしいという意味の言葉になり、さらに変化して「胡散」となったのだとか。
ちなみに「胡散臭い」の由来の一説である「胡乱」の語源となった「胡」は、ユーラシア人の総称ともいわれています。胡椒や胡瓜(きゅうり)、胡桃(くるみ)など、名前に「胡」のつくものは中国西方からシルクロードを通って中国へ伝わったものだそうです。

鯖を読む

数をごまかす時に使う表現です。「彼女は年齢を5歳、鯖を読んだ」のように、主に年齢を実際よりも若くごまかす時に用いられていますが、本来の数字よりも良い数字でごまかす際にも使われます。
この表現は江戸時代から使われており、文字の通り、鯖に由来があります。
鯖は大量に捕れるものの、「鯖の生き腐れ」と称され、外見に変化はなくても腐っていることがあるほど傷みやすい魚です。現在のような冷凍技術がない時代、漁師や魚屋が鯖を数える時は、なるべく鯖が傷まないうちにと早口で数えていました。しかし、そのせいで目分量の適当な数になってしまい、実数と合わないことが多かったそうです。このことから、いい加減に数を数えることを「鯖を読む」といい、これが転じて現在の「数をごまかす」という意味になったといわれています。
まだ車や電車がない時代は、鯖を福井から京都まで「鯖街道」を徒歩で運んでいたそうです。水揚げ後の鯖に塩を振って加工してから運ぶと、京都に着いた頃が食べごろとなっていたことから、日にちを少なくいうことを「鯖を読む」というようになったという説もあります。また、鯖街道で鯖を運ぶ時、傷むことを予想して多めに鯖を箱詰めしたのが由来ともいわれているそうです。

今回取り上げた表現はどちらも歴史が長く、その当時の背景が影響している言葉でしたね。日本語の表現には歴史的背景が色濃く残るものも多いので、語源と同時に歴史を学べる点でも興味深いものですね。