2017年01月26日

語源・由来|漢字の成り立ち「上下」「弓偏」 正反対の意味で同じ成り立ちを持つ漢字

普段よく使う漢字には、意味が正反対でも由来が同じものがいくつかあります。今回は、そんな由来を持つ「上・下」と、弓偏の漢字「強・弱」の成り立ちをひもといていきましょう。


普段よく使う漢字には、意味が正反対でも由来が同じものがいくつかあります。今回は、そんな由来を持つ「上・下」と、弓偏の漢字「強・弱」の成り立ちをひもといていきましょう。

 

上・下

上と下、反対の意味を持つこの二つの漢字は、どちらも「手のひら」が由来になっています。
動物や植物などの形を元に作られている象形文字に対し、「上下」のような形がないものを表すための漢字を指事文字といい、点や線で表現しています。
「上」の横棒は上へ向けた手のひら、「下」の横棒は下へ伏せた手のひらを示しており、どちらも基準は長い横棒。その棒の上下にそれぞれ点を加えて、手のひらからの位置で表現したのが、この上下という漢字の成り立ちです。
ちなみに、指事文字には他に「本」「末」「未」などがあります。これら三つの漢字も「上」「下」と同じように、基準となっている漢字「木」があります。「本」は木の下に点を加えて木の根本を表し、物事の始めを意味しています。「末」は木の上に横棒を加えて木の端、つまり末端にある梢を表し、「未」は木の上に加えた横棒で木に茂った若い枝を表していることから若い、小さい、まだ、という意味を表しているのだとか。

 

弓偏の漢字「強」「弱」

弓という漢字は、文字の形からもわかるように、弓の形を表した象形文字です。そして弓偏の漢字は弓にまつわる物、もしくは弓にかかわる状態や動作を表しています。「強」「弱」の場合も一見弓とは関係なさそうですが、実は弓にまつわる成り立ちがあるのです。
「強」という漢字の成り立ちをたどる前に、まずは「強」から「虫」を除いた漢字「弘」の成り立ちを見ていきましょう。「弘」のつくり「ム」の成り立ちには、弓を射る際に握る部分「握り」に紐を巻きつけて強くした形という説、またはひじを張り出して弓をいっぱいに広げている様子を表しているという説があります。強固な弓を強く弾いた時の音がよく響くことから「広く大きな」という意味に変化、または弓を広げている様子から、「広く大きなこと」という意味になったといわれており、その意味からも男女問わず人名でよく使われている漢字です。
この「弘」のつくりに丈夫な硬い殻を持つ甲虫という意味の「畺(きょう)」を加えたのが、「強」という漢字です。甲虫についてはさまざまな説があり、硬い殻のコクゾウムシという説、または強い糸「天蚕糸(てんさんし)」を生む虫のことを指しているという説など。どちらの場合も、弓を強く丈夫にしているという意味から、「強」という漢字ができたといわれています。

「強」と反対の意味を持つ「弱」にも「弓」が使われており、「弓」の中に点が二つあります。この点は、弓の飾りを表しています。昔、弓は実戦用の武器としてだけではなく、魔除けなどの儀式にも用いられていました。お正月の縁起物として寺社仏閣で授与される破魔矢(はまや)も、破魔弓(はまゆみ)とセットになっていることも。これらの縁起物にも見られるように、儀式で使う弓にも飾りがついているそうです。つまり、「弱」の漢字の元となっている弓は、儀式で使うための弓のこと。このことから、実戦用の弓よりも「弱い」、羽飾りのついた儀式用の弓が二つ連なった様子を表す「弱」という漢字ができたと伝えられています。

いかがでしたか?見慣れた漢字でも、成り立ちを知ると納得できたり興味を持ったりできるのではないでしょうか。