2018年03月22日

間違いやすい日本語|「三寒四温」「火蓋を切る」 本来と違う意味で使われることの多い

桜前線の進み具合や、プロスポーツの試合開幕など、メディアから流れるニュースの内容も春めくこの季節、間違って使われがちな言葉があります。ひとつが気候を表す言葉、「三寒四温」、そしてもうひとつが野球やサッカーなど、優勝に向けて長丁場の戦いが始まるスポーツでの決まり文句ともいえる「いよいよ戦いの火蓋が…」という言葉。いったいどのように誤用されているのでしょう。


桜前線の進み具合や、プロスポーツの試合開幕など、メディアから流れるニュースの内容も春めくこの季節、間違って使われがちな言葉があります。ひとつが気候を表す言葉、「三寒四温」、そしてもうひとつが野球やサッカーなど、優勝に向けて長丁場の戦いが始まるスポーツでの決まり文句ともいえる「いよいよ戦いの火蓋が…」という言葉。いったいどのように誤用されているのでしょう。

どの季節を表す言葉?三寒四温

 

昨日は暖かかったのに、今日は凍える寒さ…。日によって寒暖の差が激しい時期によく使われる言葉が「三寒四温」です。4日暖かい日が続くと3日寒い日が続き、また暖かい日が訪れる…というように、7日の周期で寒暖が繰り返されることをいいます。

では、この「三寒四温」はいつの季語でしょう?

1.春
2.冬

答えは、2の「冬」。

春が近づく2月~3月の気候のことを実によく言い当てた言葉…と思われがちですが、実は「冬」の季語。暦のうえで春となる「立春」(2月4日頃)以降に使うのは、本来正しくないともいわれます。そのうえ、この言葉、実は日本発祥の言葉ではないのです。

「三寒四温」はもともと、中国北東部や朝鮮方面での天気にまつわることわざ。朝鮮半島や中国北東部では、冬に3日寒い日が続くと4日暖かい日が続く、といった天候が規則的に繰り返されます。これはシベリア大陸上に発達した高気圧が、ほぼ7日の周期で強まったり、弱まったりするために起こるそう。

日本では、シベリア高気圧の影響による、冬の「三寒四温」は起こりにくいといわれます。ですが、立春以降の寒暖差がはっきりとしてくる時期を感じやすいために、本来の意味とは違った意味で使われがちなのです。

気候に関する言葉のなかには、ほかにも間違った時期に使われがちなものがあります。たとえば、「小春日和」は晩秋から初冬にかけて、春のように穏やかな暖かい日をさす言葉ですが、春の気候を表す言葉と誤解されることも多いですし、「五月晴れ」も、本来6月頃の梅雨の晴れ間をさす言葉ですが、5月の晴天の日をさして使われることがあるようです。

 

「切って落とす」の正しい使い方 火蓋を切る

 

戦いや競争を開始する際に、
「戦いの火蓋が切られた」
という言い回しをすることがあります。では、
「戦いの火蓋が切って落とされた」
という言い方は○でしょうか? ×でしょうか?

1.○
2.×

一見、おかしくないようですが、答えは、「×」。

「火蓋」とは「火縄銃」の火皿の火口を覆うふたのことです。そして「切る」には「封を切る」のように「ふさがっているものや閉じたものを開ける」という意味もありますし、「口を切る」のように「際立った、思いきった行為・動作をする」ことも「切る」といいます。もともとは、この「火蓋」を開いて点火の準備をする、また発砲することを「火蓋を切る」といい、転じて、戦いや競争を開始することをいうようになりました。

ところが、時折聞かれるのが「火蓋を切って落とす」という誤用。これは「幕を切って落とす」の混用といわれています。ですから「戦いの火蓋が切られた」を「落とす」という言葉を使って言い換えるなら、「戦いの幕が切って落とされた」というのが正解。

ちなみに、「幕を切る」とは「幕を開く」「幕を上げる」と同意で、「幕を開けて芝居などを始める」ことから転じて「物事を始める」という意味になります。「火蓋を切る」と「幕を切る」、近い言葉ですが、「幕」のほうは「時代の幕開け」など、物事全般をさし、火蓋は「戦い」をさすときに使うという違いがあります。誤用を避けつつ、うまく使い分けたいですね。