2017年07月13日

語源・由来|「むちゃくちゃ」「ちゃらんぽらん」 音から生まれた言葉

日本語には響きやリズムの心地よい言葉がたくさんあります。音のつながりが可愛らしい「むちゃくちゃ」や「ちゃらんぽらん」も、その中のひとつ。今回は、よく使われるこの2つの言葉をご紹介します。


日本語には響きやリズムの心地よい言葉がたくさんあります。音のつながりが可愛らしい「むちゃくちゃ」や「ちゃらんぽらん」も、その中のひとつ。今回は、よく使われるこの2つの言葉をご紹介します。

むちゃくちゃ

 

「むちゃくちゃ」には「常識外れで乱暴な」というような意味があり、比較的よく使われる言葉ではないでしょうか。漢字にすると「無茶苦茶」となり、客人にお茶を出さない「無茶」や、出しても「苦茶」だったりするような非常識な様を表していますが、実はこの「無茶苦茶」は音に漢字を当てた字です。漢字の意味がぴったりなので、当て字だったとは驚きですね。

「むちゃくちゃ」の「むちゃ」の語源は、仏教用語の「無作(むさ)」であるといわれています。「無作」とは、まったく手の加わっていない自然なもの、不格好である、という意味。この「むさ」の発音が変化していき、「むちゃ」になったのだとか。続く「くちゃ」は、「むちゃ」からの韻を踏んだ後付けの音であり、「くちゃ」自体には意味はありません。ただ、「くちゃ」と続けることによって、「むちゃ」の意味が強調されるという役目を果たしているようです。

他にも「無作」から始まった言葉には、「むさくさ」や「むしゃくしゃ」や「むさ苦しい」などあります。同じ語源でも、長い年月を経て発音などが少しずつ変化して、複数の言葉ができたようです。

ちゃらんぽらん

 

「ちゃらん」「ぽらん」は、それぞれ語尾に「ん」がつく韻を踏む語感がいい言葉ですよね。ものごとを適当にこなしたり、いいかげんで無責任な様子を意味する「ちゃらんぽらん」は、日本の俗語であり、実は正しい言語ではありません。俗語とは、公的に使われない隠語であり、ある種の地域やグループによって作られた言葉を指します。
もともとの言葉は「ちゃらほら」で、「ちゃら」と「ほら」が撥音化し、語尾に「ん」がついたことから「ちゃらんぽらん」になったといわれています。それでは、「ちゃら」と「ほら」に分解して、それぞれ由来を見ていきましょう。

「ちゃら」は、でまかせやいい加減な態度や発言のことをいいます。江戸時代から使われており、現代でもよく耳にする俗語です。例えば、勘定などをなかったことにするという意味で「ちゃらにする」、または、口先だけのお世辞という意味で「おべんちゃらを言う」など。最近では、いいかげんで軽そうな外見や態度を指す「ちゃらちゃらしている」を略した「チャラい」という言葉も流行りました。

「ほら」は、「ホラを吹く」に由来します。この「ホラ」は「ホラ貝(法螺貝)」のことで、ホラ貝は昔、軍隊での合図に鳴らされたり、山中での獣除けや、仲間との連絡に使われていた道具です。見た目よりも大きな音が出ることから、「大げさな」や口ばかりの「嘘」という意味合いを持つようになりました。
このことから、現代では「ホラを吹く」ことは「嘘をつく」というネガティブなイメージですが、ホラ貝は神聖な法具としても使われ、仏教では説法が遠くまで届くよう、仏様の持ち物にもなっていました。そのため、本来は「嘘をつく」という意味ではなく、事実や伝えたいことをより遠くへ届けるために大きな声で伝えるという意味だったといわれています。

ちなみに、“ホラ吹き”が “大ぼら吹き”になると、違った意味を含むのもおもしろいところ。大ぼら吹きは夢語りともいわれ、大きなロマンや大志を持った人を表す言葉にもなります。「大」が付くことで、ニュアンスがガラリと変わるのも、日本語ならではの奥深い一面ではないでしょうか。

韻を踏んだリズミカルな言葉である「むちゃくちゃ」と「ちゃらんぽらん」は、共にルーツは古いものですが、現代でもとてもよく使われているなじみ深い日本語になっています。それぞれの語源や言葉の成り立ちを知ることで、使うのが楽しい言葉になりそうですね。