2024年03月15日
日本人にとって身近な桜。実は、桜の種類は数百種にものぼることをご存じでしょうか。広く知られる品種に「ソメイヨシノ(染井吉野)」、「ヤエザクラ(八重桜)」、「シダレザクラ(枝重桜)」などがありますが、その他は、あまりなじみがないのではないでしょうか。今回は、名前は知られていなくても、街角や観光地などに咲く桜をご紹介します。
ヤマザクラは、野生種のひとつで日本固有種となります。古来より存在し、ソメイヨシノが有名になるまでは、この桜がお花見の主役でした。お花見の名所である奈良県の「吉野の桜」といえば、このヤマザクラ。野生種であることから個体差も大きく、花の色は白っぽいものからピンクまで幅広いのが特徴です。葉と花が同時に見られるのもこの品種ならではで、赤っぽい若葉は花の色と相まって、春の山々を美しく染めてくれます。
エドヒガンは、1,800年前に日本武尊(やまとたけるのみこと)がお手植えされた日本最古の桜といわれている品種です。本州、四国、九州に分布する野生種であり、その名の通り、春の彼岸の頃に他の桜に比べいち早く咲き始めます。東京エリアで多く栽培され、彼岸の頃に開花することから、江戸彼岸と名付けられました。葉より先に花を咲かせ、山のようにこんもりとした樹形が特徴で、樹齢が数百年から千年以上と、長寿な品種としても知られています。
カンヒザクラは、桜の定番ソメイヨシノが存在する南限が鹿児島県であるため、沖縄の花見といえばこの品種となります。早咲き桜のひとつで、石垣島や久米島などあたたかい地方原産であり、他品種のように寒くなくても咲きます。ポピュラーな桜とは違い、鮮やかなピンク色の花が下向きで咲く姿を目にすることができます。寒い時期から濃い紫紅色の花を咲かせることから、この名がつけられました。
カワヅサクラは、1950年頃に野生していたものを静岡県河津町の飯田典延邸に移植したのが始まりとされています。カンヒザクラとオオシマザクラが自然交配されて生まれた品種です。カンヒザクラのもつ濃いピンクの花で早咲き、オオシマザクラのもつ大輪という特徴を受け継ぎ、目をひく華やかな印象。本州から九州まで各地に移植されていることから全国に名所が多く、2月下旬頃からその姿を楽しめます。
ケイオウザクラは、お正月飾りなどでひと足早い春を運んでくれる「冬の桜」として、広く親しまれています。山形県では1965~1970年頃、全国に先駆け促成栽培をスタートしました。雪のなかで育った桜から花芽を多数つけた枝を切り出し、ハウス内の寒さとあたたかさを巧みに調整することで、真冬に満開の桜を楽しめるように導きます。たくさんの薄紅色の花を咲かせた姿は、春を告げる凛としたたたずまいが魅力です。
古来より日本人に深く親しまれている桜。品種がたいへん多いのにも関わらず、広く知られているのは定番の限られた種類にとどまっています。桜の季節を機に、知らなかった品種や花の色・形の異なる姿にも目を向けてみませんか。新たな発見や出会いにきっと癒やされるはずです。