2016年12月09日

間違いやすい日本語|「破天荒」「確信犯」 正しいと思っていた意味が、実は間違っていた!?

意味をわかって使っていたはずなのに、本来の意味とは違っていた、という経験はありませんか?今回は、使い方を間違えやすい二つの言葉「破天荒」と「確信犯」の正しい使い方をご紹介します。


意味をわかって使っていたはずなのに、本来の意味とは違っていた、という経験はありませんか?今回は、使い方を間違いやすい二つの言葉「破天荒」「確信犯」をご紹介します。

 

破天荒

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:彼の破天荒な生活ぶりは見ていられない
2:破天荒な研究が、大きな成果を残した




型破りな、または乱暴で豪快といった意味でよく使われる「破天荒」。この言葉を聞いて、否定的な意味に捉える方は多いのではないでしょうか。しかし、本来「破天荒」は誰も成し得なかった、前人未到の、というポジティブな意味で使われる言葉なのです。つまり、正解は「2」です。
この言葉の由来は、中国・宋の時代の説話集「北夢瑣言(ほくむさげん/ほくぼうさげん)」に記された故事にあります。当時、中国にはエリート官僚選抜のための「科挙(かきょ)」という官僚登用試験がありました。科挙はかなりの難関といわれた試験で、合格率も10~20%程度だったようです。
現在の中国・湖北省(こほくしょう)一帯にあたる荊州(けいしゅう)という土地では、100年以上も科挙の合格者が出なかったため、荊州は「天荒」(未開の土地という意味)と言われていたそうです。そんな中、ある年の科挙で劉蛻(りゅうぜい)という人物が荊州で初めて科挙に合格しました。この様子を「天荒を破った」という意味で「破天荒」と呼んだのが、この言葉の由来といわれています。
しかし破天荒という言葉は、語感や漢字の意味から「荒れ狂った」というイメージを受けやすいためか、現在は悪い意味で型破りな、豪快なという意味でよく使われています。平成20年に行われた国語に関する世論調査によると、なんと64.2%もの人が誤った意味で使用しているそうです。

 

確信犯

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:その事件の犯人は確信犯だった
2:彼女が約束をすっぽかしたのは確信犯だ




悪いこと、または迷惑がかかることをわかった上で行動する人のことを「確信犯」であると認識している人が多いのではないでしょうか。しかし確信犯とは、思想などの信念に基づいた上で、正しいと確信して行ったことが犯罪であったこと、またはその行為をした人を表す言葉です。ですから正解は「1」です。
確信犯の正しい意味には、悪いと知った上での意図的な犯罪ではなく、あくまでも正しいことを行ったけれど、結果的にそれが犯罪であったというニュアンスが含まれています。一方「2」では、悪いことと知っていて行ったという反対の意味になります。
確信犯とはもともと、ドイツの刑法学者・ラートブルフが提唱した概念に基づいた法律用語を、日本語訳したもの。法律用語のため、本来は正しいと確信して行ったことが犯罪であった時に使われる言葉なのです。
データ上でも、「2」の意味で使っている人が非常に多いことがわかっています。平成27年の国語に関する世論調査では、69.4%もの人が誤った意味で認識しており、平成14年の同調査から1割以上も増加していることが明らかとなっています。この誤用の原因としては、本来の意味に含まれる「ある思想、信念に基づいて」という意味が抜け、「犯罪」という意味のほうが強く出てしまったことが考えられます。

「破天荒」「確信犯」、どちらの言葉も、誤った意味で使っていた方が多かったのではないでしょうか。このように、もともとの意味とは異なる意味で使われているケースは案外多いようです。