今回は人の感情やふるまいにまつわる言葉から、間違いやすい言葉をご紹介します。うっかり誤った使い方をして、言いたいことも伝わらない――とならないように、覚えておきましょう。
2019年03月15日
人の感情やふるまいにまつわる言葉から、間違いやすい言葉をご紹介します。うっかり誤った使い方をして、言いたいことも伝わらない――とならないように、覚えておきましょう。今回は「ぞっとしない」と「琴線に触れる」の正しい意味や使い方をご紹介します。
今回は人の感情やふるまいにまつわる言葉から、間違いやすい言葉をご紹介します。うっかり誤った使い方をして、言いたいことも伝わらない――とならないように、覚えておきましょう。
「ぞっとしない話だ」などと使う「ぞっとしない」という言葉は、使われることが少なくなった言葉でもあり、近年、意味を間違えてとらえている人が増えているようです。平成18年に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」で次のような問題が出されました。
実は「ぞっとする」は、恐怖に体が震える時によく使われる言葉ではありますが、寒さで震える時にも使われ、さらにもうひとつ別の使われ方があるのです。
「ぞっとするほどの美人」という言い回しを聞いたことはありませんか。「恐ろしさに身の毛がよだつほどの美人」ということではありません。ここでいう「ぞっとする」は、美しいものに出会ったりして「強い感動が身体の中を通り抜けるさま」を言うのです。「ぞっと」は背筋が震えるような心地のことではありますが、その原因は感動という場合もあり、恐ろしさに限って使う言葉ではありません。そう知ると、「ぞっとしない」が、「それほど感心したり、面白いと思ったりするほどでもない」という意味で使われるのも納得ですね。
「ぞっとしない」の用例をもうひとつご紹介しましょう。夏目漱石の『草枕』には、髪結い床で髭を剃ってもらおうとした主人公が、水にちょっと浸しただけの薄っぺらな石鹸をそのまま顔に塗りつけられるという描写が出てきます。「裸石鹸を顔へ塗りつけられた事はあまりない。然もそれを濡らした水は、幾日前に汲んだ、溜め置きかと考えると、余りぞっとしない。」
いかがでしょう。面白くないと顔をしかめる主人公が目に見えるようです。こうした場面で「恐ろしくない」という感想はでないですよね。「ぞっとしない」は慣用的に「いい気分がしない」とか「感心しない」という意味で使われるというのがよくわかるのではないでしょうか。
「琴線に触れる」という言葉があります。この言葉、どのような意味でしょうか。早速、クイズにいってみましょう。
誤った使い方としては、人を不愉快にさせたことを「私の余計な一言が、彼の琴線に触れてしまったようだ」という言い方があげられます。この場合は「彼の気に障ったようだ」が正しい言い方です。また、「琴線に触れる」と似ていながら、怒りを買う意味で使われる言葉に、「逆鱗に触れる」があります。逆鱗とは、竜のあごの下にある、一枚だけ逆さまについた鱗のこと。この鱗に触ると、おとなしい竜も怒ることから、「逆鱗に触れる」は「目上の人を激しく怒らせる」ことを指します。実は「逆鱗に触れる」も使い方を誤りやすい言葉のひとつ。自分や目下の人を怒らせた時に使うのは適切ではありません。琴線も逆鱗も、触れ方、使い方にはよくよく注意が必要ですね。