2016年09月29日

間違いやすい日本語|爆笑・煮詰まる

日頃当たり前のように使っている表現でも、本当の意味を実は知らないという表現は多いものです。今回は、日常会話によく登場する表現で、意味を取り違えられやすい「爆笑」と「煮詰まる」の二つをクイズ形式でご紹介します。


日頃当たり前のように使っている表現でも、本当の意味を実は知らないという表現は多いものです。今回は、日常会話によく登場する表現で、意味を取り違えられやすいものを二つご紹介します。

 

爆笑

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:一人でお笑い番組を見ながら爆笑した
2:パーティーの余興で出席者全員が爆笑した




一見、同じような意味で使われているようにみえる「爆笑」という言葉。どちらも、大笑いをしたというニュアンスを含んでいます。しかし、この二つの文章は笑っている場所や状況が異なります。
「爆笑」とは、大勢の人が笑うという意味。ですから、正しい使い方は「2」です。さらに大きい規模で笑う様子を表す場合には、「大爆笑」を使います。
「爆笑」には大勢の笑いという意味も含まれていますので、「一人で爆笑する」という表現は間違い。つまり一人の場合は、「大笑いした」が正しい使い方です。
しかし、最近は「爆笑」の「大笑い」という意味のみが一人歩きをしているため、「一人で爆笑した」という表現もまかり通っています。「爆」という漢字には、「ものすごく」や「大変」という強調の意味もあるため、一人であっても大勢であっても、大笑いをすることを「爆笑」と表現することに違和感がないのかもしれません。場合によっては、誤用と知りながらも笑っているシチュエーションを強調するために、あえて使用されることもあるようです。
似たような誤用として、「失笑」という言葉があります。「失笑」とは本来、こらえきれずに笑ってしまうという意味の表現。しかし最近は、笑いが出ないほどあきれるという意味で多用されており、平成23年度「国語に関する世論調査」によると、約6割もの人が誤用しているという結果が出ています。

 

煮詰まる

次のうち、正しい使い方はどちらでしょう?

1:仕事がなかなか進まずに煮詰まってきた
2:長時間の話し合いの末、結論が煮詰まってきた




「煮詰まる」という表現の由来は、煮物料理で煮汁がなくなるまで煮込んだ、煮物がほぼ完成した状態のこと。その様子が転じて、会議などの場で十分に話し合いが行われた末にそろそろ結論が出る、または結論が出たという意味になったといわれています。ですから正解は「2」です。
「煮詰まる」は納得するまで話し合って結論が出る様を表しているため、本来は話し合いの出口が見えたという良い意味を含む表現。しかし実際には、状況がなかなかうまく進まずに滞っているなど、あまり良くない状況で使われることもあります。似た表現の「行き詰まる」と混同されたり、煮物を煮過ぎて失敗したというマイナスイメージが否定的なニュアンスを与えているという説もあります。特に若い世代には誤用の方が広まっているといわれ、平成19年度「国語に関する世論調査」では、若い世代と年配世代では真逆の意味で捉えられていることが明らかになりました。さらに平成25年度の同じ調査では、誤用の方が正しいと選択した人が増加し、本来の意味を認識している人が減少している傾向もみられています。そのため、異なる世代の人と会話をする時に意味の行き違いが起きていることもあるそうです。
誤用であったはずの意味でも、現在では正しい意味のように広く浸透しており、「広辞苑」の最新版である第六版には「煮詰まる」の意味として「結論が出る」、そして「行き詰まる」の両方が掲載されています。

誤った使い方でも広く浸透していくと、辞書に掲載されるほど一般的な意味に変わることもあるのは、かたちを持たない言葉ならではですね。