2016年01月14日

間違いやすい日本語|汚名を返上する・怒り心頭に発した・白羽の矢が立った

日常で当たり前のように使っている日本語のなかにも、「間違った日本語」は潜んでいます。 特に誤用されることが多い慣用句でも、今回は「汚名を返上する」・「怒り心頭に発した」「白羽の矢が立った」をご紹介します。では、正しい用法を二択から選んでみてください。


日常で当たり前のように使っている日本語のなかにも、「間違った日本語」は潜んでいます。 こちらでは、特に誤用されることが多い慣用句をご紹介していきます。では、正しい用法を二択から選んでみてください。

ようやく
A汚名を挽回する
B汚名を返上する
ことができた
 

悪い評判を取り去るという意味で使われる言葉。しかしこの二つの表現は、実は意味が大きく異なります。

悪い評判を持ってしまったことを「汚名を着せられた」と表現するように、「汚名」とは不名誉なことや悪い評判のこと。「返上」は受け取らない、または返すという意味です。この二つの単語を組み合わせたのが、新たな成果を出して悪いイメージをなくし、これまでの悪い評判を退けることを表す「汚名を返上する」という言葉なのです。ということで、正解はBになります。

「挽回する」は、失ったものを取り戻す、元の状態へ戻すという意味を持ちます。つまり「汚名を挽回」するということは、不名誉な評判を取り戻すという意味になってしまうのです。これは、「汚名返上」と似た意味である「名誉挽回」と混同した結果の誤用ではないかといわれています。

しかし最近では、「汚名を挽回する」は必ずしも誤用ではないという専門家の意見も。「挽回」には「巻き返す」という意味もあり、悪い評判を巻き返すという意味として利用するのなら誤りではない、という解釈ができるからです。

部下の失敗により、上司は
A怒り心頭に発した
B怒り心頭に達した

心の底から怒った時に使われる言葉。「心頭」は、ことわざの「心頭滅却すれば火もまた涼し」でも使われており、「心の中」という意味を持ちます。つまり「怒り心頭」は怒りが心からこみ上げる、という状態を表しています。「心から発する怒り」ということから、動詞を加えて「怒り心頭に発する」という表現になるので、Aが正解。また、「彼は怒り心頭だ」のように、激怒している様を表すため、略して使われることもあります。

怒りを表す際に「達する」を使用する例として、「怒りが頂点に達する」があります。間違えて覚えていた方は、この表現と混同してしまったのではないでしょうか。

責任者として、友人に
A白羽の矢が当たった
B白羽の矢が立った
 

弓矢は古来より、占いや呪いの道具として使われてきました。白羽の矢は、神への生け贄となる人物の家に目印として「立てられた」と伝えられており、箱根・芦ノ湖の九頭竜伝承をはじめとして、さまざまな白羽の矢の伝説が日本各地に残されています。

このような由来がある言葉のため、「当たった」が間違いであることがわかりますね。というわけで、正解はBの「白羽の矢が立った」になります。

さらに、白羽の矢は「生け贄の目印として使われた矢」なので、本来は犠牲となる人物が選び出されたという状態を表しているのです。

しかし現在では、「犠牲」という意味が薄れ、「次期代表として白羽の矢が立った」のように、大勢の中から選び出された優秀な人物を指すという、肯定的な表現として多く使われています。

「間違えやすい日本語」のなかには、本当は間違っていたはずなのに正しい用法として使われている、また、長い年月のなかで本来の意味が変化している言葉も多く存在します。日本語を正しく使いこなすのは、日本人であってもなかなか難しいということなのかもしれませんね。