2018年09月21日

間違いやすい日本語|「舌を鳴らす」「舌鼓を打つ」 舌にまつわる言葉

「舌を巻く」「舌が回る」「舌先三寸」などなど「舌」にまつわる言葉は多いですね。食べたり味わったりする器官ですが、もうひとつ、重要な役割が「発音」です。気持ちを外に向けて表現する器官なだけに、「舌」を使った言葉にはさまざまな意味が込められているようです。今回はそんな「舌」にまつわる「舌を鳴らす」「舌鼓を打つ」の二つの言葉をご紹介します。


「舌を巻く」「舌が回る」「舌先三寸」などなど「舌」にまつわる言葉は多いですね。食べたり味わったりする器官ですが、もうひとつ、重要な役割が「発音」です。気持ちを外に向けて表現する器官なだけに、「舌」を使った言葉にはさまざまな意味が込められているようです。

おいしいこと?不満なこと? 「舌を鳴らす」「舌鼓を打つ」

 

「舌を鳴らす」という慣用句があります。舌を上あごにあててはじき鳴らすことを言うのですが、これはどのような気持ちを表しているのでしょう。

問. 「舌を鳴らす」とは、どんな気持ちを表しているのでしょう?

1. 不満や軽蔑、不愉快な気持ちを表す動作
2. 感嘆する動作。特に、おいしい物を味わった満足感を表す動作
3. 1と2の両方
答え 正解は3の「1と2の両方」です。
一般的には、1の「不愉快な気持ちを表す動作」として使われることが多く、小説や漫画などでも「チッ」とか「チェッ」といった擬音で「舌打ち」している様が描写されることがよくあります。ですが、注意したいのは、「舌を鳴らす」「舌打ち」ともに、必ずしも「不愉快」を指す言葉ではないということ。感嘆の意味にも使われ、「ごちそうに舌を鳴らす」といった表現も正しいのです。

それでは続けてもうひとつ。

問. 「舌鼓を打つ」は、どのような意味でしょうか。

1. おいしい物を味わった満足感を舌で鳴らして表すこと
2. 不愉快な気持ちを舌を鳴らして表すこと
3. 1と2の両方
答え 正解は、こちらも3の「1と2の両方」なのです。
一般的には、「舌鼓を打つ」といえば、おいしい物を味わった満足感を表すことが多いようです。「里山の美味に舌鼓を打った」などと使います。ですが、こちらも「(不愉快さに)舌鼓を打ちたい気分になった」といった使い方もされるのです。

上あごを舌ではじいて出せる音にはさまざまな種類があります。チッという不満な舌打ちから、コーンという感嘆の音など多彩で、そのときどきの気持ちのニュアンスを容易に込められます。「舌を鳴らす」という1つの言い回しが、「感嘆」と「不満」と、相反する2種類の気持ちの表現となっているのがおもしろいところ。音の表現方法の豊かさを人が持ち続けてきたゆえでしょう。ちなみに、舌を鳴らす表現は、日本人だけのものではありません。国や文化によって、その意味は大きく異なります。国によっては、感動したときや、ほめるときに舌を鳴らしたり、相づちがわりに舌を鳴らすこともあります。海外では特に、舌打ち=不満とは限らないことを覚えておきましょう。
 

最後に、「舌鼓」ということば、どのように読んでいますか? 「鼓」は日本の伝統的な打楽器で「つづみ」と読みます。舌(した)+鼓(つづみ)ということで、読み方は「したつづみ」が正解です。ただし、「したづつみ」という読み方も慣用的に使われ、定着しているため、現在多くの辞書では両方の読み方を載せています。同様に満腹なことを「腹鼓を打つ」と言います。「狸の腹鼓」などとも言いますね。こちらも「はらつづみ」が正確な読み方ですが、慣用的な「はらづつみ」という読み方も許容されつつあります。時代に合わせて言葉は変わっていくものですが、言葉の背景にある文化も抑えて、正確な読み方を覚えておくといいですね。