2018年08月31日

間違いやすい日本語|「うがった見方をする」「失笑」 実はネガティブなニュアンスはない言葉

言葉の使われ方は、時代とともに変わるものですが、とりわけインターネットが身近になり、一般の人が発する言葉が誰にでも届くようになった今、その変化のスピードは増しているといえるかもしれません。今回は、もともとネガティブな意味合いのない言葉なのに、昨今、意味がゆがめられて使われやすい「うがった見方をする」と「失笑」をご紹介します。


言葉の使われ方は、時代とともに変わるものですが、とりわけインターネットが身近になり、一般の人が発する言葉が誰にでも届くようになった今、その変化のスピードは増しているといえるかもしれません。今回は、もともとネガティブな意味合いのない言葉なのに、昨今、意味がゆがめられて使われやすい言葉をご紹介します。

「穿つ(うがつ)」の意味を深堀りすれば うがった見方をする

 

「君はうがった見方をするね」、と言われたら、どんな気持ちになるでしょう。ショックでしょうか、それとも誇らしい気持ちがするでしょうか。次に紹介するのは、平成23年度の「国語に関する世論調査」で出た設問です。

問.「うがった見方をする」とは、どのような意味でしょうか?

1. 物事の本質を捉えた見方をする
2. 疑って掛かるような見方をする



答えは、1の「物事の本質を捉えた見方をする」です。
2と思った方が多かったのではないでしょうか。実は、「国語に関する世論調査」で正答した人は26.4%しかおらず、2の「疑って掛かるような見方をする」を選んだ人が48.2%と多数だったのです。さらには、20%の人がこの意味を「わからない」と答えました。なんと7割近くの人が、正しい意味を知らない言葉なのです。ほめるつもりで「君はうがった見方をするね!」と言って、相手が傷つく……という可能性もあるということです。

「うがった」は漢字で「穿った」と書きます。「穿つ」は「雨だれが石を穿つ」というように、穴をあける、貫き通す、といった意味ですが、それが「物事を深く掘り下げる」といった意味に転じて、「物事の本質をうまく的確に言い表す」という意味も持つようになりました。「彼の話は真相を穿っている」といった使い方もします。

音が似ているだけで「穿った」には「疑った」の意味はありません。ネガティブな意味合いではないことは覚えておきたいですね。

うっかりに注意 失笑

 

笑いにもさまざまな種類があります。微笑、爆笑、苦笑、冷笑、嘲笑、失笑などなど。さて、この中で「失笑」という言葉の意味、正しく知っていますか?

問.「彼の行為を見て失笑した」という場合、失笑はどのような意味でしょうか。

1. こらえ切れず吹き出して笑う
2. 笑いも出ないくらいあきれる



答えは、1の「こらえ切れず吹き出して笑う」です。
これは平成23年度の「国語に関する世論調査」で出された設問です。失笑とは、思わず笑い出してしまう、おかしさのあまり噴き出すという意味になります。特に、本来なら笑ってはいけないシチュエーションで、こらえられずに笑ってしまうようなことを指します。ですが、調査では、2の「笑いも出ないくらいあきれる」と誤答した人がなんと60.4%。正答者は27.7%しかいなかったのです。

失笑は笑いも出ない、といった状況で使われる言葉ではありません。「失」には、なくすという意味のほかに、しくじる、あやまつ、という意味があります。うっかりしたものいいを指す「失言」とか、あやまって火事をおこす「失火」といった言葉があるように、失笑も、うっかり笑ってしまうことなのです。

一方で、「失笑を買う」という慣用句になると、愚かな言動で笑われることを指します。そこには「あきれる」というニュアンスが加わりますから、2の意味に近づきます。こうした慣用句のイメージから、失笑が、あきれて笑いもでない、という間違った意味でとらえられるようになったのかもしれませんね。