2018年04月05日

当て字|「おてんば」「かるた」 オランダ語・ポルトガル語由来説のある言葉

日本の中世から近世にかけて重要な貿易相手国であったオランダやポルトガルからは、様々な欧州の言葉と文化が流入しました。外国の言葉を日本に定着させようと、漢字が当てられ、それらは今では昔からある日本語のように使われるようになっています。今回は、オランダとポルトガルからやってきた言葉が由来という説の「おてんば」と「かるた」の当て字をご紹介します。


日本の中世から近世にかけて重要な貿易相手国であったオランダやポルトガルからは、様々な欧州の言葉と文化が流入しました。外国の言葉を日本に定着させようと、漢字が当てられ、それらは今では昔からある日本語のように使われるようになっています。今回は、オランダとポルトガルからやってきた言葉が由来という説のある当て字をご紹介します。

オランダ語説と日本語説とがあり「おてんば」

 

「おてんば(お転婆)」とは、若い女性や女児が、しとやかさに欠け、活発に行動することや、そのようす、そのような娘をさします。「おきゃん(御侠)」も同じ意味です。

この言葉の語源、実はいくつか説があり、正しい説ははっきりとはわかっていません。そのなかで有力とされる候補のひとつが、オランダ語の「慣らしにくい、御しがたい」という意味の「ontembaar(オンテンバール)」が語源という説です。

「お転婆」
オンテンバール / ontembaar

ontembaarには他に「野生の」とか「負けん気の」といった意味もあります。このオランダ語が「おてんば」となり、「お転婆・御転婆・於轉婆」の字が当てられたといわれています。

オランダ語語源説の対として、語源を日本語の「てんば」という言葉に求める説もあります。
「おてんば」は18世紀の中頃から使われているのですが、それより早い18世紀初頭には、同様の意味の「てんば」という言葉がすでに使われていたというのです。「てんば」の意味は、おてんばと同様、「つつましくない女」という意味で使われたり、男女を問わず「しくじること、粗忽であること」「親不孝で従順でない子」といった意味で使われていました。この「てんば」に接頭語の「お」がついて、「おてんば」になった、という説です。

他にこんな説もあります。江戸時代、宿場には人や荷物の輸送用の馬が置かれていました。その中でも公用にあたる馬を「御伝馬(おてんま)」といい、荷駄馬と比べて御伝馬は常に勢いよく跳ね回るところから、お転婆の語源になったという説。さらに、女の子の出しゃばって足早に歩く様子を「てばてば」といい、それに接頭語の「お」を付けて、「おてば」と言ったことが語源という説などがあります。

正しい由来ははっきりしませんが、オランダ語の「御しがたい、負けん気」の音と、日本語の「つつましくない、従順でない、活発な」という意味の語の音が偶然似ていたのだとしたら、おもしろいことですね。

ポルトガル語が由来「かるた」

 

日本のお正月の遊びとしてなじみ深い「かるた」。実は、ポルトガル語が語源なんです。

「歌留多」
カルタ /  carta

ポルトガル語で「手紙」や「カード」を意味する言葉が「carta」です。cartaは元々、南蛮文化のひとつとして日本に入ったカード遊びで、16世紀後半にポルトガル人によって伝えられ、流行した「天正かるた」、江戸時代の初期に同じくポルトガル人によって伝えられ、今でも熊本県人吉市に伝統的な遊びとして伝わる「うんすんかるた」などが知られています。江戸時代中期には今も子どもに遊ばれる「いろはがるた」が生まれています。

「かるた」には、「歌留多」「加留多」「嘉留太」「骨牌」など、さまざまな字が当てられています。先に紹介した3つは、ポルトガル語の音写ですが、「骨牌」だけは違います。中国の象牙や獣骨、角などで作った札のゲームを「骨牌(こっぱい)」というのですが、この漢語をそのまま当てはめたものです。

ポルトガルから入ったカードゲームは、日本に古くからあった「貝合わせ」などと融合して、文字札と絵札に分けて札をとりあう「かるた」として独自の発展を遂げます。そのルールのわかりやすさとおもしろさで、かるたは現代にいたるまで、小さな子どもから大人まで、幅広い人々を楽しませているのです。