
郷土料理:秩父地方の保存食 しゃくし菜漬け(埼玉県)
しゃくし菜漬けはアブラナ科の植物で、チンゲンサイの仲間でもある「雪白大菜(セッパクタイサイ)」を漬けたものです。秩父地方では、タイサイの形がしゃもじ(飯じゃくし)に似ていることから「しゃくし菜」と呼ばれています。 野沢菜漬けやキムチのように、塩だけでなく乳酸発酵も利用して漬けられる点や、塩分控えめで酸味がある点が特徴です。今回は、しゃくし菜漬けの概要や栄養、おすすめの食べ方についてご紹介します。

埼玉県秩父地方で伝統的に作られてきた青菜の漬物、しゃくし菜漬け。野沢菜漬けなどと似た見た目ですが、より塩分控えめで、ほどよい酸味がおいしい一品です。今回は、しゃくし菜漬けの概要や栄養、おすすめの食べ方についてご紹介します。
しゃくし菜漬けとは
■しゃくし菜(タイサイ)を漬けた埼玉県秩父地方の郷土食

しゃくし菜漬けはアブラナ科の植物で、チンゲンサイの仲間でもある「雪白大菜(セッパクタイサイ)」を漬けたものです。秩父地方では、タイサイの形がしゃもじ(飯じゃくし)に似ていることから「しゃくし菜」と呼ばれています。
野沢菜漬けやキムチのように、塩だけでなく乳酸発酵も利用して漬けられる点や、塩分控えめで酸味がある点が特徴です。
乳酸発酵の漬物については、下記の記事も参考にしてみてください。
■寒さが厳しい秩父地方の冬の保存食
長野県木曽地方の「すんき漬け」と同じように、しゃくし菜漬けも、もともとは寒さが厳しい山間部である秩父地方の冬の保存食でした。昔は冬を前に、家ごとにしゃくし菜を漬けていて、それぞれの家庭の味があったと言われています。
しゃくし菜漬けの栄養
■毎日摂りたいβカロテンがたっぷり
しゃくし菜漬けの素材であるタイサイは緑黄色野菜で、βカロテンを豊富に含んでいます。βカロテンは抗酸化作用に優れ、免疫力を高める力も持っています。また、体内でビタミンAに変換されて体の成長を促し、目を健やかに保つ働きもあります。
■骨を健やかにするカルシウム、ビタミンKも
タイサイは小松菜などと同様に、骨の材料となるカルシウムや、骨を作る働きを促すビタミンKを多く含んでいます。野菜のカルシウムは吸収されにくいので、ビタミンDなど吸収を助ける栄養素の多い食材を一緒に摂るのがおすすめです。
野菜のカルシウムについて詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。
■葉酸、カリウムに加えて、漬物になることで乳酸菌と食物繊維の相乗効果も
タイサイには、血球・DNAの合成に関わり、貧血を防ぐ働きのある葉酸や、体内の余分な塩分を排出してくれるカリウムなどの栄養素も多く含まれています。また、しゃくし菜漬けは乳酸発酵を利用するので善玉菌である乳酸菌もたっぷり。善玉菌のエサになる食物繊維も豊富なので、おなかを整えるのにも役立つのです。
しゃくし菜漬けのおすすめの食べ方
■塩味が強くないので肉や魚の付け合わせにも
漬物といえばご飯のお供やお酒のおつまみを連想しがちですが、しゃくし菜漬けは塩味が強くないので、焼き魚や肉料理などの付け合わせにもぴったり。さっぱりとした酸味で、ちょうどいい箸休めになります。
■油炒めや、納豆と和えたりしても◎
高菜漬けのように、しゃくし菜漬けを油炒めにしてもおいしくいただけます。油がβカロテンの吸収を助けるので、栄養面でもおすすめの食べ方です。刻んだしゃくし菜漬けを納豆と和えれば、乳酸菌と納豆菌で善玉菌たっぷりの小鉢に。納豆のたんぱく質は、骨を健やかにするのにも欠かせません。
■チャーハン、ぎょうざの具にするのもおいしい
ボリュームのあるメニューと合わせるなら、油がβカロテンの吸収を助ける、チャーハンやぎょうざはいかがでしょうか。しゃくし菜漬けのシャキシャキした食感がアクセントになりますし、独特の酸味は、塩分を控える助けにもなります。
なかなか珍しい「しゃくし菜漬け」ですが、通信販売も行われていますし、首都圏近郊のデパートやアンテナショップなどでも手に入るようです。そのまま食べても、アレンジしてもおいしくいただけますから、見かけたらぜひ試してみてくださいね。
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