
語源・由来|「けりをつける」「油を売る」 歴史が見える言葉の由来
普段よく聞く表現には、想像していたものとまったく違う語源を持つ表現があります。今回は、決着をつける、結論を出すという意味の表現の「けりをつける」と、時間をつぶし怠ける・無駄話をするという表現の「油を売る」の意外な語源を紐解いていきましょう。
普段よく聞く表現には、想像していたものとまったく違う語源を持つ表現があります。今回は、「けりをつける」「油を売る」の意外な語源を紐解いていきましょう。

けりをつける
「長年論争となっていた問題に、やっとけりをつけることができた」のように、決着をつける、結論を出すという意味の表現です。結論を出すのが難しかった問題が解決した時に、よく用いられています。
「けり」と聞くと、足でキックをする「蹴り」を連想することも多いかもしれません。しかしこの「けり」、実は古文などで使われている助動詞「けり」のこと。ですから、漢字で「蹴りをつける」と書くのは誤りなのです。
「~だった」という過去を表す意味、もしくは「~だなあ」のような感動を表す意味をもつ「けり」。俳句や和歌などで、助動詞「けり」は文末によく使われていたことから、「結末を迎えることができた」という意味をもつようになったそうです。それが転じて現代では、「何かの決着をつける」「終わりにする」という意味になったといわれています。
さらに「けりをつける」の由来には、もうひとつ別の説も存在しています。それは平家物語に節をつけ、平家琵琶と共に語る平曲(へいきょく)をはじめとする語り物を由来とするもの。語り物は「そもそも」と語り始め、「けり」で語りを納めているため、由来として伝えられているようです。
古文の助動詞、または平曲いずれにしても、文章や物語を終わらせるための「けり」が語源となっていることが分かりますね。

油を売る
仕事の最中に話し込んで時間をつぶし怠ける、無駄話をするという表現です。「いくら知り合いが来たからといって、勤務中に油を売るのは好ましくない」のように、仕事をさぼっていることを含む場合が多いので、あまりいい意味で使われることはありません。
では、なぜ仕事をさぼって無駄話で時間をつぶすことが、「油を売る」という表現になったのでしょうか。この由来は、江戸時代までさかのぼります。
江戸時代、油は女性が髪の毛をセットするための髪油として、また、家を明るくする行灯(あんどん)の燃料としても使われており、とても貴重なものだったそう。たとえば菜種油は、髪油と行灯の燃料どちらにも用いられていたといわれています。
「油を売る」の語源となったのは、そんな女性用の髪油を売る商人だといわれています。油は桶から柄杓(ひしゃく)ですくい、客が持参した容器に移し替えて販売しており、その際に商人は客の女性と世間話をしていたそうです。油は粘性が高いため、別の容器に移し替えると油を切るのに時間がかかってしまい、油を売り終えるまでの時間、ついつい長話になっていたのだとか。この様子が、「仕事中に無駄話で怠ける」という意味を与えたといわれています。
ただ、油商人は仕事をさぼっていたわけではなく、油を移し替える間の時間をつぶしていただけというのが、現代で使われている意味と少々変わっていておもしろい点ですね。
ちなみに、行灯の燃料となっていた油も粘性が高いものであったとされているため、「油を売る」の語源は、髪油に限らず行灯の油でもあるという説も伝えられています。
今回ご紹介した二つの表現は、昔からの日本語表現や文化に直結していました。これらの表現以外にも気になる表現をたどってみると、日本の歴史を知ることができるものがまだまだ見つかるかもしれませんね。
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